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BRAVER-大会編-(後)  作者: Tommy
第6章-時は進む-
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44.思い出の地へ

 国際連合管轄、オルダー戦争地帯跡地。

旧名、"希望の地"スペランツァ――

レックスは、「久々に」この地にやってきた。


 ギルバートから聞かされた、「天使と悪魔の物語」。

首謀者は誰なのか。千年前に何があったのか。「会ったことがある」というのはどういうことなのか。

全てを伝えられたレックスは、ギルバートにとある人物に会うように言われた。

 「懐かしいな、スペランツァ」

空は灰色だった。どこを見渡しても灰一色。激しい戦いの末、荒廃した地。

「あれから五年、か」

周囲を見渡しても瓦礫の山ばかりで、五年経つ今も戦いの痕跡が残ったままだった。

そう独り言を吐くと、彼は再び歩き出した。

 彼が「黒髪の狂乱者」と呼ばれる由縁となったオルダー戦争。そして剣との出会い。自分の過去と向き合う時が来たのである。


 少し歩いたところにひとつ、ぽつんと、建物があった。すすで汚れ、木で造られており、とても頑丈には見えなかった。

「マーズ、いるか」

建物の前で彼は言った。

「……」

声がない。

「マーズ、俺だ……レックスだ。そこにいるのは分かっている」

「……」

マーズという人物は依然、黙ったままだった。

「聞きたいことがあるんだ。"心器"について、アンタについて」

「……」

「そうかい、だったら本人かどうか証明してやろう」

レックスは、持っていた剣の柄を握った。

すると、彼の手にぼうっと、青白い光が宿った。

そしてその手をゆっくりと、入口の前にかざした。

「この感触で分からないか? 忘れたのか? 自分の"作品"を」

「入れ」

ふと、声がした。

「最初からしゃべってくれよ、本当」

レックスは手をかざすのをやめ、建物に入っていった。


*

 彼の目の前にいたのは、女だった。

額や腕には包帯をしており、来ている服もはだけ、汚れ、破けていた。

が、瞳には燃えるような輝きがあり、無造作に伸びた茶色い髪もまた、つやが残っていた。

「久しいな、マーズ」

レックスは言った。

「何故ここに来た」

マーズは、真顔でそういった。

畳が敷かれたその部屋は、この国では異質だった。いや、マーズの存在自体が、異質そのものだった。

「ギルバートから話を聞いた」

「三人衆のか?」

マーズは少し動揺したのか、瞳が大きくなった。

「そうだ、俊足のギルバート=ウェイン。あいつから話を聞いた」

「どんな話だ」

「天使と悪魔の物語」

「……ふざけているのか?」

「いいや、ふざけてなんかいない」

「では話してみろ」

「分かった」

レックスは、ここまでの経緯を話し始めた。


 「ここに住んでるお前は知らないとは思うが、近頃ピース・タウンでは黒い翼を持った化け物が出現している。

引き金となったのはシュテンハイム刑務所での襲撃事件だ。

看守や従業員、ほぼ全員死亡が確認された。もっとも、生き残った者も今は動くことができず、精神的にぼろぼろだ。

この事件についてはもともと、千年前に全く同じ状況で起きている為、俺は関連性を調べていた。

そうしたらビンゴだ。千年前に目撃された悪魔……もはや"伝説"とばかり思われていた悪魔そのものが、俺たちの前に現れたんだ。」

そこで俺はある悪魔に出会った。ジューンと名乗るそいつは、ストロンと呼ばれた人物を探していた。しかし俺は、ストロンという人物が何者なのか分かってはいない」

「……」

「そのあとも何度か、悪魔は俺たちの前に姿を現した。このままでは、住民の被害が大きくなるばかりだ。

俺はブレイバーの真の目的を見出し、可能性のある者を育てることに決めた。

そんな時にギルバートが俺を呼び出して、これから話すことを教えてくれたんだ」

「くどいぞ、それが何なのかを聞いている」


「――千年前に悪魔となって刑務所を襲った首謀者が、現代に再び蘇っていた。そうだろう?」

「!」

マーズは驚いた表情をしたが、何も言わなかった。


「そしてその首謀者の名前は、ヴァルディア」


「……そこまで話したのか、ギルバートは」

「ああ、そしてヴァルディアが何者なのか、過去に何があったのかも教えてもらった」

「あいつめ……」

「そしてギルバートは、ヴァルディアと会っていた。二十年前だ」

「……」

マーズは、唇を噛みしめていた。

「二十年前、ヴァルディアは千年の眠りから蘇り、ギルバートら三人衆と戦った。が、アイツらでは駄目だった。

そこでノーマという青年が現れた。ノーマは死闘の末勝利し、ヴァルディアを倒した。"心器"を使ってな」

「……っ」


「残念ながらノーマの行方は分かっていないが、使った"武器"なら残っている」


「……」

マーズは、黙ったままだった。

「ここに、あるんだろ?」


「……奪われた」


「なんだと?」

「お前の知る話はそれだけか? レックス」

「あぁ。ノーマの持っていた心器を回収することが目的で来た。悪魔ら、いや、『パラハーツ』の目的がそれであることも知っている。」

「『パラハーツ』――"心を食う"寄生虫パラハートを宿した集団。その虫は人間に寄生し、黒い翼の形で神経を奪い、心を喰らい続ける」

マーズは言った。

「ああ。ヴァルディアが始めに寄生され、そこから広げていったという話も聞いた。そして"心器"、心を通わす武器の強大なエネルギーを求めていた。マーズ、アンタの作ったものだ」

「いや、心器を造ったのは私ではない。先代だ」

「何?」

「先代、私の父もまたマーズという名だった。彼は心の持つ力を信じ、剣を器としてその心を宿したのだ。それが"心器"だ」

「シルクの"激流"、鳶人の"疾風"……そして俺のこの"雷牙"。それが俺の知る心器だ。マーズ、あとは何がある?」


「心器、炎龍刃。ノーマの使っていたものだ」


レックスはその時、とんでもない事実を知ってしまった。


「その炎龍刃を奪ったのが――"鳥人間計画"のストロンだ」

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