第19話 世界初のダンジョン農夫
無惨に飛び散った大根の残骸を前に、俺は地面に膝をついて天を仰いだ。
「……俺の……俺のハツカダイコォォォン!!」
涙目で叫ぶ俺を、ルピナが苦笑いで見下ろす。
「……タクミ、ゾンビより大根に泣いてる人、初めて見たよ」
その時だった。ポン、とスマホが通知音を鳴らす。
「……今このタイミングでか?」
恐る恐る画面を覗き込むと――
《新しい称号を獲得しました! “世界初のダンジョン内栽培者”》
「……は?」
一瞬時が止まり、次の瞬間、俺は歓喜の雄叫びを上げた。
「やったぁぁぁ!! 俺は世界初のダンジョン農夫だぁぁぁ!!」
「いや、待って。それ、他に誰がやるのよ……」
ルピナの冷静なツッコミが突き刺さる。
さらに追い打ちをかけるように、効果説明が表示された。
《称号効果:ダンジョン内での植物の育成速度が促進されます》
「これだ! これを待ってたんだ! 俺の野菜作りが、ダンジョンで捗るぜ!」
「……そんなに嬉しい? 野菜……」
ルピナが呆れ顔で肩をすくめるが、俺のテンションは最高潮だった。
そうして舞台は第一層ボスへ。
現れたのは巨大なオオカミのゾンビ。腐臭を放ちながら牙を剥く。
「はいはい、野菜の敵はお前らだ!」
俺は鍬を一閃。ゾンビオオカミは粉々になり、あっけなく消滅した。
「サラッと倒したね……。もう農家っていうより、なんか……ゾンビ粉砕機?」
「違う! 農家だ!」
そしてボス部屋の宝箱を開けると――中身は消臭剤。
「ほら見ろ、やっぱりな。ゾンビのダンジョンだもんな!」
「うん、これは想定内だね」
次の階層に進むと、待っていたのはイノシシ型ゾンビ。
「うわぁ……鼻が利きそう……」
腐臭と新鮮な大根の香りが混ざって最悪だ。俺は頭を抱える。
「くっそー! 大根を鼻で嗅ぎ分けるんじゃねぇぇ!」
「いや、嗅がれて困る大根ってどうなの……」
ルピナが再びツッコミを入れる中、俺は鍬を振り下ろし、ゾンビイノシシを粉砕した。
こうして俺たちは腐臭と大根の残り香に包まれながら、次の階層へと進むのであった。
「俺、農家なんですけど〜スコップはダンジョンを制す〜」という作品も連載しています。
よろしくです。
https://ncode.syosetu.com/n0109kx/




