テンプレその三 名探偵おっちゃん
失踪していてすいませんでした。
童貞をこじらせて、魔法が使えるようになったので、夢中で魔法の練習をしていました。
嘘ですいません。
またちょっとづつ書いて行こうかと思います。
もう失踪しません。がんばります。
ん…すっきりした。
昨日は不用意に寝てしまい体がべとべとだったので、学校が始まる前に体を拭いていた。
さすがにこの女子寮は、貴族用のために、設備一つ一つが豪華だけど、さすがに個人用のお風呂まではない。
共同のお風呂もあることにはあるけど、入浴時間が決まっており、こんな早朝に開いてはいないのだ。
「おっちゃん、結局帰ってこなかったなあ…」
朝の準備を終えて、歯の欠けた櫛で髪型を整えてから、食堂に向かうと昨日頼んでいた通りに、妖精さんの分まで用意された朝食を見て、ふと妖精さんのことを思い出していた。
なんで、あんなのを召喚してしまったんだろう…
召喚の主と召喚獣は性質が似るって聞いたけど、どこがどう似ているのだろう?
満足な準備をしてあげられない私も悪いかもしれないけど、あの人は完全に私のキャパを超えている…
それに、見た目もどこからどう見ても中年のダルダルのおっさん。
かわいげもへったくれもあったものじゃない。
性格も昨日の一件どおり最悪…
一応、人間なら召喚獣としては意思疎通もできるし優秀な部類なのかもしれないけど、あれにいう事を聞かせられるのだろうか…?
それでも、一度召喚した以上私の責任を持って卒業までの2年間付き合わなきゃいけない。
それなら上下関係をはっきりさせないかな。
妖精さんが帰ってきたら、バシッといってやらないとね。
考え事をしていたら、時間が無くなってきていたのでさっさと朝の身支度を済ませて寮を出ることにした。
友達のいない私は、当然登校も一人。寮は、学校の敷地内にあるから、言うほど離れてはいないけど…
寮から出るとちょうど登校ラッシュの時間という事もあって、そこには人、人、人だった。
とはいっても今日は終業式の日、午前中に式を出れば、あとは長期休みに入るのだ。
周りの1年生のみんなはこの休みで、召喚獣との関係を深めるのだろう。
私もその予定だったけど、妖精さんのことを考えると、アルバイトに明け暮れていた方がいいかもしれない。
さすがに、妖精や幻獣を連れている子はいないけど、リスや猫を連れている子がおおい。
うらやまし…すごくうらやましい…
その中、ひときわ目立つ召喚獣を連れている人がいる。
その子の召喚獣はは光のを放ちながら、すごく楽しそうにご主人様の周りをふわふわ舞ってる。
「おはようー!」
そのご主人様が私を見つけて、手を振ってくれる。
どうやらそれまで、誰かと話していたようだ。隣に大人の人がいる。
どこか見覚えのあるその顔、ぽってりと出たお腹、薄い頭………妖精さんじゃいか!
「おはようって、おっちゃんその恰好どうしたの?」
妖精さんは昨日までの平民の着るような着古された服とは違い、シルクのシャツに燕尾服、革の靴を履いてきっちりとネクタイを締めている。
その雰囲気は、昨日までの冴えない中年…さえない感じは残ってるんだけど、ではなく中年太りのだらしない貴族階級の人間といっても差し支えない外見になっていた。
よくよく見れば、おっちゃんの肌も平民みたいに薄汚れていないし、姿勢もきれいな立ち姿をしてる。
「どうって、そりゃあ。服を洗ったら着る物ないだろう?おっちゃん、裸族じゃないから困っちゃうで?そしたら、親切な人がこれをって貸してくれたのよ。どう?似合う?惚れた?やめとけやけどするぜい」
「どうして、そう見え透いた嘘をつくのよ!そんな服を平民みたいなおっちゃんに貸してくれるような貴族がいるわけないでしょ!それともなに?その親切な人ってルッツ君の事!?迷惑かけるんじゃないわよ!」
妖精さんがルッツ君に迷惑をかけていたなんて、思ったら自分の顔が真っ赤になっている自分に気づいた。
「え?違うよ?妖精さんとは、今ここで出会ったばっかり。ね?」
「うんうん。おっちゃんは、妖精さんだから嘘つかないぞ。親切な人に借りたんだってば。前の服が乾くまでね」
どうして妖精さんは、ドヤ顔なんだろう。
平民に服を貸すような奇特な貴族の話なんて聞いたことが無い。
ルッツ君に借りたんじゃないなら、盗ったってことじゃない…私の召喚獣が盗みを働いたなんて知れたら…
「ルッツ君そうなの…?だとしたら、おっちゃんのそれは盗ったってことじゃない!ばれないようにさっさと返してきなさいよ!」
「えー、だから借りたんだってば。おっちゃん嘘つかない!まあそれより、時間はいいのか?」
妖精さんの言葉に我に返って周りを見てみれば、もう誰もいない。
「「お、遅れる!」」
急いで、走り出した私たちの頭の上に、チャイムは無情に鳴り響くのだった…とアフレコしている妖精さんがむかつく!
別に、滑り込みセーフという事もなく、余裕で間に合っている。
そこまで、焦るような時間ではなかったみたい。まったく妖精さんはどうしようもないことしかしない。
「おっちゃんも、いいかげ…ぐふぅ」
妖精さんに文句を言おうとしたら、教室のドアを開けたルッツ君の背中にぶつかってしまった。
しかも女の子らしからぬ声がもれちゃった。
「お?坊どうした?急にたちどま…ははあん。あれのせいか」
妖精さんは教室を覗き込んで、一人状況を理解している。
一人納得してないで私にも教えろ。
だけど、私もぶつかって赤くなった鼻をこすりながら、教室を覗き込んでみれば二人の行動の意味が分かった。
教室のとある机の上がひどいことになっているのだ。
濡れた雑巾と生ごみでべちょべちょになっており、机といすにいろいろと落書きがしてある。
「………?…??…あっあれ私の机じゃない」
場所から考えれば私の机の位置なのに、その机が私のものであるという事になかなか行きつけなかった。
ただ、その机を私のだといった瞬間、体が傾き、まるで地震に会ったように視界が揺れと冷や水をぶちまけられたように背筋が凍った。
「ん?なんだ?嬢ちゃんいじめられているのか?」
妖精さんがデリカシーもなく、大きな声で私に聞いてくる。
いじめ?そんなの知らないわよ。
これまで友達もいなくて、碌に話したことなくて無視されたことはあったけど、こんな事されたのはない…
「カーラさん大丈夫?」
ルッツ君がそう問いかけてくれたことで、私は初めて自分がよろけてルッツ君に支えられていたことを知った。
ルッツ君には、今まであんまり仲良くなかったのに昨日からずっと迷惑をかけっぱなしだと思う。
でも、もしかしたらルッツ君はこの学校で初めての友達なのかもしれない。
妖精さんのおかげで、ルッツ君と仲良くなれたって考えたら、ちょっとは妖精さんに感謝するべきかもしれない…
遠くで妖精さんが、『おっちゃんも友達なのよ』とかいってるけど、妖精さんは召喚獣だし友達じゃない。
何より人の心を読むな!
ルッツ君に支えられながら、教室に入ると刺すような視線と含み笑いが聞こえた。
『なんか臭くありません?』『急に臭くなりましたね』
…。
『ほら、あの子じゃない?貧乏すぎて、平民にお金恵んでもらってるらしいわよ』
……。
『あら、私が聞いた話では、平民相手に体売ってるらしいわよ』
………。
『いやだわ、私、平民に近づかれただけで鳥肌が立ってしまいますわ』
…………。
引いている。私だけじゃなくて、ルッツ君も。
というより、クラスのほとんどの人が引いている。
この人は、大声で何を言ってるのよ…
『しかも、貧乳ですって。それに、夜人形が一緒にいないと眠れないんですって』
『あらー、しかも一昨日おねしょしたとか。この歳になって恥ずかしいわ』
さっき私に差すような視線を送ってきたオリアーナ・モットとその取り巻きの二人の女性。
オリアーナは、モット家の次女として生まれ、この学校でも次席の成績を残している。
連れている、召喚獣もロシアンブルーの瞳が印象的な短毛種のネコ科の小動物。
オリアーナはその豊かな立地ブロンドを見事に結いあげて、今流行の真っ赤なドレスを着ている。
モット家は、もともと侯爵家というだけでなく、先代に王妹が降嫁しているだけあって、ものすごい権力を持っている。
広大な土地を治め、中央にも何人も息のかかった人間を働かせている。
土地を持たない没落貴族である私の家など吹けば飛ぶほどである。
『まあ、ビッチで貧乳で下が緩いとかなんで生きてるんでしょうね?』
取り巻きの二人は、モット家に仕える伯爵家の子女にあたる。
この爵位は王が与えるものではなく、モット家が所有しており、モット家の家臣に与えられるものである。
つまり、家ぐるみでモット家の配下なのだ。
『あ~あ、早く死んでくれませんかね』
あまりの聞くに堪えない罵声に私は、ルッツ君からはなれると、大きく振りかぶってみぞおちに向かって一発入れた。
―ボスン
意外に良い音がしたと思う。
「ぐっグーパンはやめて!おっちゃんが今朝食べたものがリバースしちゃうから!」
妖精さんが殴られたお腹を押さえながら、必死に訴えている。
元気そうだ、もっと殴っておけばよかった。
「リバースじゃないわよ!さっきから何いってんのよ!周りみんな引いてるじゃない。根も葉もないこと言わないでよ!」
「いやー、何ってあそこの娘にセリフ当ててただけだよ?」
「指ささないでよ!失礼でしょ」
失礼よりも、あの人たちにケンカなんて売ったら私の身の破滅だ。
「でも、おっちゃんさん。さすがにさっきの内容はひどいと思いますよ…」
「そんなこと言っても、坊。全部机の上の落書きにかいてあることだぞ?ほらビッチとか売女とか書いてあるじゃん?」
怒って、声を張り上げてみても、急に体から熱が消えてく感じがして脱力してしまった。
もうなんだか、すべてがどうでもよくなってしまった。
自分が、怒ってるのか悲しいのかすらもわからない。
なんで私だけこんな…
疲れ切ってしまった私は、仕方なく机を片付けてしまおうと、机に向かっていく。
ルッツ君がやさしく手伝ってくれるといってくれた。
それに、ちょっと泣きそうになりながら、私はルッツ君に甘えることにした。
「ちょぉっとまったあ!嬢ちゃん!いじめはまだ終わってないぜ!」
まったく手伝うそぶりすら見せなかった妖精さんがドヤ顔で制止してくる。
まったく、どうしてこの人はうざいんだろう?
「真犯人が見つかる前に現場を荒らすのはやめてもらおうか!」
「なにが、真犯人よ。誰がやったかなんてわかるわけないじゃない」
証拠もないし、わかりたくもない。
分かったところで、待っているのは身の破滅しかない。
「ふははははは。この妖精さんがにかかれば、真犯人などすぐ見つかるのだよ。『妖精さんアーイズ』」
この妖精さんうざい。まじうざい。
妖精さんがしね。
「ふっ。わかったぞ」
妖精さんは、手を顎に当てて口角を上げている。
「も、もうわかったんですか?」
ルッツ君もいいタイミングであいづち打つ必要ないから…
いい人すぎるよ…
こんな、おっさん放置でいいから…
「妖精さんの名に懸けて不可能はない。まず、この雑巾は、嬢ちゃんを汚いものにして貶めようという心理の表れだな」
「なるほど」
「そして、この花瓶。早く死ねばいいのにってことだな」
「ひどいですね…軽々しく死ねなんていう人はどうかしてます」
「そして一番大事なのはこの落書きだ。嬢ちゃんは、家が没落貴族で貧乏だ。貧乏貴族という事は、管理能力のない脳筋!ただの無能!それをののしればいいはずが!この落書きにはそれについて書いてあることより、ビッチだとか誰にでも股を開くとか性病もちとか言う記述が目立つ」
「びっち?せいびょう?股を開くって、足を広げるってことですよね?それってなんで悪口なんですか?」
「うんうん。意外なところで分かるピュアボーイは黙ってようね。おっちゃんが、何を言いたいかというとだな。嬢ちゃんの血を否定することによって、人間性をひていするより、女として終わってるという事に重点を置いてある点において、今回の犯行には女の嫉妬が渦巻いているという事だ!」
「うん??どういうことですか?」
「なあに、簡単な話だよ。嬢ちゃんの周りの男性の女性関係をたどれば犯人はわかるという事だ!」
「カーラちゃんの周りの男性?」
いつ終わるの…?この珍芝居は…
早くこれ片付けようよ…
「そうはいっても、人間関係も胸も貧乏な嬢ちゃんの男性関係は少ない。おっちゃんか坊だけだ。そして、おっちゃんは妖精さんだし、それに女性に恨まれるような下手は打たない。常に女性は満足さ!だから、犯人は坊の婚約者であるそこの盛りヘア幼女だ!」
妖精さんがびしっと刺した先にいたのは、オリアーナ・モットだった。
終わった…妖精さんのせいで、私の人生は…私の一族はおわった。
この人はどうしてよりにもよって一番ケンカを売ってはいけない人にケンカを売るのだろう…
実は、この話を消して心機一転頑張ろうかと思ったけど、マイリスをしてくれているかたが7人もいたので、頑張ることにしました。
お気に入りしてくれた人たちありがとうございます。