テンプレその一 チート召喚
ええっと…駄文です☆ミ
「次、アキ・ヌンメリン」
呼ばれた女生徒は、短く答えて、召喚の間に消えて行った。
私は、その控室で、多くのクラスメイトと共に期待を胸に自分の番を今か今かと待っている。
毎年この控室で、緊張に耐えきれなくなって倒れる人が一人くらいはいるらしい。
幸いなことにいまだ倒れる人は出ていない。
「次、アニー・ブレイアム」
この学校は、サンマレッリ帝国の首都にあるカルカッシ学校。
時の王が、官吏の質の低迷を嘆き設立したのが始まりだといわれている。
当時は官吏養成を目的とした学校であったが、今やその教育分野は多岐にわたる。
工学研究分野もあれば魔術研究、兵法、歴史編纂、海洋資源の研究など例を上げればきりがない。
その中でも一番有名なのはと聞かれれば、召喚術と答えるだろう。
100年ほど前の天才、イングリッド・アンドレセンが発表した画期的な理論により飛躍的に発達した。
そして彼女と彼女の弟子の努力によって世間一般に広く浸透していった。
いまや、貴族階級における人間のすべてが召喚獣を持っているほどに。
「次、アン・スヴァールバリ」
この学校では1年次の終わりになると、学年の全員が召喚術を行う。
それは、官吏コースをとっている私も例外ではない。
だけど、この召喚は仮召喚とよばれ、学校に在籍中に召喚獣との向き合い方や召喚主としての心構えを学ぶ仮の召喚契約なのだ。
卒業と同時に契約は解除され、召喚した召喚獣とはそこでお別れ。
それでも、この召喚は一生に関わるほど大事なもの。
初めての召喚は、幼いがゆえにほぼすべてがその召喚主の資質によって何が召喚されるか決まる。
そのために、ここですごいものを召喚できれば一気に世間から注目されるてしまう。
3年ほど前に、幻獣であるフェニックスを召喚した先輩は、もう王宮の上級官吏として最前線で活躍しているみたい。
「次、イラ・ポユリュ」
幻獣や妖精といった上位生物とされるものを召喚獣として、召喚できた人間はすべて歴史に残る活躍をしているために、私が召喚できれば将来は安定だろう。
卒業後は引く手あまたになること間違いなし。
私の実家は男爵位を持つとはいえ、とても貧乏だ。
領地からの収入もスズメの涙しかないし、私をこの学校に入れるのに父は相当苦労したらしい。
なにより、女である私は爵位を継げない。
爵位を継ぐのは弟のシルビオになる。
だから私に残された道は、どこかに嫁ぐか、もしくはこうしてこの学校に通って官吏になるしか道がない。
嫁ぐといっても、うちのような貧乏貴族ではほかの貴族は見向きもしない。
だから嫁ぎ先は、箔を付けたい商家ぐらいしかない。
平民に嫁ぐなんて、考えただけでも寒気がする。そんなのは、誇りある帝国貴族のすることじゃない。
そうなると自動的に残される道は、官吏の道しかない。
王都の官吏にさえなれば、高給がもらえるし、お金持ちの貴族の目に留まって、結婚できるかもしれない。
あ、でも王子様って線はないね。なぜなら、王子様はもう2児のパパだし30を超えたおじ様ですもの。
そういうことで、私は絶対に官吏にならなきゃいけないんだ!
「次、カーラ・オリヴィア・キャロウ」
「はい!」
とうとう私の番。
絶対に妖精を召喚するんだから!
今ちょうど、私の目の前で召喚術が行われているところだ。
召喚術を行っているのは、ルッツ・アンドレセンという男子生徒だ。
主席である彼は、教師間の間でも有名で、私もその経歴に目を通したことがある。
なんでも、地方の貧乏貴族の次男坊として生を受けたが、その優秀さを見込まれて、この学校に入学する1年前―10歳のころに、アンドレセンの伯爵家に養子として迎え入れられている。
何をどうして、10歳の子供が優秀だと判別できたのか、私には理解の範囲外ではあるが…
彼を母方から3代さかのぼるとアンドレセンの血を引いているという事もあっただろうが、イングリッド・アンドレセンをはじめとする数々の天才を輩出してきた家だけあって、その目は、確かだった。
彼は、ここに来るまでその優秀さをいかんなく発揮している。
学業、武術、兵法すべての分野で他を寄せ付けないほどの好成績をこのしている。
その上、人当たりはよく周囲にはいろいろな人が集まっていると聞く。
私としては、その仮面の下にどす黒い本性とかがあってくれると楽しいのだがと思わずにはいられない。
残念ながら、そんなことはないのだろう。
なぜならば、彼は私の目の前で、見事『光の妖精』を召喚して見せたのだ。
光の妖精―それは、太陽を示し、その性は、明朗闊達、義を重んじ、ありとあらゆるものに平等に富を分ける。
その反面、不義に対しては、苛烈なほどに制裁を与える心を持つ。
つまり、騎士に向いているという事だ。
召喚で出てくる召喚獣は、基本的にその召喚主の性質を反映している。
つまらないことに、そのことが彼には心の闇などないことを示している。
「よくやった。ルッツ。光の妖精を召喚するなど、わが校でも3年ぶりの快挙だ。この学校の長としても、誇りに思うぞ」
光の妖精が楽しそうに彼にまとわりついているさまは、間違いで召喚したわけではないと物語っており、それが一層、私にはつまらなくてしょうがない。
これだから、天才というものは全く…しねばいいのに。
「ありがとうございます。センナーシュタット先生。これで胸を張って、アンドレセンの家の方に報告できます」
ああ、このクソまじめな生徒は、何の実績もなくアンドレセンの家に養子に入ったことを気にしていたのか。
ここまで、優秀だとあわれなものだな。
私が、彼と話していると部屋に次の生徒が入ってきた。
その生徒は、全く凡庸な顔をしており、顔を見ても全く名前が出てこない。
名前が出てこないので、手元にある名簿から、名前を探すことにした。
名簿で探していると彼女は自分から名前を名乗ってきた。
「私は、カーラ・オリヴィア・キャロウです。校長先生」
うん、名前を聞いてもさっぱりどんな子かわからない。
資料をめくってみてみれば、さもあらん。特に目立って優秀でもなければ、落ちこぼれてもいない。すべての項目において、合格点ではあるが、どれも平均をちょっと超えたぐらいだ。
つまり、普通の子だ。
覚えてなくても仕方あるまい。
一学年に300人以上いるわが校の一人一人をいちいち覚えていられるほど、聖人でもなければ、偉人でもない。
「そうか、ならば、召喚の準備をしたまえ」
彼女を召喚の間に促すと、ルッツが驚くべきことを言ってきた。
彼女の召喚を見てみたいと、特に不都合があるわけでもないために許可をするが、よほど興味がなければ、他人の召喚など立ち会わないだろう。
そんな事よりも、召喚獣と親睦を深める方がよほど有意義な時間を過ごせる。
この二人には、何か接点があるのかと首をひねるのだった。
カーラ・オリヴィア・キャロウ―彼女は、僕と同じ、由緒正しい帝国貴族の末裔になる。
父の持つ爵位も同じ男爵位だ。
そして、同じように没落しているし、同じように爵位を継げない立場だった。
だけど、僕だけがアンドレセン伯爵家の目に留まり、幸いなことに爵位を継げる立場になった。
僕と彼女で何が違ったのだろうか…男とか女とか違いはあるが、僕は彼女と同じように何もなしていない。
たしかに、僕は、アンドレセン家に入ってから人一倍努力した自信はある。
だけど、それは彼女も一緒だ。
彼女のあかぎれのある手を見ながら思う。
彼女の勉学に対する努力は僕のその比ではないと思う。
昼休みに図書館でよく彼女の頑張っている姿は見るし、何より貧しい彼女の家計では勉学に励めばいいだけではない。
学校の許可をとってアルバイトをして、学費にあてているとも聞く。
そんな彼女を馬鹿にする人たちもいる。
貧乏人だとか、努力しても成績が出ないのは馬鹿なのじゃないかとか。
それでも、僕よりもよっぽど恵まれない立場で努力を続けられるその精神力は僕にはないものだ。
それが、うらやましくも尊敬にも値する人だと思う。
だからこそ、彼女がいったいどんな召喚獣を召喚するのか興味があった。
世界は、彼女をどう評価するのかと…
だから、彼女の召喚を見させてもらうように校長先生に頼もうと思う。
とうとう私の番になった。
緊張で心臓が早鐘のようになっている。
この召喚は、すべての手順がもうすでに整っており、あとは私が、詔を唱えて召喚術を発動するだけだ。
といっても、完全に整えられた召喚術は詔をとちったところで、問題なく召喚できるという優れもの。
すべては、アンドレセン伯爵家の功績であり、すさまじいものだと思う。
そんなことを考えながら、召喚の間のドアを開けると、そこには校長先生とルッツ君がいた。
あまりの驚きで、呼吸が止まるかと思った。
なんでよりよって、私の担当が校長先生なの!?
確かに、誰か先生が一人もしものためにつくことになっているけど、それが校長先生だなんて聞いていない。
校長先生も初めての召喚の時に月の妖精を召喚して、若干30にして、この学校の校長に就任したらしい。
校長の任期が終われば宰相位がまっているという。
エリート中のエリートなのだ。
そして、隣にいるルッツ君。
彼もまた、私と同じような貧乏貴族の次男坊に生まれながら、アンドレセンの伯爵家に養子に入ったシンデレラボーイ。
アンドレセンは伯爵家にありながら、その数々の功績によって、並の侯爵家ではお話にならないような権力を持っている。
そんな家に養子入りした、私たちのような爵位を継げない貴族の子供の憧れだ。
そのうえ、私の学年の首席で、誰にでも優しい。
一番大事なことに、そのカッコよさ。
別に筋肉質の男臭さでも、耽美な世界ななよなよとしたカッコよさでもなく、見た目はすっきりと整った顔立ちに、男らしいさわやかな雰囲気を持ったビックリするほどイケメン。
あの胸に顔を埋めて、思いっきり甘えたい。
その上、恐ろしいことに彼の近くには、妖精っぽい光る何かがいる。
あれって光の妖精なのだと思う。
ちょっと、優秀すぎて鼻血がでそう…
「そうか、ならば、召喚の準備をしたまえ」
校長先生の言葉で我に返る。
そう、私は今召喚をしにここにきているんだった。
余りにも別世界の住人すぎて、現実逃避してしまった。
校長先生の言われるがままに、召喚陣のまえに歩いていく。
ここで、重要なことに気づいてしまった。
ルッツ君が出て行っていない。
普通、召喚が終わったらすぐにでも部屋を出ていくはずなのになぜ?
そういえば、さっき校長先生に何か言っていたようだけど、緊張で何を言っているかわからなかった。
手も緊張で震えている。
緊張で手が震えるのってこんなふうなんだとわけのわからないことを考えながら、召喚陣に向かう。
ひいぃぃ。彼が、ずっとこっちを見ているよ…
カーラは、この部屋に入ってからどんどん顔色が悪くなっていく。
召喚陣の前に立つ頃には、体全体が小刻みに震えている。
よくある、倒れるパターンだ。
召喚が終わるまで待てばいいのだけど。
彼女はつっかえつっかえではあるが、詔を読み上げていく。
一昔前の技術ならば、失敗してたであろうその召喚は、何の問題もなく発動する。
召喚陣からは、淡い光がこぼれだし、召喚獣がその陣を通って移動している合図だ。
少しいつもより、時間がかっているように見えるけど、問題なく召喚は発動している。
ルッツ君も身を乗り出すようにして、その召喚を見守っていた。
何が彼の興味をそそっているのか不思議だけど、どうせ彼女くらいなら鼠クラスで、よければ猫とかだろう。
幻獣や妖精を召喚できるのは、残念ながらごく一部の選ばれた本物の天才だけなのだ。
それは、ちょっと頭がいいだとか、運動ができるとかとは違う、隔絶した差がある。無慈悲なほどに。
私の前では、みるみる間に召喚が進行していく。
まずは、頭から出てきて首胴足とどんどん召喚陣から外に出てきている。
その姿を完全に視界に入れたときに私の口からは、自然と言葉が零れ落ちていた。
「ちょっと…いったい貴女はどんな存在を召喚しているのよ…」
興味深いことに彼女は私の予想を見事に裏切ってくれた。
これは、カーラ・オリヴィア・キャロウの名前を覚える必要がありそうだ。
近年まれにみる面白い子になりそう。
カーラの召喚は、滞りなく進んでいた。
彼女が、召喚の光から目を守るために瞑った目を開けるとそこには召喚獣の姿が現れていた。
後退型のおでこ、てらてら油ギッシュに光る頭皮、ふとましい腕と脚、妊娠しているのかと見間違うポッコリとしたお腹、セクシィプリティな瞳にホクロからてろっと伸びる体毛。
その体にトランクスとカッターシャツをまといながら、玉かけご飯をかっ込む中年のくたびれたおっさんの姿があった。
おっさんは、玉かけご飯を一気にかっ込むと、茶碗を足元に置いて口を開いた。
「あんた誰よ?」
頭が真っ白になるというのはこのことなのだろう。
目の前に現れたのは、かわいらしい猫や小鳥ではなく、ましてや妖精ですらない。
たるみきった体を持つ中年の男性がいる。
何度目をこすっても、ほっぺたをつねっても変わらない。
しかも、私をちらりと見ただけで、再び何かを口の中に放り込み咀嚼を始めている。
すがるように振り向くと校長先生も目が零れ落ちそうなほど目を開いて凝視している。
その姿には普段の威厳が鳴りを潜めて、ただのおばさんになっていた。
校長先生から視線を戻すとそれは食事を終えたようで食器を下において一息ついていた。
「あんた誰よ?」
放たれた言葉は、硬くわずかに拒絶の空気を持っていた。
なんだろうこいつは、私の召喚を邪魔して出てきた挙句、この反応。
ふざけている。
私の召喚獣がこんなおっさんのはずがない。
私の召喚獣は妖精だって決まってるんだ。絶対そう。
「あ、あ、あ、あんたが誰だあ!」
気付くと私はそう叫んでいた。
自分でもよくこんな声が出るんだなあと思う。
「そんなこと言われましても、オッチャンはオッチャン以外の何物でないですし?」
「なんなのよ、オッチャンて!私の召喚獣はどこよ!食べたんじゃないでしょうで!さっさと出しなさいよ!」
自分でも理不尽なことを言っている気がする、だけどここで負けたら今までがんばってきたもののすべてが崩れ落ちそうな気がしてもうダメだった。
分かっている。目の前の人が私の呼びかけに答えて召喚された召喚獣だってことも。
でも、私は…私は…私は…
自然と視界がぼやけて頬を涙が伝う。
鼻の奥がツンとしてそこで自分が今泣いているってことに気づいてしまった。
―ふぇぇぇぇえええええええええん
僕が我に返ったのは、カーラちゃんの鳴き声が召喚の間に響き渡った時だった。
彼女の召喚したものが意外すぎて、呆けていたのだ。
どこをどう間違えば、あんなものを召喚できるのだろうか。
彼女は予想以上に規格外だった。
ありえないといってもいいだろう。
まさか、人間を召喚するなんて。
当のおっちゃんは、いきなり泣き出した彼女をあやすために一生懸命になっている。
でも、さすがに『いないないバー』の通用する歳でもないだろう…
「お、おい。そこの坊。ちょっと、こっちに来て手伝ってくれ」
その焦りを含んだ言葉に、僕はすぐには理解できなかった。
ボン…?
こちらに向かって、呼びかけてくるが誰の事かわからない。
センナーシュタット先生の方を見れば、腹を抱えて声もなく爆笑している。
どうしてこうなったし…
後ろを見てもだれもいないから、ボンとは僕の事なのかもしれない。
「そうだ。頼む助けてくれ」
自分を刺してみると懇願が返ってきた。
その言葉を聞いてセンナーシュタット先生とうとう声を出して笑い出してしまった。
僕が駆け付けるとおっちゃんはとんでもないことを言い出した。
「ほ~ら、嬢ちゃん。イケメンだよー。眼福だよー。よし!嬢ちゃんにはこのイケメンを上げよう。煮るなり焼くなりすきにするといい!しゃぶってもいいのじゃよ」
「ちょっと待ってください。僕はものではありません」
「かてえこというなって。ほら、嬢ちゃんもまんざらじゃないようだし。泣き止んだぞ。と、坊、ハンカチ持っているな?貸してくれ」
僕の返事も待たずに、おっちゃんの手は僕のポケットからハンカチを取り出してカーラに渡していた。
余りに堂々としていたために抵抗するまもなく持って行かれてしまった。
「ほら、イケメンのハンカチだぞ。これで涙を拭いて、鼻かんで洗って記念に取っとけ」
「さすがにそれは、返してくださいよ」
「そうか、坊は返してほしいか。あれだな、嬢ちゃんの涙と鼻水で汚れたハンカチでクンカクンカスーハースーハー…ふぅぅぅ、すっきりってやるんだな。わかるぞ。思春期の特徴の一つだからな。残念だったな、嬢ちゃん。こればっかしは仕方ない。返してやってくれよ」
ああ、なんかこの人にはなに言っても駄目な気がする。
住む世界が違いすぎる…
「そんなことしませんよ!」
「ルッツ君はそんなことしません!」
カーラちゃんもかばってくれる。
さっきまで泣いていたので顔が涙と鼻水でどろどろだけど、それに気づいたのかハンカチで涙と鼻水をぬぐうときれいに折りたたんでポケットにしまってしまった。
「はいはい、それくらいにしてくれないかな?まずは、カーラは召喚成功オメデトウ。これから召喚獣と…この場合召喚獣といっていいのかわからないが、短い間だが仲良くやりたまえ」
急に割り込んできたのは、さっきまで腹を抱えて爆笑していたセンナーシュタット先生だった。
「それで、だが、君らがここで陣取っていては、召喚の儀式も進まんよ。そろそろその場所を開けてもらってもいいかな?」
「わかりました。それじゃあ、移動しよう。今なら中庭なら人がいないからそこに行こうか」
ルッツ君は噂どおりいい人だった。
召喚の儀式の後は、自分の召喚獣とのつながりを強めるために忙しい。
普通なら人のために、同行している余裕はないのだ。
だけど私のために、ここまでついてきて慰めてくれる。
とはいえ、彼の召喚獣はいまさらどうこうするほどなくなついているけど…
それに比べて、私はどうだろう…なにこのポコンと出たお腹は…妊娠でもしているかって思うんだけど…
「大丈夫?落ち着いた?」
「うん…ありがとう」
下心なく私を心配してくれるルッツ君に救われる気がした。
「僕で避ければ、相談に乗るよ。言いたくなければ無理にとは言わないけどね」
「そうだぞ、嬢ちゃん。言葉に出した方が楽になるってこともあるからな。おっちゃんでよければ力になるぞ」
このとき泣いた後もあって、やさしい言葉にほろっとなって、言うつもりのないことまで口に出してしまった。
同時に、しゃべってしまいたいと思う気持ちもあったかもしれない。
「私の実家は、貧乏だから私が官吏になって、家族に楽をさせてあげたいって思って…それには、この召喚の儀式で妖精を召喚すれば確実だって…そう思って…絶対妖精を召喚するんだって思って…」
「そっか…ごめんね」
「なん…でっ…あやまるの?」
「僕だけが、アンドレセン家に養子に入って、妖精召喚して、不平等だよね」
普通の人がこんなこと言ったら嫌味にしか聞こえないだろう。
だけど、ルッツ君は心の底から自分だけ優遇されていることに対して申し訳なく思っていることが伝わってきた。
「そんなこと言わないで!ルッツ君は、私たちみたいな貴族の中でも没落していたり、家督が告げなかったりする人たちの憧れなんだから…だからそんなこと言わないで。胸を張っていてほしい」
「…っ。ありがとう。僕にできることなら何でも言って、協力するから。ね、カーラちゃん」
ルッツ君は、少し顔を赤らめながら協力を申し出てくれる。
なんでこんな私にって思うけど、そんな彼の存在がとても心地よく心強かった。
「ええ話やなあ…そうか、嬢ちゃんは妖精さんがほしかったのか。そうかそうか」
隣で、私の召喚獣―おっちゃんが、腕で涙をぬぐっていた。
「ならばおっちゃんが一肌脱ごう」
「ふぇ?」
おっちゃんの力強い言葉に、私の口から疑問の声がでる。
一体何をする気なのだろう?
「おっちゃんが妖精さんになってやろう!今日からおっちゃんのことを妖精さんと呼ぶといいぞ!」
おっちゃんは空に向かってそう力強く宣言した。
(ダメだこの人、頭のねじが2,3本飛んでる…)
後悔も反省もしない!
このテンションでこのままいけるとこまで行こうと思います。
あ、あとタグ募集です。こんなタグがほしいとか、このタグはいらないとかそういうの待ってます。
自分でタグ付けるのが恥ずかしい今日この頃、ニ〇動みたいに誰でもタグ編集できるようになってればいいのに。