第三話 バカンスって響きは結構いいよね
今日も今日とて波乱万丈の日々を送るお気楽課。
今回そんなお気楽課は、とあるビーチから話は始まる。
†
燦々と照りつける太陽。
活気あふれる白浜。
どこまでも青い海。
そんな中お気楽課の面々は・・・。
「暑い・・・」
「暑すぎますわ・・・」
暑さに参っていた。
何故お気楽課の面々がここにいるのかというと、話は前日まで戻ることになる。
†
「え!?あのパリーヤですの!?」
「え、マジですか!?」
「そうだ。今回はそのパリーヤまで行ってもらう」
女性は何の感慨も無くそう告げた。
「エルさん。パリーヤってなんですか?」
どういうことかさっぱり分からないミリーはエルに尋ねる。
「ミリーさん。知らないんですか?」
「えへへへ、・・・うん」
「ふぅ、いいですか?パリーヤという星はですね、所謂リゾート惑星なんです」
「リゾート・・・惑星?」
「そうです、パリーヤという星は軌道上の関係で1年のほとんどが夏の気候なんです。だからその星は常夏の楽園と呼ばれるリゾート惑星というわけです」
「ふぇ~、そうなんですか」
「・・・あまり興味なさそうですね」
エルに説明を求めたわりには興味がなさそうなミリー。
「私ってリゾートとかそういうのってあまり興味ないんですよね~」
「なら聞かないでくださいよ」
「そこはほら、知ることと知った後のことは別というか・・・」
少し唇を尖らせて〝私少し不機嫌です〟とばかりの態度を見せるエル。
「そこ!何を喋っておりますの!とっとと準備をしなさい!!」
「はい?」
エルに対してご機嫌をとろうとするミリーに怒鳴るキリカ。
「えっと、なんの?」
「ふふ、決まっているだろう?」
笑顔になってミリーに向き合うリリス。
「バカンスの準備だぼふぉッ!!」
女性にぶっ飛ばされ、棚にぶつかって棚ごと崩れるリリス。
「なにをバカなことをほざいているか。お前たちが行くのはバカンスなどではなく調査だろうが」
「で、でもどうせ行くんだし楽しんでも・・・」
棚から這い上がってくるリリスは尚女性に意見する。
「・・・ふむ、其処まで言うのならいいぞ」
「なに!?本当か!?」
「ただし明後日までに解決できたら、の話だ。それまでに解決できたのなら明後日が終わるまで遊んでも構わんぞ」
かなりというか本気で達成不可能な条件を出す女性だが、リリス達がそんなことを気にするわけが無く。
「「「ヒャッホーーー!!」」」
バカ丸出しで喜ぶのであった。
「早々終わる仕事ではないんだがな」
『人間こうはなりたくないですよね。私はガイノイドですけど』
†
「で、私たちはそのパリーヤにいるわけなんですけど・・・」
現在ミリーたちがいるのはとある浜辺にある海の家の中。
そこでミリーたちはあまりの暑さに全員だれていた。
「しかし予想以上に暑いな・・・」
「それが今回の任務内容ですからね・・・」
そんなミリーたちが今回請けた任務とは・・・。
「〝異常なほどの暑さになっているパリーヤを調査し、その原因を見つけ出し解決しろ〟、か」
「今更ながらですが、たった2日で解決できるはずありませんわよね」
「本当に今更ですね」
全く持って今更の事を言う二人に呆れるエル。
「・・・太陽が接近しているだけなんじゃないんですかぁ?」
『それは違います。太陽には何の変化もありません』
「どっかのか活火山の影響とかはどうなんだ?」
『現在この星にある活火山で星全体に影響を及ぼしそうなほど巨大な物は存在しません』
「じゃあ人が密集しすぎてこんな暑さになったとか?」
『よほど密閉されていない限りそんなことは不可能です。そんな発想しかないとか馬鹿ですかあなた』
「ぐくぅ」
ガイノイドにすら駄目だしを食らうナナだった。
「とりあえず色々と聞き込みするしかないんじゃないんですの?」
「ですね~、動くのすら億劫になるほど暑いですけどそれしかないですよね~」
「今回はミリーさんに心の底から同意です」
テーブルに顎をつけてだら~っとするミリー。
エルはエルでジュースを飲みながらこくこくと頷いている。
「それでは~、一度さんか~い………」
「「「「『らじゃ~~~』」」」」
~お気楽課捜査中~
「で、何か分かったか?」
2時間の後、再び海の家に戻ったお気楽課。
リリスが集まった皆に何か情報をつかんだか尋ねる。
「じゃあまず私から言いま~す」
「よし、それでは言ってくれ・・・という前になんだその格好は」
リリスが指摘するナナの格好は、明らかに色々と買い物したりして楽しんだ後の格好だった。
目には先ほどはかけていなかったサングラス。太陽の光を反射してキランと光っている。
「そ、それを言うなら他の皆さんだって明らかに楽しんだ後じゃないですか!!」
「うっ」
ナナの言うとおり、リリスもキリカもエルもミリーも明らかに常夏ルックに変わっている。
『もちろん私は遊んでないで調査していましたよ』
「嘘は駄目ですよ?明らかにさっきとは使っている燃料が違う気がします!」
『うっ、どうしてミリーはこういう時だけ変に鋭いんですか・・・?』
鋭く指摘するミリーに怯むセリエス。
本当に変なときにだけ鋭いミリーである。
「・・・だって、セリエスのことだもん。私には、分かるよ」
『ミ、ミリーさん・・・。私実は、ミリーさん―――いえ、マスターのことが・・・』
「セリエス・・・」
『マスター・・・』
そして、二人の唇はそっと近づき―――
「なにをラブコメやっとるかぁあああああああ!!?」
『うきゃぅ!?』
「えへへ、冗談ですよ~」
いきなり目の前で繰り広げられるラブラブ劇場に激怒してテーブルをひっくり返すリリス。
ちなみにキリカは赤くした顔を手で隠し(もちろん指の隙間はご愛嬌)、ナナは羨ましそうな目でセリエスを見ており、エルはジュースをチューチューと吸っていた。
「ともかくだ!別に遊んでいたのは置いといて集めた情報を出しあうぞ!」
テーブルを元に戻し、強引に話を元に戻そうとするリリス。
先ほどいの一番に手を上げたナナはとりあえず喋りだす。
「えっと、どうやらこの星がここまで暑くなり始めたのは2週間くらい前みたいですね~。あとその影響でやる気が出ない人が続出、一日の仕事がいつもの3割くらいしか進んでいないみたいですね」
「あれ?ここって観光惑星なのにそういう仕事ってあるんですか?」
ナナの発言に疑問を持ったミリーが尋ねる。
「・・・それじゃあ今ここで私たちに飲み物やらを持ってきている人は一体何をしているんですの?」
「何ってもちろん仕事ですよね?・・・ああ、そういえば仕事ですね納得納得」
「・・・他に誰かいるか?」
ぽけぽけのミリーを華麗にスルーして他にいないか尋ねるリリス。
「では私が」
「お、ではエルが分かったことを言ってくれ」
手を上げたエルはジュースをテーブルの上に置き、話を始める。
「どうやら異変があった2週間前、午後2時くらいにいきなり暑くなったそうなんです」
「なに?何の予兆もなしでか?」
「はい。しかもその日は珍しく気温がいつもよりも低かったので長袖の人が多数おり、その全員が屋内屋外を問わずに日射病で倒れたらしいです」
「ん?屋内でも?」
「はい。しかもどうしてか屋外で長袖ではなかった者は倒れなかったらしいです」
「それは、また何とも不思議な話ですわね」
「・・・あれ?」
今までおとなしくエルの情報を聞いていたミリーがふと疑問を覚える。
「どうしたんだミリー?」
「いえですね、じゃあどうして私たちは長袖ではなかったのに倒れなかったのが不思議で・・・」
「そのことについてですが、どうやら倒れたのは初日の人のみで後はこの夏の惑星でもなお異常なこの暑さが残ったのみらしいです」
「ふぇ~、不思議な話ですね~」
『本当ですね』
話を聞いても結局不思議な話ということ以外何も分からなかった。
「それで、他には何か情報はあるか?」
「私は今エルが言ったこと以外に新しいものはありませんわ」
『同じく』
「私はありますよ」
「・・・そうか、誰も他にはないのか」
「無視しないでくださいよ~」
手を上げたもののスルーされてしまうミリー。
目が潤んじゃう、だってスルーされたんだもの。
「・・・ふぅ。じゃあミリー」
「はい!あのですね、今回の事件を解決してきました!」
「「「「『・・・へー、すごいねー』」」」」
ミリーが解決したというが当然誰も信じていない。当たり前である。
「あ、信じてませんね?ほんとなんですよ!さっき歩いていたら偶然変な建物を見つけましてね、そこにランニングシャツとパンツ一丁のおじいさんがいたんですよ」
「・・・で、どうしたんだ?」
「はい、それでですね。そのおじいさんは私が話しかけると〝お、おぬしは一体どうやってここを見つけたんじゃ!?ここは光学迷彩はもちろん人の無意識に働きかけてここには近づきたくないと思わせておいたのに!?こうなったらおぬしを殺してでも、わしの計画した長袖を着る人なんて滅んでしまえ計画の秘密を守ってみせるわい!!〟と言い出していきなりビーム銃を私に向けて発射したんですよ」
「・・・いろんな意味でツッコミ所があるよね」
「で、偶然足元にあったバナナの皮で転んでしまって、そのとき手に持っていた掃除機がおじいさんの頭に当たってしまって気絶してしまったんです。そしたら転んだところに隠し扉がありまして」
「・・・なんか妙に現実味があるというかなんというか、反応に困る話ですのね」
「扉のなかには下に続く階段がありまして、そこにはやけに大きな機械があったんです。で、そこにあった変なボタンを押したら自爆しますってアラートがなったんです」
「・・・そういえば少し前に原因不明の爆発があったらしいです」
「「「『え゛っ!?』」」」
エルの言ったことに固まってしまうお気楽課。
「それでおじいさんを連れて建物の中から出たんですよ。あ、でですね。ここからが驚きなんですがそのおじいさん実は昔政府公認のある研究所にいたらしんですが、あまりにも問題を起こしまくってから逃げた指名手配犯だったらしいんですよ」
『・・・たった今インターネットに接続して確かめたところ確かにそれらしき人が捕まったらしいです』
「「「「まじで!?」」」」
セリエスから告げられた情報に本気で驚くお気楽課。
そしてミリーはなおも続ける。
「ほんと地元警察におじいさんを預かってくれませんかって言ったときはびっくりしましたよ。捕まえろーっていっぱいの警察が押し寄せてきて。それでおじいさんを警察に渡して報奨金をいっぱい貰ってきました」
ほら、と言って懐から大量のお札を出すミリー。
「「「「『・・・』」」」」
それを見て時が止まるお気楽課。
「というわけで解決したことですし、私遊んできますね♪」
そう言うと立ち上がって海の方へ走っていってしまうミリー。
すでに水着に着替えているのはご都合的展開から当たり前である。
「「「「『・・・』」」」」
そして後に残るのは沈黙したままのお気楽課の面々。
「・・・で、セリエス。本当に解決しているのか・・・?」
『・・・はい。まず間違いなく温度が下がってきており、2日もあれば元の気温に戻ると思われます』
「・・・そうか」
リリスがセリエスに再度確認するも、セリエスはまず間違いなく解決したという事実を告げる。
「「「「『・・・』」」」」
またもや沈黙するお気楽課の面々。
「解決したのはいいんだが・・・」
「が?」
「いや、やりきれないなぁっと」
「・・・ですよねぇ」
・・・。
「「「「『・・・はぁ』」」」」
やりきれない気持ちでいっぱいのお気楽課は、結局まだ時間はあったもののとても遊ぶ気にはなれないのであった。
―――こうして解決した事件は、後に〝ラフな格好の何が悪い!〟事件と語り告げられるのだが、正直物語には全く持って関係ないので割愛。
で、その頃ミリーは。
「やっぱり海は最高です~」
一人楽しく海を満喫していたのであった。
帰ってきたお気楽課は、1名を除いて雰囲気が暗かった。
「「「「『・・・はぁ』」」」」
「・・・何があったんだ?お前らは」
「いや、気にしないで遊べばよかったなぁと」
「「「『うんうん』」」」
「え?楽しかったですよ?」
「「「「『・・・はぁ』」」」」
「「?」」
ちなみにお気楽課に休暇は存在しません。
なぜかって?―――問題を起こしすぎだからです。