12.「事故 ――誘いの森の業者救出①――」
「おかえり、ミズハ」
ギルドに到着したミズハを出迎えたのは背の高い女性だった。
此処、狩りの街ウェールズのギルドの看板娘として名の知れている赤い髪の女性。
一回り年上の彼女の名前を呼びながらミズハは挨拶した。
「こんばんはソラさん。なんだか忙しそうだね」
「君ほどじゃないわよ、って言いたいところだけど確かにちょっとね」
ギルド内部を見渡しながらミズハが聞く。
「何かあった?」
鳴り響く電話のベル。
奥で年配の男性が対応に追われている姿が飛び込んでくる。
その男性が受話器を戻すとちょうどミズハと目が合った。
「おぉおかえり、ミズハ」
しゃがれた声のその男性はこのギルドの責任者であり、出迎えてくれたソラの父親でもある。
ミズハはぺこりと一礼し、彼に挨拶した。
「お疲れ様ですヤマトさん。報告が遅くなってすみません」
ヤマトは右手をひらひらさせながら言った。
「気にせんでいいよ。そっちこそ今日はお手柄だったそうじゃないか」
ヤマトが海竜退治の労をねぎらう。
「また一つ名を上げたな。私も鼻が高いよ」
「どういたしまして。ところで忙しそうですけど何かあったんですか?」
「まあな。誘いの森で落盤事故だ。立て続けに降った雨のせいで業者が立ち往生しているらしい」
誘いの森はここウェールズの街の西に広がる広大な森である。
ウェールズが『狩りの街』と呼ばれる所以となった場所で、昔ながらの凶暴な動物が現代も数多く棲みついているためにハンターの間では『太古の森』とも呼ばれている。
ちなみに誘いの森と書いて『いざないのもり』と読む。