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BRAVER-大会編-(後)  作者: Tommy
第6章-時は進む-
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46.拒否

「ふあーっ、疲れたー」

シルク・ホワイタビーは、机の前に、ゆっくりと腰かけた。

「お疲れ様です、シルク様」

ラメル・アルフォートは気を遣い、手ぬぐいを彼女に渡す。

「あら、ラメルちゃんはやっぱり気が利くわねー」

シルクは褒める。

ラメルは、少し顔を赤らめ、シルクと視線を合わせなかった。

ブレイバー本部、医療薬品管理室。

訓練で疲弊した多くの勇士がここを訪れるが、皆は縮めて"医療室"と呼ぶ。

マイノリティ大会が近いこともあり、日に日に訪れる勇士は増えていた。

「ちょっと最近忙しいですネー」

シンディ・クローズは言う。

「大会前はこんな物よ。去年の方が忙しかったわね」

シルクはそう返した。

「でも、波は去ったみたいで良かったですね」

ラメルは安堵し、椅子に座った。

ふと、声がする。

「すいませーん、まだ空いてますかー」

「はーい、どうぞー」

シルクは答えた。

扉が開く。

「あら?」

シルクは、扉の向こうにいる彼の顔を、久々に見ることになった。

「スタンくん!」

ラメルは驚いた。

二週間ぶりに見る青い隊員服は、すっかり汚れてしまっている。

「いやー、すみません。ちょっと遅くなってしまいました。とりあえず、前にいただいた包帯を取り替えたいのですが」

スタンは苦笑いをしながら言った。

「ええ、大丈夫よ。ラメルちゃん、座ったばかりで申し訳ないけど、彼に譲ってあげて」

「は、はいっ!」

ラメルは椅子から立ち上がる。

スタンは医療室に入り、椅子に座ろうとした。

「失礼します……ん?」

ラメルは、スタンを見つめている。

「……」

口を開け、まっすぐ彼の顔を見ていた。

「えっと、もしかして僕の顔、汚れてる?」

スタンは聞く。

「あっ……あの! いえ!汚れてません!むしろ、き、キレイ……というか」

「ん?」

「ひっ! いえ! なんでもないです! どうぞ座ってください!」

ラメルは後ずさりし、手で椅子を指し示した。

「あ、はい、ありがとう」

スタンはゆっくりと座った。

「ンー!確かにクールボーイ、ですネー」

シンディはそう言った。

シルクは、くすくす笑っている。

「うふふっ。さて、じゃぁ取り替えましょう。腕を出して」

「はい」

スタンは袖をまくり、シルクに右腕を差し出した。

「うわー。これ、もしかして自分で巻いた?」

「は、はい」

「これ、固定も何も出来てないわね。これじゃぁ包帯の意味全くないわよ。ただのファッションみたいになってるわね」

「はは……気を付けます」

「今度は私がしっかりつけてあげるからね」

シルクがスタンの右腕に触れた、その時だった。


「うわっ!」

「きゃあっ!」


突然、二人の間に衝撃が走った。

スタンは椅子からころげ落ち、シルクは横に倒れてしまった。

「な……なんだ」

スタンは起き上がる。

「何の衝撃なの、今のは……はっ!」

シルクの髪飾りが、衝撃のため床に落ちてしまった。


「あ、髪飾りが落ちてますね」

スタンは手を出す。


「スタン君!触っちゃ駄目です!」


ラメルは叫ぶ。


その時にはスタンは、髪飾り――もとい「心器 激流」に触れてしまっていた。


……


「ん?これが、どうかしたの?」

スタンは髪飾りを持ちながら答えた。


「どうして……"拾えた"の……」

シルクはそう言いながら、スタンの持つ髪飾りを受け取った。


「え?何かありましたか?」

「いえ……何でもないわ」

「そうですか。大事なものだったのですね。すみません」

「……シンディ、彼の包帯替えてあげて」

シルクは静かにそう言った。

「ホワット? なんで私なんですカー?」

シンディは目を丸くしている。

「私、ちょっと急用思い出したの。ごめんね」

シルクは椅子から立ち上がる際、シンディの眼を見た。

「アーハー、分かりマシタ。シルク様の言いたいこと」

シンディはそう言い、スタンの正面に座った。

「?」

スタンは、首をかしげている。

「え、えっと……」

ラメルは戸惑っていた。

「ラメルちゃんは分かっていなさそうだから、今あったことは"忘れて"」

「えっ! 忘れるって言ってもどうやって……」

シルクは人差し指で、ラメルの額に触れた。

「"念却"」

「はう……」

すると、ラメルは膝をついて、ばたりと倒れてしまった。


「スタン、今の衝撃はあなたが強くなったから起きたものよ」

「えっ! そうなんですか」

スタンは、右腕をシンディに差出しながら言う。

「そう、でもエネルギー、いわゆる"魔力"が外に出過ぎているわね。ラメルちゃんは、今の衝撃もあって疲れちゃったから、休ませてあげただけよ。こういう風に、他の人の迷惑になることもあるから、気をつけてね」

シルクは笑った。

「は、はい……すみません」

スタンはうなだれた。

「オーケー!これで大丈夫ネ。安静にしててくださいネ」

シンディはそう言い、包帯のしっかり巻かれたスタンの右腕をポン、と叩いた。

「いてっ!」

「オー、ソーリー!」

「はは……では、僕は今日は部屋に戻ります。総長がお戻りになるのはいつぐらいですか?」

「明後日よ」

「分かりました。ではその時に。今度、休んでしまった授業の分を教えてください」

「勉強家ね。分かったわ」

「はい、では失礼します」

スタンは立ち去った。


「ごめんねスタン、私は貴方に嘘をついた」

シルクはそうつぶやいた。


「あの衝撃は、貴方が強くなったからではない……普通あんなことは起きない。どうしてなのスタン、なぜ貴方には"激流の拒否反応"が起きないの?」

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