第29話 竜骨の農具と燃えるミイラ男
「さて……武器が折れちゃった以上、このまま進むのは無理だな」
俺はため息をつきつつ、スマホを操作してショップ画面を開いた。
――表示されるラインナップ。
前に買った《万能農具》のアイコンが目に入る。……が、どうせならもっと上位モデルが欲しい。
「お、なんだこれ……?」
俺の指が止まった。
《竜骨の万能農具》
説明文には「古代竜の骨を加工して作られた至高の農具。強靭さと魔力伝導性に優れる」とある。
「竜骨……!? 農具にまでドラゴンの骨使うのかよ!」
俺の心はわしづかみにされた。これしかない!
「ルピナ、決めた! これ買う!」
「えぇ……? 竜骨の農具って……どこの世界にそんなもん欲しがる人間がいるのよ……」
ルピナは呆れ顔で頭を抱えるが、俺はもはや聞いていない。
ポチッ。
残高から五十万ポイントが消えた。以前の五倍のお値段だ。
「高っ!? あんた正気!?」
「いいんだよ! 農具に妥協は許されない!」
俺は届いた新品の鍬を掲げる。白く輝く竜骨製の刃、柄には微かな赤い紋様が走っている。まるで農具というより神器。
「……農具っていうか、もう聖剣のカテゴリじゃない?」
「うるさい! 俺にとっては鍬こそが聖剣なんだ!」
そんなやりとりをしながら九層へと降りる。
通路には再びミイラ男が現れた。
「今度こそ見せてやる!」
俺は竜骨鍬を構えて、勢いよく振るう!
――ゴォッ!
刃が走った瞬間、赤い炎が巻き起こり、ミイラ男を包み込んだ。
「ギャアアアア!」と叫び声を残し、ミイラ男は灰となって崩れ落ちる。
「わ、わわっ! なに今の! かっこいい! すごいすごい!」
ルピナが目を輝かせ、興奮気味に飛び跳ねる。
「ふっ……どうだ。竜骨の力、伊達じゃないだろ?」
俺はドヤ顔で鍬を掲げた。……農具なのに。
そのまま奥に進むと、ボス部屋が待ち受けていた。
現れたのは巨人サイズのミイラ。天井に届きそうなほどの体躯に、全身を包む古代の布。
「でっか……! でも今の俺には関係ない!」
俺は迷わず竜骨鍬を振り下ろす。
炎が轟音と共に巻き起こり、巨人ミイラを瞬く間に飲み込んでいく。
「ゴゴゴゴォォォォ……!」
断末魔の咆哮を上げる暇もなく、巨体は灰となり消え去った。
「……あれ? 終わった?」
「うん。はやっ! 拓海、今回めちゃくちゃカッコよかった!」
ルピナが拍手しながら飛び回る。俺は自慢げに胸を張った。
そしてお待ちかねの宝箱タイム。
「よーし、今度こそまともなアイテム来いよ!」
ガチャリ。中には茶色い液体の入った瓶。
《アイテム獲得:泥》
「……泥?」
「え、泥?」
スマホの鑑定結果は確かに《泥》。
「いやいやいや、なんでわざわざ泥を瓶詰めに……?」
「飲み物……じゃないわよね?」
ルピナも首をかしげる。
俺は瓶を持ち上げてしげしげと眺めながらつぶやいた。
「……泥が弱点のモンスターってなんだっけ?」
「そもそも泥を弱点にするやつなんているの?」
「さぁ……でもきっといるはずだ……多分……」
結局答えは出ず、モヤモヤしたまま次の階層への階段を降りていく。
「俺、農家なんですけど〜スコップはダンジョンを制す〜」という作品も連載しています。
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