表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Crystal Disc 外伝『深撃の銃弾』  作者: ハルシオン
第一章:海竜退治
11/109

11.見守るべき少女

「ファルちゃんは良いお嫁さんになれるよ」

 完成したシチューをすすりながらのミズハの一言に、ファルは赤面してモジモジし出した。

「あんなに小さかったファルちゃんもいつの間にか十五歳だもんなぁ」

「もうすぐ十六歳だよ」

親指を曲げた手のひらを見せながらファルは指摘した。

「そっか。本当に結婚できる歳になるんだよな」

「うんっ」

少女は可愛らしい笑顔を浮かべてミズハを見つめている。


「だったら尚更こんな所に出入りしてちゃダメだぞ。男一人の部屋だし、銃やら火薬やら危ない物だらけだしな」

 ファルには特別にこの部屋の合鍵を渡している。

使用できるのは自分が許可した時だけだという厳命を言いつけた上でだ。

ファルはニコニコ笑顔のまま言った。

「お兄ちゃんはもう家族みたいな人だもん。家族に好きな時に会えないなんておかしいよ」

孤児院で暮らすファルにとって『家族』という単語はとても深い意味合いの言葉になる。

「血が繋がっていない」なんて軽々しく言える訳がない。


 ミズハは薄々気づいていた。

ファルが自分に対して向けている好意的な感情が、いつの頃からか愛情に変わって来ていることを。

そのことは彼女が暮らしている孤児院を営んでいるグリーンハウスさんからも伝わって来ている。

いつか「お兄ちゃんと結婚する」なんてことを本気で言い出す日が来るんじゃないかと今日も内心ヒヤヒヤしていた。


 少女のことを大切に想っている。

だからこそハンター稼業などをやっている自分なんかと一緒になるべきではない。

いつまでも見守るべき存在として居てほしい。

それだけがファルに対して願う、ミズハのたった一つのささやかな願いだった。

暗くなった夜道を無事に家まで送り続けたミズハは肩まで届かない、彼女の小さな姿を見送りながら改めてそう思った。


「外に出たついでだ。ギルドに立ち寄ろう」

 両手でほっぺをパンと叩く。

気合が入ったその足で、ミズハは二つの依頼の報告をしに仕事斡旋所ギルドへと赴く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ