第31話 炎と雨と、農夫の知恵?
階段を降りた途端、足元がズシン、と揺れた。
「な、なんだ地震か!?」
「違う! あっち!」
ルピナが指差す方に、巨大な影がそびえ立っていた。
現れたのは、ただでさえデカいゴーレムの――さらに二倍。
高さは五、六メートルはあろうかという巨体。その表面は泥ではなく、硬質な岩で覆われていた。
「ロックゴーレム……! うわ、これまた面倒そうだな」
普通なら「鍬でドーン!」で片付けるところだが、今回は違う。
俺の頭脳がうずいていた。
「ふっ……試してみたいことがある」
「え、ちょっと。いま“ふっ”って言った? 嫌な予感しかしないんだけど」
ルピナの声を無視して、竜骨鍬を構える。
「まずは――ファイアァァ!」
竜骨鍬を振り下ろすと、ゴォォッと炎が吹き出し、ロックゴーレムを包み込む。
だが――。
「……効いてない?」
ゴーレムは悠然と腕を振り上げる。多少赤くなっているが、まるでサウナで温まっているかのように余裕の構えだ。
「ねぇ拓海、なんで火? 相手岩よ? カチカチよ? せめてつるはし持ちなさいよ!」
「いいから見てろって!」
俺はにやりと笑い、魔法を発動した。
「妖精魔法《雨乞い》!」
バシャァァァ――!
天井から降り注ぐように水の雨がロックゴーレムを濡らした。
赤熱していた岩の表面が一気に冷やされ、ジューッと蒸気を立てながら白い煙が充満する。
「ギギ……ギシィ……」
音を立ててひび割れが走り、全身に蜘蛛の巣のような線が広がっていく。
俺はそこらに転がっていた石を拾い上げた。
「とどめだ!」
――ポスッ。
ただ石を投げただけ。
にもかかわらず、ロックゴーレムは粉々に砕け散り、床一面が瓦礫の山に変わった。
「……う、嘘でしょ」
ルピナがぽかんと口を開ける。
「見たか! これぞ頭脳プレイ! 知恵と力の融合ってやつだ!」
俺は胸を張って宣言した。
「うん、確かにすごい……けど」
ルピナは腕を組んで首をかしげる。
「なんか、ただ石投げて勝った人にしか見えないんだけど」
「ち、違う! その石に至るまでの過程が重要なんだよ! 炎で温めて、雨で冷やして、そして石を投げ――」
「石投げがオチになってるのよ!」
ぷんすかと抗議する俺をよそに、ルピナはふっと笑って肩をすくめた。
「まぁでも……ちゃんと知恵で倒したんだもんね。拓海、やるじゃない」
「お、おう!」
褒められるとなんだか照れる。
……が、次の瞬間。
「え、またフラグ〜?」
にやにや顔で言われ、俺は思わず口をつぐんだ。
こうして残すは、最終階層のダンジョンボス。
農具を握りしめ、俺たちは階段を下りていった。
「俺、農家なんですけど〜スコップはダンジョンを制す〜」という作品も連載しています。
よろしくです。
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