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BRAVER-大会編-(後)  作者: Tommy
第7章-忍び寄る魔-
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48.温もり

「リーナ」


少年は、少女の名を呼んだ。


何も見えない。

何も、無い。

暗闇。


 少年には名前が無かった。

少年は、孤独だった。

そんな彼を、支えてくれた。

名前をくれた。


……


手に、優しい温もりを感じる。

誰かが、少年の手に触れる。


少女の手だった。

赤い、長い髪が、美しい少女だった。


少年は、自分の姿をよく知らなかった。

少年は、誰とも話をしたことがなかった。

少年は、言葉を知らなかった。

そんな彼に、言葉を教えてくれた。


少女の名前はリーナ。


少年が、初めて覚えた言葉だった。


「ブラッキイ」


少女は、彼をそう呼んだ。

少年を、そう名付けてくれた……


*


「はっ!」


黒い髪の青年は、飛び起きた。


周囲を見渡す。


 ブレイバー本部、医療室――そこのベッドに横たわっていた。

「夢か」

青年は呟いた。

だが、手の温もりはまだ残っていた。

彼の手を握っていたのは、女性だった。

白い、長い髪の女性だった。


「レックス」


 そう呼ばれて、彼は全てを思い出す。

 「っ!」

レックスは思わず、女性の手を振り払った。

シルクは、悲しそうな細い目で、彼を見つめていた。

 「うなされていたわ」彼女は告げる。

「すまない」

レックスは、シルクの顔を見ようとしなかった。

「……すまないが、出て行ってくれないか」レックスは続けて言った。

しかし、シルクは出て行こうとはしなかった。

「うなされていた時に、貴方は名前を呼んでいたわ。リーナ、リーナって」

「!」

レックスは、シルクを睨み付けた。

シルクは続ける。

「リーナって、誰なの?」

「お前には関係ない」

「お願い、教えて欲しいの。私は貴方のことを何も知らない」

「出て行けといったはずだろう!」

レックスは怒鳴りつけた。

「!」

シルクの瞳は潤っていた。

「……ごめん」

そう言い、シルクは立ち上がった。

ゆっくりと、立ち去ろうと歩く。

彼女は、扉の前で立ち止まり言う。

「いつでも、声をかけてね」

レックスは返事をしなかった。


「リーナ……」


医療室の窓からは、朝の日差しが差していた。

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