第35話 エピローグ ― ダンジョンを越えて
静まり返った石造りの広間。
黒き王の幻影が消え去った後、拓海のスマホが唐突に「ピロン♪」と鳴り響いた。
「……お、来たな」
拓海が画面を覗き込む。
《ダンジョンクリア!》
続けて、称号通知が表示された。
《新たな称号:不死に抗いし者》
効果:吸血鬼化無効、魅了耐性、闇魔法耐性、吸血耐性、不死者特攻100%アップ
「……な、なんだこの盛り過ぎな称号は」
思わず苦笑する拓海。
「ふ、不死者特攻100%アップって……それ、アンデッド見つけ次第狩り尽くせって言われてるようなものじゃない?」
ルピナが肩をすくめ、呆れ顔をする。
さらにスマホ画面には武器欄の更新も表示されていた。
《新武器:闇の万能農具》
効果:火魔法、闇魔法、変身魔法、スキル吸収
※変形能力は従来と同様
「……おいおい、火に闇に変身に、スキルまで吸収って……。もはや農具の皮をかぶった別物じゃねぇか」
拓海は額を押さえた。
「ちょ、ちょっとカッコイイと思っちゃった……」
ルピナが小声でつぶやく。
「……お前な。まぁ、確かに見た目は悪くねぇけどな」
拓海も思わず苦笑し、手にした新たな鍬を見つめる。
それから二人でしばらく周囲を探したが、宝箱らしきものは見つからなかった。
「やっぱり、ダンジョンクリアのアイテムは……農具に吸収されちゃったんだろうな」
拓海の言葉にルピナもうなずく。
すると、再びスマホが鳴った。
《帰還しますか? YES/NO》
「あぁ、やっと帰れるのか……」
拓海は心底安堵のため息をついた。
「チャチャっと片付けるつもりが、結局とんでもないことになったな」
苦笑する拓海に、ルピナがじとっと睨む。
「とんでもないどころじゃないでしょ! 拓海なんて死にかけたんだから! ……帰ったら、あまーいお菓子でも食べさせてよね。もう怖いのはイヤ」
「はいはい。……っていうか、俺の服、血まみれでズタボロなんだが……これ、帰ってどう説明しろと?」
拓海は破けたシャツをつまんでげんなりする。
ルピナはけらけら笑って言った。
「レイカに見つからないといいね~」
「お前な……そういうこと言うと、本当に見つかるフラグになるからやめろ!」
二人のやり取りが石造りの広間にこだました。
戦いの緊張感も、血の匂いも、もう遠く感じる。
――こうして拓海とルピナは、たわいもない雑談を交わしながら、再び日常へと帰っていった。
畑と、野菜と、のんびりした毎日が待つ場所へ――。
「俺、農家なんですけど〜スコップはダンジョンを制す〜」という作品も連載しています。
よろしくです。
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