プロローグ
えー、まぁ駄作ですが、よければ見てやってください。
―――
『これまでだな、勇者』
『くっ…』
俺はこんな所で負ける訳にはいかない…守ってやると約束した奴が…大事な家族がいるんだ!だから!
『俺は死なない!』
突如、勇者の持っている剣が光を放ち始めた
『な、何だと!?その剣はまさか…』
『そう、これがお前を倒す事のできる唯一の剣…聖剣エクスカリバーだ!』
『く…だが、剣が良くても使い手がそれでは私は倒せんぞ!』
『なら見せてやるよ。俺の剣技を!行くぞ、魔王!』
『来い、勇者!』
魔王の魔法に合わせて勇者の斬撃が放たれた。
【勇者は死んでしまった】
「うぁああああっ!!」
そう叫び、コントローラを投げた黒髪の青年は桐生京介。今年で高1になったクソゲーマーだ。
「何なの?この難易度!嫌がらせだろ!」
こいつは今、無理ゲーとして知られている《勇者VS魔王》をプレイしている所だ。因みに、もう20回くらいリトライしている。
…あ、私はナレーションの佐藤だ。よろしく。
「攻略も役に立たねーし、くそ!何が魔王の技に合わせて斬撃を出す、だ!死んだじゃねーか!」
京介がぎゃあぎゃあ言っていると鍵を掛けたはずの部屋のドアが、ドガーンという変な音と共に開けられ
「うるさい!ちょっと静かにして!」
と、金髪ツインテールの美少女、というか妹の飛鳥が部屋に入って…いや、強襲してきた。相変わらずの馬鹿力である。
「なんだ、飛鳥か。俺は今イライラしてるんだ、近づかない方が身の為だぜ…」
「奇遇ね、アタシも誰かさんのせいでイライラしてんのよ」
「そうなのか。奇遇だなぁ。あはははは〜」
「あはははは、じゃないわよーっ!」
ガッっという鈍い音がしたと思うと、京介はその場に倒れていた。
「ぐふっ!…まさか…暗殺拳…とは…」
「何訳分かんない事言ってんのよ。…まぁいいわ、今回はこれで勘弁してあげる。静かにしなさいよ?いいわね?」
そう言い残し、飛鳥は部屋から出ていった。
「なんて凶暴な…この地球上にまだあんな生物がいたとは…」
なんと、京介は生きていた。あの暗殺拳(笑)を食らって生きていられるのは京介くらいであろう。
「なんだろう、凄く馬鹿にされた感じがする」
そりゃあ馬鹿にしましたからね。当然です。
「あー、クリア出来ねぇし疲れたから今日は寝るか」
ゲームの電源を落とし布団に潜り込んだ京介は、相当疲れていたのかすぐに眠ってしまった。
―『目指めよ、勇者よ』―
「(ん…ここは?)」
気が付くと俺は不思議な真っ黒い空間にいた。そして目の前には…
「(…魔王!)」
―そう、《勇者VS魔王》の魔王がそこにいた。魔王は俺にこう言った。
『私に服従を誓うか?それとも…死ぬか?』
―なるほど、これは夢だな。今の魔王の台詞は《勇者VS魔王》のバッドエンド時の物だ。…伊達に何回もプレイしてないぜ。
…ふむ、せっかくだし定石通りに答えてやるか。
「貴方に…従います」
そして魔王はこう言う。『まさか本当に忠誠を誓うとはな…見損なったぞ、勇者よ。死んで悔いるが良い』ってな。
『うむ。ではよろしく頼むぞ』
ほらな、俺の言った通り…あれ?台詞が違う?
と考えていたら、辺りが急に真っ白な光に覆われて―
「はっ…!」
目が覚めると、自分の部屋にいた。
「やっぱり夢か」
やたらとリアルな夢だったが、まぁあんな事現実に起こる訳ないしな。
「…しかし、台詞はあれで合ってるはずだけどなぁ」
「確かに、台詞は合っている」
そうだよな。つか何回もしてるから覚えてない方がおかし……ん?今のは?
俺が声のした方に向くと、そこには―
「台詞は合っているが、動作が違ったのだよ。…それにしても…」
漆黒の髪、深紅の目、白き肌を持つ―
「起きるのが遅いぞ。勇者よ」
―魔王がいた。
「ええええぇぇぇーっ!!」