第7話 農民、怪しい液体を鑑定する
六層を突破し、いよいよ七層へ――その前に、俺たちはいつものルーティンをこなしていた。
「じゃあ、アイテム整理タイムね」
「よしきた」
俺たちが楽しみにしているのは、各階層を降りる直前に必ず置かれている宝箱。
モンスター素材は正直よく分からん。三層まで拾ってみたが、持ち歩くには荷物だし臭いし。
四層以降は俺がモンスターをミンチにして耕しちゃうから、素材なんて一切残らない。
だから、宝箱こそが俺たちの唯一の収穫なのだ。
「で、今回の収穫はっと……」
俺がリュックから取り出したのは、小瓶に入ったカラフルな液体。赤、青、緑、紫、蛍光ピンクまである。
「……何これ、ジュース?」
「いやいやいや、絶対飲んじゃダメなやつでしょ!」
レイカが警察官らしい顔でにらむ。
まあ、俺だって怪しいと思う。これまで何本も集まってるのに、未だに一度も使ってない。
「でもさ、宝箱に毎回入ってんだよな。きっと意味あるだろ」
「そうかもしれないけど……わかんないまま飲むとか自殺行為でしょ」
確かに。実際、この中身はポーションとか毒消しとか虫除けとか、攻略を楽にする必須アイテムらしいんだが――そんなこと俺たちは知る由もなかった。
「……どうすっか。もったいないよなあ」
俺が瓶をくるくる回して眺めていると、スマホがピコンと鳴った。
【新スキル:鑑定】を獲得しました。
対象物の効果を識別可能です。
「おお!? 鑑定スキル!? ついに俺にも文明が!」
「今までなかったの!? それでよくダンジョン潜ってたね!?」
レイカのツッコミを華麗にスルーし、俺は意気揚々と小瓶にスマホをかざした。
「鑑定!」
瓶が光り、文字が浮かび上がる。
【赤い液体】 ポーション(HPを回復する)
【青い液体】 マナポーション(MPを回復する)
【緑の液体】 毒消し(毒状態を解除)
【紫の液体】 虫除け(虫系モンスターの襲撃率を下げる)
【蛍光ピンクの液体】 ただのイチゴシロップ
「最後、イチゴシロップかよォォォ!!」
思わず叫ぶ俺。レイカは呆然とした顔で瓶を見つめていた。
「……え、てことは? 全部めっちゃ便利アイテムじゃん……」
「そう。俺ら、使わずにここまで来てた」
「アホすぎるでしょ!!!」
二人の声がダンジョンに響いた。
どうやら俺たちは、便利アイテムを抱えながら泥臭く戦っていたらしい。
「俺、農家なんですけど〜スコップはダンジョンを制す〜」という作品も連載しています。
よろしくです。
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