第一話 探すという行為は命がけである
笑って楽しんでいただけたら幸いです。
M・A暦52年
ケルセイナ星系第4惑星〝ミナカリス〟
ここにある宇宙局特別遺失物捜索課、通称〝お気楽課〟から話は始まる
†
宇宙局特別遺失物捜索課、通称〝お気楽課〟。
今ここはとても警察内部とは思えぬほど賑やかだった。というかぶっちゃけ遊んでいる。
そんな中一人の女性が中に入ってくる。
「はーい、お前らよく聞けー」
わいわいがやがや
しかし誰もそんなことなど聞かず、遊びまくっている。
「・・・おーい、お前ら」
わいわいがやがや
誰の話も聞かないこの状況に女性は肩を震わせ・・・
ぶちっ
「聞けっつてんだろうが、この大ボケ共がッ!!」
ドガッ!
静まる室内。
女性が力任せに叩いた壁には亀裂が走っている。
その有様が拳の威力を物語っているようだ。
「こほん。貴様らに仕事だ。どうやらロストテクノロジーらしき反応が見つかったらしい。今回の任務はそれの捜索及び回収だ。何か質問は?・・・ないな?それでは特別遺失物捜索課、出動せよ」
「「「「「『了解!』」」」」」
†
現在地、コーネリアス星系第2惑星フィナチア付近。
宇宙船グリュック内部。
「やれやれ、今回もやはりロストテクノロジー探しか」
そう言ったのは髪を後ろで一纏めにした紅い髪の女性。
彼女の名前はリリス・エスコット。
少しイライラとしている感じで、どこか男っぽい雰囲気がある女性である。
「まぁ、お気楽課はそういう探し物をするために作られた部署だからにゃ~」
リリスに答えたのはイスに手を頭の裏で組んで寄りかかっている薄い水色の髪をした少女。
彼女の名前はナナミア・エルモ。愛称はナナ。
軽そうな言葉で喋る明るい雰囲気の少女である。
「それにしてもまさかこんな辺境まで来るとは思いませんでしたわ」
愚痴をもらすのは金色の髪をした女性。
彼女の名前はキリカ・H・アシュハールト。
まるで貴族のような印象を受ける女性である。
「まあ、それもいつものことといえばいつものことですけどね」
愚痴に答え、ため息を吐くのは緑色の髪をした少女。
彼女の名前はエル・ミナカミア。
頭のよさそうの感じのする少女である。
「じゃあ、パパーっと終わらせて皆でどこかで遊んでいきませんか?」
今までの流れをぶっちぎるような発言をするのはピンク色の髪をした少女。
彼女の名前はミリエーヌ・白河。愛称はミリー。
能天気な雰囲気がする底抜けに明るそうな少女である。
『皆さん、もう少しで目的地に着きます。そろそろ準備をしておいてください』
そう言うのは銀色の髪をしたどこか機械的な女性。
彼女の名前はSE-Lies-517-40826。通称セリエス。
彼女はいわゆるガイノイド。しかし見た目的には普通の人と変わりないのでだれもガイノイドだということは気にしていない。
『まもなく到着致します。皆様は席にお着きください』
セリエスの声で全員が席に座る。
『それでは大気圏を突破し、地上に着陸します・・・、あ』
「「「「「・・・あ?」」」」」
セリエスは口を半開きにしたまま後ろを振り返り皆に顔を向ける。
『・・・一昨日に整備したときに旅雑誌を見て旅行に行こうとしていたので、つい旅行整備にしたのを忘れていました』
「?それが何か問題があるの?」
深刻そうに喋るセリエスに聞き返すミリー。
『つまりですね』
「つまり?」
『整備されていない星に対しての大気圏突破は事実上不可能、ということです』
し~~~ん
「・・・は?それはつまり」
「もしかしなくても?」
「そういうこと・・・、なんですの?」
「そういうこと、なんでしょうね」
『はい、そうゆうことです』
「え?え?どうゆうことなんですか?」
一人だけ事情がわかっていないミリーはあたふたしながら周りに問う。
『簡単に言いますとこの船はもう間もなく墜落します』
「あ、そうなんですか・・・って、えぇえええええええ!!?」
今更のように慌てるミリー。
「ってあれっ?皆さん何故にシートベルトをしっかりと締めているんですか?あ、そっか。墜落のショックに備えているんですね。・・・って、私も―――」
どがーーーん!!
†
「う、う~~ん」
ふらふらと起き上がるのはミリーである。
あの衝撃で無傷とは、正直いって運が良いというレベルではない。
「あ、ようやく起きた」
「あれ、ナナさん?」
まあ、当たり前だが他の皆はもう起きている。
というか気を失っていたのはミリーだけである。
「ああ、ようやく起きたのか。では、早速で悪いが出発するぞ」
「出発?どこに?」
「何を言っている。私たちがここまで来たのは何のためだ?」
「?旅行しに・・・」
「違う!ロストテクノロジーを探しに、だ」
「・・・、ああ!」
相変わらずポケポケのミリー。
任務をこうも簡単に忘れる彼女はどうやってこの職に就けたのだろうか?
『では私はグリュックを直しておきますね』
「よろしくお願いしますわ」
「では出発しよう」
「は~~い!」
†
「本当にこっちでいいのか?さっきから同じところをぐるぐると回っているような気がするんだが・・・」
いやになるほど大きな森の中を進んでもう3時間は過ぎたころだろうか。さっきから進んでいない気がしたリリスはエルに尋ねる。
「ええ。センサーを見る限りはこの方向で合っているはずです。」
「でもさっきもこの花を見たような気がするんですけど~」
そう言ってそばにある大きな黄色い花を指差すナナ。
「あれ?その花って確かマナケミアっていう・・・」
かぷり
「かぷり?」
ナナの頭に齧り付いている大きな黄色い花。
「・・・食人植物だったような?」
「・・・それはもうちょっと早く言ってほしかったなぁ~(だらだらー)」
齧り付かれたまま頭から血を流す笑顔のナナ。
「だ、大丈夫か?なにやら急激に顔色が悪くなっているが・・・」
「心配する暇があれば助けろや!!」
「あ、そんなに怒ったら・・・」
「あ(ぴゅーーっ)」
頭に血が上ったために一気に血が抜けたナナはそのままゆっくりと天に召されていき「―――ませんわ」
そう言ってエリカはナナの頭を食人植物から取り出す。
すぽんっ
「・・・まったく。これが俗に言う喋る前に手を動かせ、ですのね」
「違うと思います」
「これって意外と噛み付く力がなかったんですね~(ちょんちょん)」
「・・・お前はよくこんなのに触れるな」
恐れなど知らぬとばかりにさっきまでナナに噛み付いていた花を突付くミリーを呆れた顔で見つめるリリス。
「でもこの花って普通は群生しているらしいんですけどね」
・・・・。
「そういうのはなるべく早く・・・」
「言ってほしいですわ・・・」
キシャアアアアッ!!
5人の後ろには何十という数の食人植物が。
「は、ははは。洒落にならんほど居るんだが・・・」
「ナナさんを連れて早く、・・・あら?」
ナナの倒れていたほうを見るがそこには誰も居らず。
ちょんちょん
「ん?」
「あれ」
そう言ってエルが指差すほうを見る。
ダダダダダダダッ!!
その方向には全速力で逃げるナナの姿が・・・。
「い、いつのまに・・・」
『皆さんのことは決して忘れませんよーー!!』
「こらーー!勝手に一人で逃げるなーー!!」
そのナナに向かって怒鳴るリリス。
「・・・ナナさん、ありがとうございます。あなたのことは決して忘れません」
「で、あなたはなんで逃げるナナに向かってお礼を言っているのかしら?」
「だってマナケミアって動く生物に反応して獲物を追いかけるんですよ?」
「「「・・・・」」」
『おわぁああああ!?なんでこっちに来るんですかぁっ!?こ、来ないでぇえええええええ!!?』
「・・・自業自得、ですね」
「な~む~」
『ひゃぁああああ!?あ、あぶっ!?た、助け―――』
ぱくっ、ごくり。・・・げぇっぷ。
「・・・食べられちゃいましたね~」
「・・・そうですね」
「「「「・・・・」」」」
「い、急いで救出!!」
「「ら、ラジャー!!」」
「了解で~す!」
†
「はぁ、はぁ。し、死ぬかと思った」
急いで助け出したナナはマナケミアの溶解液によってベトベトになっており、服も少し溶けていた。
「一人で逃げるからそんなことになるんだぞ?」
「それは反省してます~」
泣きながら謝るナナ。
「そういえばまだロストテクノロジーのあるはずの場所までつかないのか?」
「もう何だかんだで結構な時間がたっていますしね~」
「そろそろ帰らないと夕食の時間までに帰れませんわ」
しかし誰も聞いていなかった。
「しどいです~(しくしく)」
「いえ、それなんですが・・・」
「どうしたんだ?」
センサーを見ながら少し困ったような表情を浮かべるエルに尋ねるリリス。
「その・・・、ロストテクノロジー反応がこちらに向かって急激に近づいてきているんです」
「なんですって?」
「もしかしてアレじゃないですか?」
「んん?」
どどどどどどどっ!!
「いや。あれじゃあないだろ・・・」
「ええ、本当に。まったくもってその通りですわ」
「ええ?でもあのなんかさっきまでのマナケミアの十倍くらいはありそうなでかさのマナケミアしかこちらに向かって急激に近づいてきているのはありませんよ?」
・・・・。
「そ、そんなわけが無いだろ!」
「そ、そうですわ!きっと地下からきているとか、空から来ているとか・・・」
「残念ながらアレからロストテクノロジー反応がします」
・・・・。
「ま、またこんな展開なんですかぁ~?」
「だが今回は誰も動いていないぞ!?」
「おそらくアレがロストテクノロジーを食べたことにより、より高度な生き物に進化したんでしょう」
「ということは逃げないと皆まとめてあのビッグマナケミアの胃袋の中ってことですよね?」
・・・・。
「み、皆走れーー!?」
「「「ラジャーー!!」」」
ダダダダダダッ!!
「あ、皆!?私まだ動けないんですけ―――」
ぱくりっ。むしゃむしゃ。・・・ごくん。
「あははははは!またナナさん食べられちゃいましたよ♪」
「ナナ、あなたの犠牲は忘れませんわ。・・・三日ほど」
「そうだな、私は彼女の勇気を忘れない。・・・四日ほど」
「まあ、そう言いつつも逃げているんですけどね」
<私はまだ死んでいなーーーい!?>
「何か後ろからナナさんの声のようなものが聞こえる気が・・・」
「それこそまさしく幻聴ですわ!!」
「その通りだ!ナナは死んだんだ!現実を見ろ!!」
<だから死んでないってばーー!!>
「あの~。やっぱりナナさんまだ生きているんじゃ・・・」
「気のせいだ!だから私たちは彼女の分まで生きるために逃げ続けるんだ!!」
「その通りですわ!私たちは明日に向かって走るんですの!!」
「どうやら食べられてもしばらくは生きていられるようですね」
キシャァアアアアアア!!?
「気のせいかどんどん近づいてきてませんか?」
「なに!?いや、まさかそんなことあるわけがないだろう!?」
「気のせいですわ!気のせいなんですわ!?」
「いえ、確かに近づいてきて、あ―――」
ぱくりっ
†
かー、かー、かー。
『・・・。遅いですね皆さん』
†
そして胃袋の中
「あ、骨が落ちてますよ」
「あーそうかい」
「後どれくらい持つんでしょうかね・・・」
「少し服が溶けてますわよ」
「お腹が減りましたね」
・・・・。
「「「「「誰か助けてくださーーーい!!」」」」」
この後、様子を見に来たセリエスによって救出されました。
『それで結局ロストテクノロジーは見つかりましたか?』
「「「「「あ」」」」」