第5話 農民、ようやく出番を得る(?)
裏山ダンジョン一層目。
俺は「レイカを守らなきゃ」と身構えていた。
……が。
「やぁッ!」
「ぎゃおおおおおお!」
目の前のゴブリン、首から上がなかった。
レイカの銀刀が一閃、残像すら見えない。
「え? あ、あれ? 俺の出番は?」
「拓海は下がってて! 私、警察官だから!」
「ちょ、職務範囲広すぎだろ!? ダンジョンまで管轄外だろ!?」
そんな俺のツッコミを尻目に、レイカは余裕でモンスターを切り捨てていく。
俺は万能農具を構えたまま、ほぼ観客。
そのまま一層の最奥へ。
待ち構えていたのは、体格二回り大きいボスモンスター。
大斧を構え、咆哮する。
「ガアアアアアア!」
「……よし、ここで俺の出番!」
俺が鍬を握り直した瞬間――
「セイヤッ!」
スパァァァンッ!!!
ボスは真っ二つ。
「え、今、斬った!? 一撃!?」
「ふぅ、やっぱ武器が強いと楽ね!」
……俺、ただの荷物じゃねえか。
その後も二層、三層と進むにつれ、レイカの剣は冴え渡り、俺は完全に置いていかれる始末。
スマホの画面を見ると「高山拓海 Lv.3(経験値は仲間のおこぼれで上昇中)」と表示されている。
寄生プレイか俺は。
だが、ついにその時が来た。
四層目――そこはヘビ型モンスターがうじゃうじゃと蠢く階層だった。
「ひぃぃぃぃッ!? ムリムリムリ!!」
さっきまで無双していたレイカが、刀を投げ出さんばかりに俺の後ろに隠れた。
ああそうか、レイカは子どもの頃からヘビが大の苦手だったんだ。
「ふっ……ようやく俺の出番ってわけか」
俺は鍬を構え、大きく振りかぶる。
「耕せェェェェ!!」
ズドドドドドドッ!!!
鍬が振り下ろされた瞬間、前方の地面がごっそり掘り返され、そこにいたヘビ型モンスターは全部ミンチ。
それどころか見渡す限りがふかふかの畑みたいに耕されてしまった。
「お、おおお……!? すご……! でも、ダンジョンの地面が畑ってどういうこと!? ここ魔境でしょ!?」
「耕すのに魔境も関係ねえ!」
胸を張る俺。
だが、スマホにすかさず通知が届いた。
【称号:畑神】を獲得しました。
効果:鍬で振るうたびに一定範囲を農地化。作物育成効率+1000%
「……バトルスキルじゃなくて農業スキルばっか強化されるのなんで!?」
こうして、ダンジョンは順調に畑へと変貌していった。
「俺、農家なんですけど〜スコップはダンジョンを制す〜」という作品も連載しています。
よろしくです。
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