3番地 ズボラ魔法使いと買い出し
異世界の魔法使い、日本のスーパーへ行く。
現代文明に触れたクロエの反応をお楽しみください。
……異世界パートを楽しみにされている方はごめんなさい、もう少しお待ちを。
日曜日の午前。
クロエは俺側の床に寝転がって本を読んでいる。それも俺の漫画。……コイツから見たフリー○ンってどういう感じになるんだ?
……って、そこに気を取られている場合じゃない。
すぐにでも済まさねばならない用事があるのだ。
「俺ちょっと買い物行ってくる」
「……」
「昼飯の材料」
早い話、家にあった食材が遂に尽きた。今まで毎食一人分しか作ってなかったのが急に二人分に増えたのだ。以前より早くなくなるのは当然のことである。
両親が「せめて生活費には困らないように」と多めに仕送りをしてくれているのがこれほどありがたいと思ったのはいつぶりだろうか。まあバイトもしてはいるがそれは置いておくとして。
「……私も行く」
「……なんで?」
「暇」
理由が小学生より軽いんだが。
問題はまだある。クロエが着ているのがいかにも魔法使いです、と主張しているようなローブということである。
「せめてそれで外出るのはやめろ」
「問題ない」
「問題しかないだろ。お前青い髪ってだけでも日本だと目立つのにそのローブまで加わると完全に痛いコスプレ女だぞ」
他に着ていけるような服がないというので、俺のパーカー(新品)を貸すことにした。体格が違うせいでブカブカだが多少はマシだろう……多分。
準備ができたところでアパートを出る。
クロエは見慣れない景色をキョロキョロしている。怪しまれるから程々にしてほしい。
「……鉄の馬?」
「車な」
「それにしても多い」
車がない世界から来た人が車を見た時の感想って本当にこんな感じなんだな……。
ともあれ、特にトラブルもなくスーパーに到着。
「わ。触ってないのに開いた」
「ただの自動ドアだ」
「便利。私の家にもほしい」
個人宅に自動ドアは色々面倒じゃないか?
ツッコミもそこそこに店内へ。
何を買うか考えながら歩いていく。
俺がお買い得商品を中心に見繕っている中、クロエはトテトテ、と店内を縦横無尽に見て回っていた。
コイツ本当に俺と同じハタチなんだよな?と思いつつクロエの様子を見ていると、アイス売り場で立ち止まった。
「氷結魔法?」
「冷凍庫な。ウチの冷蔵庫にもあったろ」
「………………」
アイスを凝視している……。
「……食べたいのか」
「……うん」
「1個だけだぞ。食うのは昼飯の後な」
親みたいになってしまった。
それにしても、表情変わらないのにこういうときは分かりやすいなコイツ。
アイスが溶けないうちに会計を済ませ、帰路へ。
買い物袋がいつもより重く感じる。一回あたりの買う量が増えたのをみると、同居人が増えた実感が少しだけ湧いた気がする。
……思えばクロエが来るまで、家で誰かと飯を食べることは久しくなかったな。
「食べ物がこんなに簡単に手に入る……すごい。この世界……平和」
「そうだな」
少なくとも、コイツが爆発とかしでかさない限りは。
そんなことを思いつつ、昼飯とデザートのアイスに舌鼓を打つのだった。
個人的に、パーカーを貸した時の「ブカブカ感」は外せないポイントでした。
自動ドアやアイスに感動するクロエですが、やはり食欲には勝てないようです。




