第4話 突然の出動命令?農家にそんなの聞いてません!
ライセンス試験を無事に終え、晴れて「正規の冒険者」となった拓海。
その日はさすがに疲れていたので、レイカに「おめでとー♪」と意味深な笑顔で見送られたことも、特に深く考えずに家路についた。
――そして後日。
「たーくみー」
玄関から軽快な声が響いた。古城レイカである。
何やら楽しそうな笑顔を浮かべながら、庭先で畑の草むしりをしていた拓海に手を振る。
「ちょっとルピナとお話させてねー」
そう言うなり、リビングにいた小さな妖精を抱えてズンズン奥へ。
「ちょ、ちょっと待て! 俺を置いて何話してんだよ!」
「ひそひそ……」
「ひそひそ……」
遠くからは、コソコソと何やら怪しい囁き声。
ときおり「ふふっ」とレイカの笑い声と「……お菓子!」とルピナのはしゃぐ声が混じって聞こえる。
数分後。
「よし、話はまとまったわ♪」
「むふーっ! お菓子いっぱいもらったー!」
ルピナは両手にぎっしり詰まったお菓子袋を抱えて、ご満悦な表情で舞い戻ってきた。
拓海は嫌な予感を覚える。
そして案の定、レイカがにっこり。
「じゃあ拓海、明日からダンジョン攻略だから準備しといてね♪」
「……は?」
予想の斜め上の言葉に、拓海は固まった。
「お、おい待て! 俺は農家だぞ!? 畑仕事があるんだ! 無理だって!」
「大丈夫大丈夫♪ ルピナが妖精魔法で畑を守ってくれるから、1日2日離れてても平気よ」
「……」
拓海はゆっくりとルピナを見る。
するとそこには、お菓子の山を抱え、幸せそうに「えへへ」と笑っている妖精の姿が。
「(……完全に買収されてる……)」
「なあルピナ、俺の味方だよな? な?」
「むぐっ……チョコうまっ。あ、うん、大丈夫大丈夫ー!」
口の周りに粉砂糖をつけながらの返事は、説得力ゼロである。
「おいレイカ! そもそも俺はただの一般人で、農具振り回してる農家なんだよ!」
必死に食い下がる拓海。
しかしレイカはにっこりと畳み掛ける。
「ライセンス取得者は、国からの指示で招集されることもあるって講習で習ったでしょ? 今回はその国の公務。ダンジョン課所属の私が直々に、腕利き冒険者の拓海にお手伝いをお願いしに来たのよ♪」
「腕利きじゃねぇよ! ただ鍬で畑耕してるだけだって!」
「その鍬でコンクリートブロック粉々にしてた人が何言ってるのかしら?」
ぐうの音も出ない正論パンチ。
こうして、拓海の抗議もむなしく、次のダンジョン行きが決定したのであった。




