表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BRAVER-大会編-(後)  作者: Tommy
第8章-大会前夜-
15/15

52.凱旋

間違いない。"あれ"は僕のおじいちゃんだった。


昨日の夜、突如現れた「翼の生えた人間」――。

直剣を持ち、レックスさんと対峙していた。

老父――おじいちゃんは、僕の知らない表情を浮かべていた。

冷ややかで、無表情で、まるで感情が無いかのような――

僕が、その老父を「おじいちゃん」と認識した時には、直剣がレックスさんの肩を貫いていた。


今でも信じたくはない。頭の整理をしているが、まるで纏まらない。

何故なら僕はこう言われたのだ、その老父に――


「スタンハーライトよ。騙して悪かったな」


――その言葉の意味は分からない。

僕が騙されていた? 何を?

今まで僕を育ててくれていたおじいちゃんは? 嘘だったの?


ねぇ教えてよ、おじいちゃん――


……


「スタン、ぼうっとするな」声が聞こえた。

「あぁ、ごめんエクセル」僕は答えた。

今日はブレイバーの「総長凱旋式」だ。数年前から遠征していた総長が、ここ本部に帰還するとのことで、僕たちは正門前に整列していた。

なんでも、先輩方でも「謁見」するのは初めてのことらしい。


「ねぇエクセル、総長ってどんな方なの?」

「なんでも、剣術に関しては腕の立つ人だとか」

「へぇ、じゃあレックスさんよりも強いのかな?」

「さァな、俺たちの腕じゃぁ想像も出来ないさ」

「それもそうだね」

「……来たぞ」


名前の知らない先輩が、僕達の列の指揮を執る。

「全体、礼!総長のお帰りである!」

僕たちは言われるままに敬礼をした。


すると、正門から複数の人が出てきた。

1人は車椅子に乗り、和服を着たお爺さん。

1人はその車椅子を押して、隊員服を来ている男の人。

そしてもう1人は、鎧を来ている女の人だった。


お爺さんは目を閉じたまま、杖を持ち腰かけていた。

先輩が言う。

「総長様! シオン様! アンリ様! ご無事で!」

すると、お爺さんが口を開いた。


「皆の者。 ワシは帰ってきた。 この総長・不知火源八がの」


すると、先輩隊員たちが歓声を上げる。

「源八様!」

「源八様!」

女性隊員の人たちも歓声を上げる。

「きゃー、シオン様!」

「シオン様ー!サインくださーい!」

一部の先輩隊員たちも歓声を上げる。

「アンリちゃーん!」

「アンリー! 元気だったかー!」

皆、人気者のようだ。


「えっ、じゃぁあのお爺さんが……総長ってこと?」

「その通りさ」

「なるほど……えっ、貴方は?」

僕に応えてくれたのはエクセルではなく、後ろにいる先輩だった。


「俺か? 俺はグレン! まぁ俺の事はどうでも良いんだ、色々教えてやるよ」

「は、はい」

「まずあの爺さんは不知火源八――日本の名家『不知火』の八代目だ。十数年前にやり合った相手に『目』を奪われちまって、今は何も見えていないんだ」

「そ、そうなんですか」

「そう。 んで、車椅子を押しているのがシオン・マクスウェル。騎士名門『マクスウェル家』の御曹司。あぁ見えて腕っぷしは強くて、しかも頭も良い。世界で唯一の『魔法剣士』の称号も持っている」

「えっ!? じ、じゃぁ『世界1位の魔法剣士シオン』ですか!?」

雑誌で呼んだことがある――あらゆる戦争、戦争のデータを基に決められるランキング。3位はレックスさんだったはずだ。

レックスさんはとても強いのは勿論知っているのだけど、社会的な貢献度の部分で評価が上下してしまうらしい。

「そう。 そしてあの女騎士はアンリ。 元ブレイバーで、そこからマクスウェル家の騎士道を学び、今は総長専門の護衛騎士になっている。剣術はシオンにも負けず劣らずだそうだ」

「へぇー……」


「私語を慎み給え!」

「うわっ!」

突然、女騎士――アンリさんが剣を抜き僕たちに刃先を向けてきた。

歓声を上げていた隊員達も皆しんと静まった。


「よいのだ、アンリ」

総長が言った。

「しかし……!」

「よいのだ。わしの帰りを待つ者もいれば、初顔もおるのだ。無理はない」

「……」

アンリさんは剣をしまった。


「無礼をしたな、金髪の」総長は僕に言った。

「えっ、えっと……」

「”なぜ見えるのか” 気になるか?」

「は、はい。お察しの通りでございます」

「――先ほどそこの者が言うた通り、わしは目が見えぬ。だが"流れを掴む"力は衰えてはおらぬ」

「な、なるほど……」

「ところでお主、『黒髪』とはどういう関係じゃ?」

「えっ!?」

「"似ている"んじゃよ。"流れ"が」

「はい……あ、あの、『修行』をさせてもらいました」

「……ほう」


「『黒髪』が稽古をつけたって!? 冗談も大概にしたらどうだ!」

青年の隊員――シオンさんはそう言った。

「よせシオン。 この者は正直だ、"こっち側"はだがな」総長は言った。

「"こっち側"……?どういうことですが、総長」

「兎に角、この金髪の言うは誠だ」

「しかし……!」


「それは本当だぜ、シオン」

そう言い、総長の前まで歩いてくる人がいた。鳶人さんだ。

「鳥人間!」

シオンさんは剣を抜いた。

「おう、久しぶりだな」鳶人さんは

「なぜ貴様がここにいる!鳥人間がこの門を跨ぐなど……!」

「まだいるんだな、お前みたいな奴……俺はすぐにでもテメェを殴りてェが、女の子たちのいる前だ、そんな大事にはしたくねぇ」

「なんだと……!」

「とにかく俺は今はブレイバーだし、そこのスタン・ハーライトがレックスに稽古を付けてもらっているのは本当だ。 だからよォ……」

鳶人さんはシオンさんの剣の刃先を右手で握りしめた。

「今は仲良くして、ケリは『大会』で付けようぜェ……!」

「ぐ……!」

「ふん!」

鳶人さんは手を離した。

「ハーライト……」

総長は何か考えている様子だった。


「しかし信じられぬな。あのレックスが稽古を付けるなど……気は確かか?」

シオンさんは剣を鞘に納めながら言った。

「そこまで疑うのなら、本人の口から言いましょう」

突然、遠くから声がした。知っている声だ。僕はその方向を見る。

「レックスさ――えっ?」


そこにいた人は、僕の知っているレックスさんとは違っていた。


髪はいつもの"はね"ではなく、しっとりとした長髪になっていて、それを結っていた。

隊員服は乱れず、きっちりと前を占めている。

普段の怖い形相が信じられないほど、優しい顔つきをしていた。

レックスさんは膝をつき言う。


「不肖レックス、総長のご帰還、お待ちしておりました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ