第20話 人型ゾンビと農家の夢
二階層のボスは、巨大なイノシシゾンビだった。
「はいはい、突進する前に粉々になれ」
鍬をひと振り、あっという間に撃破。もはや緊張感ゼロである。
宝箱を開けてみると……やっぱり消臭剤。
「またかよ……もう在庫処分か?」
俺はため息をつきつつ、ルピナと共に三階層へと降りた。
そこにいたのは――人型のゾンビ。
腐った顔で「ウゥー……」と迫ってくる姿を見て、俺は立ち止まった。
「……いや、これを肥料にして育った野菜、さすがに食えん」
「ようやく分別ついたの? ちょっと安心したよ」
ルピナがホッと胸を撫で下ろす。どうやら俺の常識レベルを常に心配しているらしい。
だが、その時ふと頭に閃きが走った。
「待てよ……これ、もし仲間にできたら――」
俺は思わず声を上げた。
「ゾンビを外に連れ出して、労働力にすればいいんじゃね!?」
「……はぁ?」
「ほら、畑仕事とかさ! 草刈りとか、収穫とか! ゾンビ農業団、夢が広がるだろ!」
俺が目を輝かせて語ると、ルピナは頭を抱えて深いため息をついた。
「ねぇタクミ。私みたいな妖精ならともかく、ゾンビは無理だよ」
「なんでだ? あんなに腕力あるのに!」
「ゾンビは本能でしか動けないの。畑耕すより、人襲うほうが先だから!」
「……マジか。やっぱり戦力にもならんのか……」
俺は心底残念そうに肩を落とした。
それでも諦めきれず、念のためルピナに質問する。
「ちなみにさ、人型ゾンビの好物って何?」
「そんなの決まってるでしょ。人間のお肉」
「……ダメだこりゃ。俺の農場にゾンビは雇えねぇ」
「最初からそう言ってるのに! ほんとアホなことばっか考えて!」
ルピナがぷんすか怒り、俺はしょんぼり。
そんなやり取りをしつつ、俺たちはボス部屋の扉の前に立った。
「……労働力にできたら夢が広がったんだけどなぁ」
「広がらなくていいから! さっさと倒して次行こ!」
こうして俺は未練を残しつつも、鍬を握り直して扉を押し開けたのだった。
「俺、農家なんですけど〜スコップはダンジョンを制す〜」という作品も連載しています。
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