プロローグ:ダンジョン会議
異星人の気まぐれによって世界各地に「ダンジョン」と呼ばれる異空間が発生してから、早くも一か月が過ぎた。
その間、各国は右往左往しながら対応に追われることになる。
まず、軽率に飛び込んでいった勇敢な(無謀な)一般人たちが、見事にモンスターの胃袋に収まり、各地で悲しいニュースが相次いだ。
だが一方で、攻略に成功した者たちから持ち帰られる「ダンジョンアイテム」は、常識外れの価値を生み出した。
たとえば、ドイツの若者が拾った「無限ポット」。水を入れて振るとビールが無限に湧いて出る。
そのニュースが流れるや否や、全ドイツ国民が「国家資産にしろ!」と喝采をあげ、ビール業界が青ざめた。
イタリアでは「ピザが冷めない石」が発見され、観光業界が涙を流しながら大喜び。
一方フランスでは「パンが勝手に膨らむ酵母」が出回り、伝統派のパン職人たちが怒りのストライキを起こした。
価値あるアイテムと危険すぎる死傷率、その両方が突き付けられ、各国政府は胃痛を抱えながら結論を迫られる。
そして国連で開かれた臨時安全保障理事会。
「これは人類存亡の危機である!」と声を張り上げる代表がいれば、
「いやいや、これは経済発展のチャンスだ!」と涎を垂らす代表もいる。
挙句の果てに某南国の代表は「ダンジョン観光を国の目玉にしたい。お土産にモンスターのぬいぐるみを!」と言い出し、真面目な議論は完全に瓦解した。
結局のところ、落ち着いた結論はこうだ。
「ダンジョンへの入場はライセンス制とする」
――要は、無謀な素人が死なないように入口でフィルターをかけよう、という苦肉の策である。
ライセンス取得には「実力テスト」が課されることも決定した。
この実力テストの内容を巡って、またしても各国は喧々諤々。
アメリカは「銃の扱いテストが必須だ!」と主張。
日本は「武道精神を見たい」と言って剣道や柔道を押し込もうとする。
ブラジルは「サンバのリズムに乗れる者なら心配ない」と妙な提案をし、全員にスルーされた。
最終的に「筋力・持久力・判断力」を測る総合テストに落ち着いたが、関係者の間では「体育祭じゃないんだから……」と失笑が漏れていた。
とはいえ、これでようやく「無法状態のダンジョンアタック」に歯止めがかかると世界中が胸を撫で下ろした。
その裏で、ライセンス取得を目指す猛者たちが列をなし、「俺が世界初のSランカーになる!」と息巻いていた。
果たしてダンジョンライセンス制が人類を救うのか、それともさらなる混乱を呼ぶのか。
少なくとも一つ言えることは――。
「テレ東だけは今日も平常運転でアニメを流していた」
という事実であった。




