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人デナシ論

「眠そうですね」

 重たい瞼を持ち上げると、たった今まで昼食の片づけをしてくれていた葉月が見下ろしていた。

「ああ、うん……」

 襲はソファに寝転がったままあくびをした。

「ここのところ毎日そうですけど、眠れていないんですか?」

 心配そうに聞いてくる葉月を見て襲は笑う。

「いや、ちょーっとオンラインゲームにハマっててさ。つい時間を忘れてプレイしちゃうんだよな」

 すると葉月は眉をひそめた。

「駄目じゃないですか。睡眠はちゃんと摂ったほうがいいって、襲くんが私に言ったんですよ?」

「あーそういや言ったっけ」

 襲と暮らし始めた当初、葉月は不眠症気味だった。

 ただでさえ気の休まる時がなかった藤堂家の暮らしに加え、命を狙われ始めるようになって夜も満足に眠れない状態だったそうだ。そんな状態が健康によいわけもなく、医者から処方された睡眠薬で何とか睡眠時間を確保しているような日が、襲との生活が始まってもしばらく続いた。だが同居生活も一ヶ月もすると命の危機にさらされるような状況がなくなったこともあり、睡眠薬なしでも眠れるようになってきたらしい。むしろそれまでの反動か、一度眠ると少しの物音では起きないくらい熟睡でいるようになったとか。

 そのおかげで襲が夜半に部屋を抜け出しても葉月は気付かずにいてくれ、できる限り危険から遠ざけ不安のないよう過ごさせるという随分無茶な依頼も無事に達成できている。

 基本的に襲撃は夜半が多い。

 昼間もなくはないらしいが、やはり人目につくリスクを冒してまで明るい時間帯に暗殺に残りこんでくる人間は少数だ。そのおかげで昼間の襲撃はマンションの警備員達だけで人手は足りている。

 だが人目につきにくい夜となれば襲撃者の数は激増する。

 特に最近は藤堂十蔵の死期が近いということでその数はますます増えてきた。おかげで警備員だけでは手が足りず、襲も対応に駆り出されることがあるくらいだ。

 可能な限り葉月のそばにいるようにとは言われているが、殺し屋の存在を彼女に気付かせないこともまた襲の仕事だ。

 そもそもこのマンション自体が最高厚の防弾ガラスの窓を始め、全体的な強度は並はずれているし、耐火耐震設備もしっかりしている。

 だが一応豪華すぎず質素すぎずを目指したマンションなので、セキュリティシステムは世間一般のごく普通のマンションとそう変りなく、特別な設備があるわけではない。

 それある程度の人材を配置すれば設備に頼る必要はない、防犯対策は万全との意味もあってだ。

 もっともその自負のおかげで襲をはじめ、このマンションの警護に携わる者は根こそぎ睡眠不足に追い込まれているわけだが。

 もう一つあくびをしたところで葉月は襲の部屋のほうを指差した。

「そんなに眠いのでしたら寝室で少し休まれたらどうですか? ソファではきちんと眠れないでしょう」

「いや……こんな真っ昼間から爆睡したら生活リズム狂うし……前にうっかり夜型生活送ったら元に戻すのが大変だったんだよな」

「そうですか。じゃあコーヒーを淹れましょうか? 少しは眠気もマシになるかとも思いますが」

「そうだな……それじゃあミルクなしで頼むわ」

 すると葉月はひどく衝撃を受けたような顔をした。

「襲くんがミルクなしで、ですか?」

 襲仕様の砂糖とミルク盛りだくさんのコーヒーを淹れ慣れた葉月には相当意外だったらしい。

「だってブラックのほうが眠気に効きそうだし……あ、でも代わりに砂糖はいつもの倍で頼むよ。俺、苦いのはダメなんだ」

「普段からあんなにお砂糖を入れているのにその倍って……糖尿病になりますよ」

「今日だけ、今日だけ」

「はぁ……じゃあそのようにします」

 葉月はまだ何か言いたげだったが、キッチンに戻ってお湯を沸かし始めた。

 その小さな背中は、少女愛好家でもなければそれほど庇護欲というものを持ち合わせない襲から見ても頼りなく、まだ大人から守られるべき存在なのだと思う。

 葉月と同い年の普通の子供だったら家族と暮らし、小学校に通い、放課後は友達と遊んだり塾に行ったりするのだろう。

 その当たり前の『普通』はとても幸せなことだと襲は思う。

 世間一般で言われる『子供らしく』の枠からはみ出すことなく過ごせること。

『普通』といわれる生活を当たり前に過ごせること。

 多分それはとても優しい幸福だ。

 それがどんなものか、襲には想像するしかできないが。

 成人を目前に控えた今となっては、もし自分がそんな日々を送れたらなんて考えることは無駄だし意味もないからしないが、少し前まではそんなことを考える日もあった。

 葉月もそんなことを考えることもあるのだろうか。およそ普通とは縁遠い人生を歩む彼女も、『普通』への憧憬を抱くことがあるのだろうか。

 コーヒーの匂いが漂ってくる。

 重たい頭がそう認識し、襲はソファで横になったまま両腕を伸ばした。

 無理やりにでも体を動かせば少しは眠気もマシになってきて、暈けたようだった思考もいくらかクリアになってくる。

眠気に負けかけていたせいか、随分無駄なことを考えていたものだ。

 考えたところで何も変わらないことに思いを巡らせ何になる。

 もしもなど、ifになど何の意味もない。

人が言う『普通』など、どう足掻いても手に入らない、

人でなしが普通の人間のような幸福など望んでいいわけがない。

 望むことすらおこがましい。

 獣が人の生活を夢見て何になる。

 獣には獣なりの幸福がある。

「……うん、誰にだって分相応ってものがあるしな」

 一人呟き、襲は身を起こした。

 思い切り伸びをすると、ちょうど葉月がマグカップを手に歩いてきた。

「とりあえずお砂糖はいつもの二倍、スプーン六杯分入れました」

 渡されたマグカップには黒に近い色のコーヒーが満たされている。

「ん、ありがとな」

 口をつけると、強烈に甘いはずなのにどこか苦みのある味が口の中いっぱいに広がる。

 牛乳を入れないとやはり苦みが気になるなとか、けれどさすがにここまで甘いと気持ち悪くなりそうだなどと考えながら飲み干すと、マグカップの底には半端に溶けた砂糖が少し残っていた。

「あーあ。やっぱりさすがに溶けきらなかったか」

 マグカップの底を覗き込むと葉月も同じように覗き込みながら言った。

「あれだけ入れたらそうなるでしょうね。自分で入れていても気分が悪くなる量を入れましたから」

「うん、俺もさすがにあそこまで甘いとちょっときついものがあった」

 うんざりした顔をする葉月に苦笑しながらマグカップをガラステーブルに置いた。

「でもおかげでだいぶ目ぇ覚めてきたわ」

「それは何よりです」

 そう言って葉月は向かいのソファに腰を下ろし、ガラステーブルの上に置いてある箱からチョコレートを一つ手にとって口に放り込んだ。

「何だ、昼飯足りなかった?」

 ついさっき食事を終えたばかりで葉月が間食をすることは珍しい。

 葉月はもぐもぐと口を動かしながら首を横に振った。そしてきちんと食べ終えてから口を開いた。

「いえ。朝からずっと読書感想文に取り掛かっていたら少し疲れたので、甘い物がほしくなって」

「そりゃあお疲れさん。で、塩梅はどうだい? そろそろ終わりそうか?」

 すると葉月の顔が曇る。

「……いえ、まだかかりそうです」

 同居開始から一ヶ月も経った頃には他の英語や漢字のドリルだの算数のプリントだのといった課題はあらかた終わらせていたようだが、唯一読書感想文の進みだけが今ひとつだということは聞いていた。文系理系を問わず好成績を上げる葉月だが、感想文だとか作文だとかは苦手なのかもしれない。

 感想文の類は思ってもいなくても「~と思いました」、「~に感動しました」と聞こえのよい言葉を並べて済ませてきた襲とは違い、真面目な葉月のことだから素直に自分の感想を書き、なおかつ文章の構成だの文法だのまで考えでもして時間がかかっているのだろう。

「まぁそう焦ることもないしな。ゆっくりやれよ」

「……はい」

 答えはしたものの、葉月は難しい顔をしたままだ。

「何だよ、はーちゃんはそんなに読書感想文とか苦手なのか?」

「苦手……と言うほどではないのですけど、今回は先生からテーマが決められていまして」

「テーマ?」

「はい。今私が取り組んでいる課題は、先生が提示したテーマに沿った本を自分で探して選び、それで感想文を書けというものなんです」

「課題図書として事前に何冊かの本をリストアップされたのは俺も経験があるが、先生の

お題に沿って本を探せってのはやったことないな。先生もまた面倒臭い課題を出してくれたもんだな。熱心で頭が下がるぜ」

 さすが名門校ともなると凝った課題が出されるものだと思わず感嘆の声をあげた。

 ところが、返って来た葉月の声は重々しい。

「ええ。とても面倒くさいです」

「ん? 何だ、はーちゃんにしちゃあ珍しい感じだな。俺じゃあるまいし、課題に面倒臭いとか」

「だって面倒なんです。これだから綺麗事が大好きな、箱入り夢見がち教師は……」

 あまりに暗澹とした言葉と表情に襲の背に寒気が走る。

「ど、どうしたよ? 何か今日のはーちゃんはえらく暗いじゃねえの」

「私は元からどちらかと言えば暗い性格なほうですよ。……それに拍車がかかっているというのなら、この忌々しい課題のせいです」

「忌々しいって……」

「忌々しいで悪ければ呪わしいです。今すぐ焼却処分してやりたい」

 今にも歯ぎしりしそうな調子で葉月は言い捨てる。

 父親のこと以外で彼女のここまで不機嫌な様子を見るのは初めてだ。

 まだ子供とはいえ、ここまで露骨に機嫌が悪い女性を前にするとどうしていいかわらかない。今すぐ部屋に引きこもって彼女の怒りを遣り過ごせればいいが、この様子だと下手に逃げようとしても痛い目を見そうな気がする。襲は意を決し、できる限り葉月を刺激しないように話しかけた。

「えーと……よっぽど腹が立つようなテーマなんだな? そりゃあ嫌になるよなぁ」

「ええ、業腹です」

「……はーちゃんは難しい熟語を知ってるな」

「難しくなんてありません。少なくともこの下らないテーマに比べれば」

 いつもの無表情に近い表情に明らかな苛立ちを含ませ、葉月は吐き捨てるように言った。

「下らない、下らない、心底下らないです! こんな物に時間を割くなんて、きっと私の人生最大の無駄な時間になります」

 言っていることはともかく、葉月にしてはめずらしく雄弁だ。そうなると基本的に口数少ない葉月をこれほど喋らせるに至ったそのテーマとやらに興味が湧く。

「なぁはーちゃん。その下らないテーマって何なんだ?」

 あくまで軽い調子で問う襲に葉月は口にするのも忌々しいといった様子で答えた。

「……『純愛』です。感想と共に、自分なりに純愛を定義しろというのが今回の課題です」

「純愛ってあれか? よく映画とか小説で全米が泣いたりするあれか?」

「ええ、そうです」

「そりゃあ……先生もおもしれーテーマを思いついたもんだ。しかもそれで読書感想文? 小学生の読書感想文ってそういうのだっけ? 軽く大学のレポートみたいじゃんか」

 葉月は忌々しげに眉根を寄せた。

「夏休み前、クラスの女子の間で流行った映画があるんです。それが純愛物語だとかで、その延長で純愛とは何かというディベートがなされ、その後しばらく担任教師も含みクラスで純愛を扱ったマンガだのドラマだのの話題が絶えなかったんです。おかげで私個人の課題まで純愛をテーマしてくる始末です」

「先生、よっぽど純愛議論が気に入ったんだな……」

「若い女性ですからそういう話題がお好きなようです。お涙頂戴の映画なんかを随分熱く語っていましたよ」

「おいおい。先生かわいいじゃねーの。美人?」

「顔の造作の美醜なんて私にはよくわかりません」

 冷ややかに言い捨てられ、襲は肩を竦めた。

「しっかし女の子ってのは純愛モノとか好きなんじゃねーの? 俺も元カノに付き合わされてそういう映画見に行ったし」

「好きな人は多いかもしれませんが、私は興味ありません。むしろ嫌いなくらいです」 

「嫌いなぁ……」

「大嫌いです」

 冷めた調子で葉月は言う。

「愛とやらはさも美しいもののように語られますし、それこそ人生の全てのように言う人なんかもいますけど、どうせ人間の異性愛なんて性欲に後付けされて美化しただけでしょう。そんなものに涙するとか感動するとか……薄ら寒いんですよ」

 それは吐き捨てるような言葉だ。

「それこそが人間の至上の幸福のように語られて、無駄に賛美されて尊ばれて」

 細い肩を震わせ、小さな両手を握り締めて。

「愛とやらが全てだと言うのなら、だったら誰も愛していない人間は足りていないんですか? 他人を愛さない人間には人間として価値はないんですか? 愛なんてこれっぽっちも理解できない、そんな物見たこともない人間に生きる価値はないって言うんですか?」

「はーちゃん?」

 それはまるで悲鳴のようだった。

 今にも泣き出しそうに大きな瞳が揺れている。いつだって大人びていて、襲なんかよりよっぽど理性的な葉月が初めて見せた顔だった。

「……襲くんは自分を人でなしだって言いましたけれど、なら私は足りない人間です。人間未満です」

 葉月はひとりごちるように言った。

「以前、クラスの女子に好きな男子はいないのかって聞かれたんです。いないし、いたこともないって答えたら、好きな人がいないなんて変だって。人として欠陥があるんだって笑われました」

「本当にませた小学生共だな、おい。別に好きな奴なんていてもいなくてもいいだろが」

 襲の苦笑交じりの言葉を否定を肯定もせず、葉月は続けた。

「……でもきっと彼女達の言葉は間違っていません」

「んなことねぇよ。気にしすぎだって」

 けれど葉月は首を横に振る。

「だって実際、私には恋とか愛なんて理解できません。そんなものがこの世に実在するようには到底思えません。私は……誰のことも好きじゃありません。愛することなんてできないんです。父親や藤堂の親族は元より、学校の子達も死んだ母のことも好きじゃないんです。それどころか――」

 一度言葉を切って、葉月は深く俯いた。

 前髪に隠れた向こうの彼女は今、どんな顔をしているのか。

「嫌いです。愛人なんかした挙句に私を捨てて行った母親も、勝手に私を藤堂の家に連れてきてあんな針の筵みたいな家にいることを強制する父親も、私を嫌う藤堂の親族も、愛人の子だと嘲笑う学校の人も、みんなみんな大嫌いです」

 掠れる声が続ける。

「……そんな中でも良くしてくれる人だっているんです。同じクラスの子とか先生とか、藤堂の家の家政婦さんとか、昔住んでいた家の近所の人とか……でも駄目です。嫌いじゃないけれど、でも堂々と好きと言えるほどではないんです。今は親切にしてくれても、それが本当は嘘なんじゃないかと思えて、好きになれないんです。優しくされて嬉しくないわけじゃないのに……なのに私はそんな親切な人達を疑っています。優しくしてくれるのは何か裏があるから、親切にしてくれるのは私が腐っても藤堂の娘だから……そんな風に考えてしまって、結局好きになれないんです」

 襲はただ黙ってその言葉に耳を傾ける。

葉月の必死の言葉を、じっと聞いていた。

「クラスの女子に言われた通り、私は情緒に欠陥があるんです。だから純愛小説を読んでも少しも感動なんてしない。愛なんてこれっぽちも理解できない。私はきっと一生人を好きになれない、愛せないんです。そんな私が人として足りているはずがありません」

 言葉の最後はほとんど嗚咽に紛れてしまっていた。膝を抱えて身を丸めて、小さく震えている。 

襲はそれを見つめながら口を開いた。

「俺はさ、多分一生人を愛さない。家族や友達としてならあっても、恋愛感情を人に向けることはないよ」

 膝を抱えたまま、葉月は黙っている。

「恋愛感情を持たない人をエイセクシュアルって言うらしい。俺の場合もそうなのかは知らないけど。でも少なくとも生まれてこの方、他人に恋愛感情をもったことはないんだよな」

 葉月がそっと膝から顔を上げた。涙にぬれた顔がじっと襲を見ている。

「何度か彼女がいたこともあるけどさ、結局誰のことも恋愛感情として好きだとは実感できなかった。他人の中では割と好きなほうだったと思うけど、結局は俺の中の『他人』というカテゴリーを出ることはなかった。付き合っている最中も、別れてからも」

 葉月は困惑したように聞いてきた。

「……だから襲くんは人でなしだと?」

「いやいや。もっと決定的な理由で俺は人でなしって呼ばれてる。恋愛感情を持ち合わせてないくらいでそんな扱いされちゃたまらねぇよ」

 そう言って笑うと、葉月は顔を曇らせた。

「恋愛感情くらいなんて言えるほど、恋愛感情は人間の中での重要度は低くないじゃないですか」

「そんなのは人によるだろ? 恋愛より仕事や趣味のほうが大事だって人だっているし、別に人生恋愛が全てじゃねぇよ? それに俺、恋愛しなくてもけっこう人生を楽しんでるし。死ぬまで楽しみ尽くす気満々だし」

 いつか来る、この生を終える日まで。

 人でなしの人生の帳尻合わせに相応しい破滅的な最期を迎えるまで。

「そんで笑って死ぬのが俺の理想」

「……笑って、ですか?」

「うん。そうしないと人生に勝った気がしねぇし」

 葉月は不可解そうに訊いてきた。

「人生に勝つって何です?」

「えーとあれだ、運命とかそういうの? そういうのに屈せず生き尽くしてやったぜー的なノリだよ」

 そう言うと葉月は何だかめずらしいものでも見たような顔をしていたが、しばらくしてぽつりと言った。

「……何だか頭が悪そうな言い方です」

「頭悪そうで悪かったな、おい」

「でも」

 葉月は目を伏せて、小さな小さな声で続けた。

「……そういう考え方は、少しかっこいいと思います」

 それっきり葉月は黙ってしまった。

 泣いたせいで顔は赤い。

 けど今もまだ赤いのは、多分泣いたせいだけじゃないだろう。

 そう思うと何だか妙に笑いが込み上げてきた。

「はーちゃんはさぁ、幸せになれよ」

「……何ですか、急に」

「口が悪くても性格がちょっとねじくれてても、はーちゃんはいい子だからさ。二ヶ月近く兄貴みたいなことをしてきた身としては妹の幸せを願うわけだよ」

 一瞬だけ葉月は顔を上げたが、すぐまた俯いてしまった。

 そして口から出た言葉はやはりねじくれていた。

「……襲くんにお兄さんらしいことをしてもらった覚えはないです」

 そう言った葉月の顔は耳まで赤かった。

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