力押し農家と鳥目の知恵
「……結局なんだかんだで、八階層までは力押しで何とかなったな」
拓海がぼやきながら歩く。
第六階層はフグの魚人。全身トゲだらけで毒攻撃も仕掛けてきたが――
「焼けばただのフグの丸焼きだな」
「アンタ、食べる気満々だったでしょ」
「いや、ちょっと思っただけだ!」
第七階層は大河童。強力な水流と怪力が脅威だったが――
「皿を乾かしたら戦意喪失して沈んだわね」
「炎万能すぎじゃない?」
「ま、万能農具だからな」
そして第八階層。出てきたのは恐ろしげな牛鬼。
「グオォォォォ!」
恐怖の咆哮……かと思いきや。
「焼いたらステーキの匂いしかしなかったな……」
「……さすがに食べる気にはならなかったけど」
「私、ちょっとお腹空いたかも……」とルピナがぼそり。
そんな牛鬼を倒した宝箱から出てきたのは酒。
「酒……ステーキに合いそう」
「いや、そういうことじゃないから!」
そんな調子で余裕を保ちながら迎えた第九階層――
「カアァァァァ!」
そこはカラスと大ガラスが群れをなして飛び交う、完全なる鳥ステージだった。
拓海は炎で応戦するが、飛び回るカラスたちに攻撃が当たらない。
「くそっ、逃げられる!」
さらに酒を振り撒いてみたが、カラスはまったく気にせず攻撃を続けてくる。
「……効果なし、か」
「拓海ー! 農家でしょ? カラスの弱点くらい思いつかないの?」
レイカが半ば呆れ顔で叫ぶ。
「カラスの弱点と言えば……カカシ、CDのキラキラ、あと目玉風船……」
拓海は顎に手を当てて考え込み――
「ん、待てよ」
ニヤリと笑い、万能農具を構える。
「闇魔法・ブラインド!」
ドンッ、と黒い光が走った。
瞬間、カラスたちは一斉に混乱。
「カァァァッ!?」
壁に激突、床に墜落、仲間同士でぶつかり合い、場は一気に地獄絵図。
「え、何したの?」とレイカ。
「鳥目さ。鳥は夜になると目が見えにくくなるんだよ。それを応用して、万能農具の新スキル《闇魔法》を使ってみた」
拓海は得意げに胸を張る。
「へぇ……やればできるじゃない」
「たまには力押し以外も役立つのね」
レイカが軽く拍手する横で――
「でもレイカー、あんまり拓海を調子に乗らせたら、また床ぶち抜かれるわよー」
ルピナが口にクッキーを頬張りながら余計なことを言う。
「……それもそうね。拓海、程々に頑張りなさい」
「お前らなぁぁぁぁっ!」
結局、拓海だけが損したような気分になりつつも、一行は緊張感ゼロでボス部屋へと辿り着いてしまうのだった。




