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第33話 不死王との死闘

 「先手必勝!」

 拓海は雄叫びと共に飛び出した。竜骨の鍬がうなりを上げて振り下ろされる。


 だが、手応えは空を切った。

 「ふむ、悪くはない速さだ」

 軽く身を翻しただけで、ネクロスは攻撃を避ける。マントが揺れるだけで一切の緊張感がない。


 「ちっ……!」

 拓海は続けざまに横薙ぎ、突き、叩き込み。畑を耕す時の全力をすべて込めて振るった。


 だが結果は同じ。

 「くく……足元ばかりが掘り返されていくな。ここで畑でも作るつもりか?」

 石床が耕され、土煙が舞う。だがネクロスの身体には傷一つついていない。


 「ならばこちらからも行こうか」

 ネクロスの右手が伸びる。白く光る爪が瞬時に長さを増し、鋭く輝いた。


 「くっ……!」

 鍬で受ける拓海。しかし衝撃で両腕が痺れる。次の瞬間には腹部、肩、脇腹へと立て続けに斬撃が襲った。

 受ける度に鍬の柄が震え、腕が裂け、血が飛ぶ。


 「馬鹿な……まだ、本気じゃないだと……!」

 拓海の顔が苦痛に歪む。ネクロスの動きは速すぎて目で追えない。


 「その程度の技量で、よくぞここまで来たものだ」

 余裕綽々の声音。彼はまだ遊んでいるだけ――そう悟るのが悔しかった。


 それでも拓海は諦めない。再び鍬を振るう。だが刃先はまたも空を切り、床に深々と突き刺さった。

 耕された石床に亀裂が走る。


 「ふふ……畑仕事なら天職だな、農夫よ」


 その嘲笑を受けて――拓海の瞳がぎらりと光った。


 「ああ、そうだよ」

 瞬間、拓海は懐から種袋を取り出し、ばら撒いた。床一面に散る無数の種。


 「ルピナッ!」

 「任せて!」

 小さな妖精が高く舞い上がり、魔法を放った。広間に雨が降り注ぐ。


 そして――拓海のスキルが発動する。

 芽が出て、伸び、絡み合い、瞬く間に大地を覆う緑の海となった。


 「なに……っ!?」

 ネクロスの身体を無数のツルが縛り付け、マントを裂き、四肢を拘束する。


 「農民を舐めるなよ!」

 拓海は吠えた。


 ――ついに、この時が来た。

 ここまであえて使わなかった竜骨鍬の真価。柄に刻まれた魔力回路が赤々と輝き出す。


 「燃えろォォッ!」

 解き放たれたのは烈火の奔流。

 前方にあるすべてを焼き尽くす、地獄の業火。ツルも石床も、そしてネクロスの全身をも包み込んだ。


 「これで……終わりだ!」


 炎は咆哮し、視界を真紅に染め上げる。

 ルピナは息を呑み、拓海は確信した――勝った、と。


 だが。


 「……残念だったな」

 不意に、背後から冷たい声が響いた。


 「な……に……?」

 拓海が振り返った瞬間、胸を鋭い爪が貫いていた。


 「ぐ……あっ……!」


 腹の奥から血がこみ上げる。視界が赤く染まる。

 目の前にいたはずのネクロスの姿は、炎の中で霧散していた。


 「吸血鬼にはな、霧化という能力がある。いかなる拘束も意味をなさぬ」

 耳元で囁く声。ぞっとするほど近い。


 「だが……炎という着眼点だけは褒めてやろう」

 拓海の身体を爪で貫いたまま、ネクロスはゆったりと告げる。

 「いくら不死といえど、圧倒的な火力で焼かれれば、我とて滅びるだろう。……もっとも、それを可能にする炎は、炎王イグニス・ヴォルカヌスの如き存在でなければ不可能だがな」


 血を吐きながら、拓海はなおも爪を握り締める。

 ルピナが絶叫する声が遠くで聞こえた。


 決戦は、まだ終わらない――。

「俺、農家なんですけど〜スコップはダンジョンを制す〜」という作品も連載しています。


よろしくです。


https://ncode.syosetu.com/n0109kx/

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