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葛の葉からの贈り物

 静かな空気が流れる中、葛の葉がふわりと尾を揺らしながら言った。

「では……最後に、私から贈り物をさせていただきますが、よろしいでしょうか?」


 その声はやわらかく、それでいてどこか神聖な響きを帯びていた。


「もちろん!」

 間髪入れずにルピナが答える。なぜか一番元気だ。


「お、おいルピナ。代表みたいに言うなよ……」と拓海が苦笑するが、

レイカも「まぁ、別にいいんじゃない?」とあっさり。

結局、全員一致で了承ということになった。


 葛の葉は満足げに微笑むと、ふと天を仰いで一言。


「――九郎!」


 その瞬間、部屋の上空がぐらりと揺らぎ、黒い羽がひらひらと舞い落ちてきた。

風が巻き起こり、あの烏天狗・九郎が姿を現す。

その隣には、小さな狐がちょこんと座っていた。


「おうお主ら、話は終わったようじゃの。

 では、この子を連れて行ってくれぬか?」


 九郎は連れてきた狐を軽く撫でる。

狐は黄金の毛並みを揺らしながら、きょとんとした瞳で拓海たちを見上げた。


「この子の名は玉藻。まだ幼いですが、妖術の才にあふれております。

 きっとあなた方のお役に立てるはずです」

 葛の葉の声には、どこか母のような優しさが滲んでいる。


「この子はもともと一階層の守護者じゃったのじゃがな。

 お主らが倒さずに二階層へ進んだから、この選択肢が生まれたのじゃよ」

 と、九郎がくちばしを鳴らしながら笑う。


「へぇ、そんな分岐が……。まるでゲームみたいだな」

 拓海が苦笑する。


 葛の葉はくすりと笑って応える。

「ええ。もし戦況が危うくなれば幻術で逃がすつもりでしたけどね。

 それにしても……九郎の言う通り、面白い巡り合わせです」


 拓海は思わずごくりと唾を飲み込んだ。

(最下層から一層の守護者まで操れる……。どれほどの力を持っているんだ……?)


 冷や汗が背を伝う。

 さすがは不死王ネクロスと並び称された、精霊王の配下。

 「敵じゃなくて本当に良かった」と、拓海は胸を撫で下ろす。


「ありがとうございます。

 あの不死王を倒すのに、戦力はいくらあっても困りません」


 葛の葉は優雅に一礼した。

「ご了承いただけたようで何よりです。

 それでは――私からの“最後の贈り物”です」


 そう言って葛の葉が手をかざすと、

拓海たちの身体がまばゆい光に包まれた。

柔らかい風が吹き抜け、金色の粒子がふわふわと舞い上がる。


「うわっ……な、なんだこれ……?」

「すごい……身体の奥から力が満ちてくる……!」


 葛の葉の声が響く。

「拓海さん、レイカさんには私の“加護”を。

 そしてルピナさん、あなたには“精霊魔法”の才を開花させました。

 きっとこれからの戦いで役立つはずです」


「やったー! ついに私も魔法少女だね!」

「おいルピナ、テンション上がるの早いって……!」


 笑いが起きる中、葛の葉は静かに玉藻の頭を撫でた。

「そして……玉藻。あなたには、残る私のすべてを託します。

 あとは――頼みましたよ」


 その言葉とともに、葛の葉と玉藻の身体が金色の光に包まれる。

「お、お母さま……!」と玉藻が鳴くような声を上げる。


「大丈夫……あなたならきっと、やり遂げられます」

 葛の葉の姿が徐々に薄れていく。

 最後に静かに微笑み、彼女は光の粒となって消えていった。


 残されたのは、涙をこらえる玉藻と、静まり返った空間。


 やがて、九郎が口を開いた。

「……葛の葉様は、眷属である玉藻に全てを託されたのじゃ。

 精霊にとって、これは“別れ”ではない。

 お主ら、人間よ――玉藻を頼んだぞ。次代の“妖王”を……!」


 九郎の声が堂々と響く中、拓海は静かに頷いた。

 新たな仲間、そして新たな希望。

 葛の葉の意志は、確かにこの場に受け継がれたのだった。


この作品はここまでで一旦完結とさせていただきます。

完結というよりは第一部完って感じですね。

また新しい構想を書き溜めたら再開したいと思います。

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