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103.シ
「待ってくれ! 俺はこの子には何もしていない!」
ミズハはまず第一に言い訳の言葉を発した。
二人きり。
相手の腹部に残る出血痕。
そして自らの腰にぶら下げた二丁拳銃。
まずはこの状況の誤解を解かなければと彼の思考が呼びかけたのだ。
しかし対岸から帰ってきた返事は彼も予想していない一言だった。
「んなことわかってるぁ! なんでテメェだけ蘇ってんだっ聞いてんだよぉっ!」
よみがえった。
巻き舌気味の早口だったが確かにそう言った。
眠っている間に一体何が起きたのか分からないでいると、先ほどまでしゃべっていた血の気の多そうな獣人を下がらせて別の獣人が前に出てきた。
三体の中ではもっとも小柄。
されど位が高いのか他の二体がペコリと首を垂れている。
「人間さん」
すでに老体なのか、しゃがれた声でゆっくりと話しかけてくる獣人。
「その娘は一昨日の嵐の日に命を落とした。アンタを責めたりはせんよ」
「この子に何があった? よみがえったってどういうことだ?」
ミズハはまっすぐ老人を見つめ、問いかけた。