38.心の器
「調子はどうだ?」
「あぁ。まぁ、上々、かな」
某所の、研究室内での出来事であった。
その時鳥人間計画―通称BMPの研究員は、新たな研究の命令を下されていた。
「"生存競争"は、実行されているようだな」
「あぁ。着々と、若い世代に根付いている。私達だけの、新時代の幕開けは近いな」
「"虫"の調査はどうなっている?」
「……残念だが、まだまだだな。あれは負担が大きすぎる。侵食された"連中"がどうなってるか、見れば分かるだろう」
「しかしあれを使いこなすことができれば、かなりの力を発揮することができる」
「ただ、理性が完全に吹き飛んでしまう」
「そうだが……」
片方の男は、腕を組んだ。
もう片方の男は、研究室の机に置いてある書類に再び目を通した。
「精神エネルギーを取り出し保管する技術……これが出来たときに我ながら感動したが」
「物理的には考えられなかったことだからな。ただ……さらに難解なモノが出てきたわけだ」
「精神エネルギーを"吹き込む"。はじめ見たときは信じがたかったがな」
研究室には、それが保護されていた。
ガラス越しに、それを見つめる。
「あの武器職人が作った武器……本当に不思議な力を持つ。持ち主の精神エネルギーの大きさ、強さ……そして、"質"とでもいうのだろうか、それを読み取る」
「そしてその精神エネルギーによって、武器の強さが決まる。素晴らしいよ」
「これをあの方が持てば、我々の計画は成功を修めるだろう」
「あぁ、間違いない」
その武器を、人はこう呼んだ。
「心器,炎龍刃」