第21話 クマゾンビと希望の聖水
三階層のボスを倒し、俺は慣れた手つきで宝箱を開けた。
カパッ……。
中にあったのは、またしても――消臭剤。
「……おい。これで何本目だ?」
「四本目だね。家中どころか村中に配れるよ」
ルピナが呆れ顔で答える。俺は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「確かに臭くて助かってるけどさ! もういいだろ! 消臭剤で世界征服でもしろってのか!?」
「落ち着いて。ほら、風を送ってあげるから」
ルピナがひとふき風魔法を唱える。たしかに匂いは消える。消えるんだが……気分的にもう嫌になってきた。
「……俺の人生、ファ◯ブリーズの広告塔じゃねえんだぞ」
そんなグチをこぼしつつ、四層へと足を踏み入れる。
現れたのは――クマ型ゾンビ。
ドスンドスンと地響きを立てながら迫ってくるその巨体に、俺は思わず呟いた。
「鼻がいい動物に限ってゾンビ化すんなよ……これじゃ栽培できねぇだろ」
「ねぇタクミ。まだ畑やる気? ここダンジョンだよ?」
ルピナの冷静なツッコミが突き刺さる。
とはいえ戦闘自体は相変わらずサクサク。
「はい、粉砕完了っと」
鍬を振り下ろした瞬間、ゾンビクマは肉片となって霧散した。
「次こそだ、次こそは違うアイテム来いよ……!」
俺は祈るような気持ちで宝箱を開けた。
中に入っていたのは――無色透明の液体。
「やった! 消臭剤じゃない! ついにこの臭気地獄から解放される!」
俺は歓喜の雄叫びをあげる。
だがルピナがすかさず「鑑定」と呟くと、スマホに結果が表示された。
――《聖水》
「…………」
「……はい、落ち着いて」
「……ってことは、まだアンデッド続くのかよおおお!!!」
俺はその場に崩れ落ち、頭を抱えて転げ回った。
「大丈夫。タクミなら、どんなゾンビも粉々にできるでしょ」
ルピナが慰めてくれる。
確かにそうなんだが、俺は膝に手をついて深いため息をついた。
「俺が欲しいのは勝利じゃない……栽培できる静かな畑なんだ……」
「ダンジョンを農地にする人間がどこにいるの!」
ルピナのツッコミがこだまする中、俺は聖水をポーチにしまい込み、次の階層へと歩みを進めるのだった。
「俺、農家なんですけど〜スコップはダンジョンを制す〜」という作品も連載しています。
よろしくです。
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