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54.「帰郷 ――賞金首『辞典泥棒』捕縛⑥――」
「わかったよ」
押し問答の末にようやく相手の首を縦にふらせることに成功した。
「ただし、後のことは一切フォローしないよ。私は辞典なんて見てないし、ちゃんと懸賞金も払ったからね」
「ありがとうございます」
丁寧に頭を下げて、ミズハは足早にギルドを後にした。
その足は迷うことなくチェックインしている宿の部屋へ。
メンテナンスの完了した装備品の数々を荷物にまとめてチェックアウトする頃には空が夕焼けに染まっていた。
港町名物の海鮮料理を何一つ口にしていないのが悔やまれるが、それよりも一刻も早くウェールズに帰ることでミズハの頭はいっぱいだった。
乗合バスの一席で、疲れも忘れて辞典を読みふけるミズハ。
その背後で熱い視線を送る人物の存在に、彼はまだ気付いていない。




