6.「精密射撃 ――海竜退治⑤――」
「目測七メートルって所か。的にしては大きすぎだ」
距離とサイズから全長を導き出したミズハ。
甲板の雨が当たらない場所を陣取る。
そして弾丸を込めた銃を構えて射撃姿勢を取り、接近する海竜に狙いを定める。
標的と目が合う。
その時、高波が船を襲う。
ガクンと船が大きく上下に揺さぶられる衝撃で、乗客の中から悲鳴に似た声が上がる。
ミズハは雨で手元から滑り落ちそうになる銃を持ち直して再度を照準を付ける。
そして。
引き金を引く。
手応えあり。
遠くの方から小さく、カエルをつぶしたような声が聞こえた。
ところが。
海竜自身に何が起こったのか理解できていないのだろうか。
背を向けることなく、逆に船に向かってさらにスピードアップして迫ってきているではないか。
「まったく。七メートル級なら一発で危険を察知しろよな」
文句を垂れながらもミズハは落ち着き払って二発目の射撃に備える。
通常、船の上からのライフル射撃を正確に決めることは難しい。
加えてこの悪天候、たくさんの乗船客の怒号と悲鳴、自分自身の下準備の不十分さ。悪い条件ばかりが整っている。
その状況下で見事ミズハは精密射撃を遂行してみせた。
しかも、二発も!