7.「さらに精密な射撃 ――海竜退治⑥――」
ミズハが放った二発目の弾丸も見事海竜に命中した。
この時ようやく海竜の動きに変化があった。
この船目掛けて一直線で迫っていた海竜が動きを止めたのだ。
後ろからゴーガが恐る恐る聞いてきた。
「やっつけたのか?」
ミズハが一旦銃を下ろして答える。
「まだ分からない。普通の獣なら二発も食らえば逃げるかブッ倒れるてるかのどちらかなんだが。様子が変だ」
もう双眼鏡を使わずとも海竜の姿を確認できる。
野球ボール程の大きさになるまで接近を許してしまっている。
船も雨雲の真っ只中。
波が一層高くなり、極度の緊張の中で船員の中にもリバースする者が出ている始末。
ここにきて一つの疑問を抱いたゴーガが、ミズハに質問をぶつけた。
「つーかさ。デカ過ぎじゃね? 全然七メートルじゃなくね?」
「そうだな」
あっさりと了承するミズハ。
彼の返答にゴーガは逆ギレ。
「あんたさっきから七メートル級だの何だの言ってたじゃねぇかよ!」
「視力には自信があるが、目測は苦手だ」
先ほどの申告ミスをキッパリと言い切るミズハ。
「しょうがない。約束どおり、あんたにも手伝ってもらうことにしよう」
頭を抱えて唸っているゴーガに、ミズハはプラスチックのカプセルを手渡した。
手のひらに収まるその代物にまたもゴーガは質問をぶつけた。
「なんだこりゃ?」
落ち着いて聞いてくれと念を押しながらミズハが説明する。
「中に火薬が入っている。それを投げて海竜のところに送ってくれ。俺が打ち抜いて至近距離で爆破させる」
この作戦にゴーガは半信半疑。
「そんなこと出来んのか?」
「さっきから言ってるだろ。出来るかじゃない。出来ないことでもやってみせるのが一流のハンターだ」
この一言がゴーガをその気にさせた。
二発の弾丸を食らって躊躇っていた海竜は結局退かずに船目掛けて進攻してくる。
波がさらに高くなって、比例して船の揺れが激しくなっていく。
船上はもはや立っていることもままならない戦場と化していた。
その中でゴーガは手すりにつかまりながらなんとか託された火薬入りカプセルを投げようとするが、強烈な風雨にさらされてほとんど目も開けていられない。
この状況で二発も銃弾を命中させた彼の力量を、ゴーガは初めて声に出さずとも認めていた。
意を決して踏み込むも、雨で濡れた甲板に揺れる船体。
願い空しくゴーガが放った爆弾は海竜から大きく逸れて海に真っ逆さまのルートを辿る。
悔しさを顔ににじませるゴーガ。
そんな彼の目の前で、ミズハがライフルを放り出して勢い良く立ち上がった。
そしてゴーガに背を向けたまま、海竜を見据えて言い放つ。
「大丈夫、悪くねぇ」