第7話 猿とゴリラとピッチャーライナー
仕事の都合でしばらく休載します。
再開は11月初旬の予定です。
三階層へ降り立った拓海たち。
そこは他の階層と違って、やけに静まり返っていた。
「……あれ? モンスターの気配がないな」
拓海は周囲を見回す。
「油断は禁物よ」
レイカは警戒を解かず、腰の警棒に手をかけている。
「なんか静かすぎて気味が悪いわねぇ」
ルピナがふよふよ飛んでいると――
カンッ!
死角から石が飛んできた!
「わっ、あぶなっ!」
間一髪で拓海が身をひねって回避。だがすぐさま、別方向からまた石が飛んでくる。
「ちょ、ちょっと! 多すぎ! こんなの避けきれないわよ!」
ルピナが慌てふためく。
「どうすれば……そうか! 蜂蜜だ!」
拓海の目がキラリと光った。
さっき手に入れた「はちみつの瓶詰め」を、洞窟の見通しのいい場所に置いてみる。
すると――
「キャッキャッキャッ!!!」
一斉に姿を現した猿モンスターたち。
蜂蜜の甘い香りに釣られて、群がる群がる!
「あーーーっ! あたしの蜂蜜がーーっ!!」
ルピナが頭を抱えて喚くが、時すでに遅し。
猿たちは夢中で舐めまくっていた。
「よし、今だ!」
拓海は渾身の一撃で猿たちをまとめて薙ぎ払う。
――が、さすがに今度は床をぶち抜かずに済ませた。
「ふぅ……」
「拓海ー、万能農具のスキル吸収使っちゃいなよ。たぶんコイツら『隠密』持ってるわよ」
ルピナが横からちゃっかり提案してくる。
「え、そんなこと出来るのか?」
「出来る出来る! どうせなら吸っときなさいって」
恐る恐る発動すると――
《スキル吸収:投擲/引っ掻き/木登り/隠密を獲得しました》
「……おぉぉぉぉ!」
拓海はスマホ画面を見て感動の声を上げる。
「投擲? 引っ掻き? 木登り? ……おまけに隠密? なんだこれ、便利すぎだろ!」
「最早チート通り越して詐欺ね……」
レイカは呆れ顔でため息をついた。
「これで蜂蜜は私のモノってことで♪」
ルピナはちゃっかり瓶の残りを抱えて幸せそう。
こうして隠密スキルを手に入れた一行は、モンスターたちに見つかることなく三階層のボス部屋に到着する。
そこにいたのは――
「……でっけぇ」
拓海が唖然とする。
天井に届くほどの巨大ゴリラ――化け猿が、仁王立ちしていた。
その手には人間サイズを軽く超える大岩。
「ゴリラってレベルじゃねぇぞ……」
拓海が青ざめる間もなく、大岩が振りかぶられ――
ドゴォォォォンッ!!!
大岩が唸りを上げて飛んできた。
「俺が囮になる! レイカはボスの後ろに回って攻撃してくれ! ルピナは妖精魔法でレイカを守れ!」
拓海が指示を飛ばす。
「了解!」
「蜂蜜の分くらいは働いてあげるわよっ!」
レイカとルピナが同時に動き出した、その瞬間。
「……よしっ!」
拓海は迫り来る大岩に向かって鍬を構えた。
軽く弾き返すつもりだった――
ガァァァァァンッ!!!
鍬が岩を叩いた瞬間、轟音とともに岩は一直線に打ち返され――
ズドォォォォンッ!!!
まるでピッチャーライナー。
岩はすさまじい速度でボスの顔面に直撃。
ドガシャァァァァァンッ!!!
巨体の化け猿は、悲鳴を上げる暇もなく吹っ飛び、そのまま地に伏した。
「……あれ?」
拓海は鍬を握ったまま固まる。
「……ボス、即死したわね」
レイカがぽかんと呟いた。
「い、いや、俺は……弾こうとしただけなんだけど……」
拓海はオロオロ。
こうして化け猿は「鍬ホームラン」によってあっさり退場。
そして手に入ったのは、次の階層に役立つ「バナナの房」だった。
「……猿のボスが残すものって、やっぱりコレなのね」
「よし! これでおやつ確保ね!」
「食うなよ!? たぶん攻略用アイテムだからな!?」
いつも通りのドタバタを繰り広げながら、拓海たちは次の階層へと足を進めていくのだった。




