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BRAVER-大会編-(後)  作者: Tommy
第6章-時は進む-
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39.成長

「はい、ここ重要だから覚えておいて!」

 マイノリティ大会開幕まで、日にちが迫っていた。

しかし若きブレイバーたちは、普段と変わらず"知識"の講義を受けていた。

担当をしていたのは、シルク・ホワイタビーだった。

 以前魔術を教えていた彼女だが、最初の講義で行ったコップの水を"心で"動かすことを、しばらく経ってもほとんどが出来なかったことに驚いたのだ。

そして仕方なく、今は基本的な知識から学んでもらおうと考え、講義内容を変更していた。

 「じゃぁ次のページ、ひらいてー」

生徒たちはしぶしぶと、ページをめくっていた。

 「ふわぁーあ、めんどくせ」

サイスは大きなあくびをした。

「こらサイス君、我慢しなさい。あともうちょっとだから」

「だってよー、ほとんど俺分かることだし。寝ていい?」

「だーめ」

「ちぇっ」

サイスはふてくされ、教室にかけてあった時計を眺めた。

予定としては、講義はあと10分ほどで終了する。

「じゃぁ時間も迫ってきたことだし、ここで今日は最後にしましょう。サイス君、読んで」

「はいはい」

面倒くさそうにサイスは立ち上がった。

「えー、『我々ブレイバーが用いる武器は様々である。物理的な攻撃に特化したもの、魔術を使うことに特化したものなどがある。』」

「はい、ありがとう。そこで問題。"など"ってあるけど、例外って何だと思う? サイス君」

サイスは少し困った顔をした。

「えーなんだろう……あ、分かった。 防御特化?」

「吸収反射特化ってことね。間違ってはいないわ。 でもね、まだあるのよ」

「?」

この問題は、成績1位入隊のサイスでも分からなかった。

「さて、なんでしょうねぇ……?」

シルクの問いかけに、教室は静まりかえってしまった。


「――お! なんか分かってるけど恥ずかしいから答えたくない、って思ってる人がいるみたいね! 恥ずかしがらなくてもいいわ! 答えていいわよ!」

「そんなやついるのかよ、なにやってんだ、講義終わんねーんだよ」

サイスは急かすように言い、教室を見渡した。


そしてゆっくりと、一人の生徒が手を挙げた。


「あなたならできるわね、ワイヤー」


「ワイヤーだと!?」

サイスは目を丸くした。

成績が下位のワイヤーが、サイスが分からない問題を答えるというのだ。


しかし、姿がサイスの知っているワイヤーとは異なっていた。

以前会ったときは、短い髪で、さえない印象を与えていたのだが、今のワイヤーは、眼鏡をかけていて、視線がはっきりとしていたのだ。

さらに隊員服も剣士用ではなく、魔術特化の"導師用"となっていたのだ。


「それは"心"を介した接触攻撃に特化した武器です。"心の流れ"を武器に送り込むことにより、"心"の力を武器が拡張します。そしてその力が相手に接触すると、魔術とはまた異なる強大な"心撃"を与えることができます」

「正解! よくやったわ!」

シルクは満面の笑みをみせた。

「なにっ!  "心撃"だと!?」

サイスはその言葉を知らなかった。


「うん、知らなくても大丈夫よ。今の質問は本当は答えられなくて当然なの。今やってるページが53ページだよね? でも"心撃"の記述が載ってるのは387ページ以降なんだ」

「ぐぐぐ……」

サイスは、言葉が出なかった。

ワイヤーは続ける。

「一例として挙げるなら、熱流剣という武器があります。この武器はさびた鉄のような赤みのかかった金属の剣で、切れ味があまり良くありません。しかしながらこれは非常に強い耐熱性の合成金属で、"心"の力を熱エネルギーにコンバートします」


「熱流剣……まさか!」


サイスははっとした。

スタン・ハーライトが強い熱を帯びてこちらに立ち向かってくるのを。

持っていた剣が、赤く光り、まるで燃えているかのようだったことを。


「あいつ……っ!」

サイスは教室内を見渡した。しかし、スタン・ハーライトの姿はそこには無かった。


「これで分かった、サイス? まだまだ勉強することってあるのよ? 学ぶことは無限なの。あー、勉強って楽しい!」

シルクは大きく伸びをした。

「じゃぁ、こんなところで今日は終わりにしましょ。ばいばい!」

シルクはそう言い、足早に教室を後にした。

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