4.「遭遇 ――海竜退治③――」
「あんた、俺の知り合いに似ているよ」
海竜についての話が一段落した頃、ミズハが口走った。
今から二年前、海の裂け目を飛び越えた先にあるロマンシア大陸に彼は赴いた。
その頃はハンターでもなんでもないただの若者に過ぎなかった彼は、自身の武器ピストルの技術を磨くために大陸へ渡った。
そこで不思議な力を宿すクリスタルを手に入れた。
そして同じ志しの元に集った四人の仲間とともに、そのクリスタルを集める冒険の日々が始まった。
ミズハは続ける。
「ロマンシア大陸に知り合いがいるんだ。仲間想いでこれと決めたら一直線な奴さ」
目の前にいるゴーガは、その友人に雰囲気が似ている。
「あんちゃんロマンシアに渡ったことがあんのか」
「あぁ。伝説の秘宝クリスタルを求めてな。持ち帰ることは出来なかったけど、代わりにどんな財宝でも適わない友を得た」
何処と無く誇らしげに過去を語るミズハ。
ゴーガは興味本位で聞いてみた。
「そいつらもハンターの仕事をしてるのかい?」
「いいや。他のみんなはロマンシアの人間だ。あっちにはハンターやギルドの仕組みが無いからな」
「そうなんか」ゴーガは関心した様子でつぶやいた。
昔話もそこそこにミズハは仕事の話に戻る。
「さっき依頼云々の話をしたけど、実際問題この航海中に海竜が出なければそれに越したことはないんだ。金も払わなくていい。ハンターの仕事内容と俺の名前が売れたってだけで上々だからな」
ゴーガは頷いた。
「それもそうだな。よっし、じゃあ今度は俺の仕事の話もしてやるよ。さっきから俺と同じ赤いバンダナを付けてる男がそこかしこにいるが全員俺の仕事仲間だ。全国各地に荷物を配送する仕事をしている。積荷の護衛にハンターを雇うって話は聞いたことがあったが、俺達の所は皆そこそこ腕っ節に自信がある奴等が集まってやがるから利用したことはねぇんだ。正直ハンターってやつの力量を疑問視してる奴も多いぜ。俺を含めてな。万一この後で海竜が出て来たとしても、あんちゃんの働き次第では報酬は出せないかもしれねぇけど文句はねぇよな?」
ミズハがくるっと振り返って言った。
「すまない、三行目あたりから聞いてなかった」
その言葉にゴーガは目が点になった。
「えっ。それってどういう……」
「目標を確認した。あれが海竜で間違いないか?」
彼の台詞を遮ったミズハが指差す方向。
そこには、ゴーガの目には何も見えない。
傍にいた色黒の男に双眼鏡を借りて再度その方角を見るや、米粒ほどのその物体を視認出来た。
薄汚れた水色の鱗を持つ大きな蛇。
先ほどまで話していた海竜に間違いない。
「本当に現れやがった。それにしてもあんちゃん、よくあんな小さいのが見えたな」
「視力には自信がある」
腰に掛けた拳銃を見せてそう言い放つ。
ミズハは付け加えた。
「噂どおり、濃い雨雲を引き連れて来てる。なるべく船に近づかせないように始末する必要がありそうだ」
彼はそう言って船倉に入り、海竜を迎え撃つための準備を始めた。
Crystal Disc 本編は私が始めて妄想したファンタジー小説です。文章化の予定は今のところありません。