第15話 ダンジョン攻略後の田舎の反応
ダンジョンを二つも攻略した――と聞けば、普通のRPGや漫画なら村人から「勇者さま!」と歓声を浴びても良さそうなものだ。だが現実は、拓海とレイカが帰還しても村の空気は淡々としていた。
「へぇ、ダンジョン終わったのかい。で、田んぼの水路どうするんだ?」
「ダンジョンが増えたらイノシシの通り道変わっちまって、畑荒らされるんじゃねぇか?」
……勇者扱いどころか、会話の9割が農業の心配である。田舎パワー恐るべし。
レイカも警察署に報告へ行ったが、上官の反応は冷め切っていた。
「ふーん、攻略ねぇ。ま、あとは自衛隊の管轄だろ。俺らは交通違反の取り締まりで忙しいからな」
――どうやら、魔物と戦うより無灯火自転車の方がよっぽど重大案件らしい。
そんな日本の「ぬるさ」をよそに、世界では熱いダンジョン攻略ラッシュが始まっていた。
三日後、アメリカ軍が世界初の公式攻略に成功したと発表。ニュースは「さすがアメリカ!」「自由と正義はモンスターをも打ち倒す!」と大盛り上がり。
続いてロシア、中国、欧州諸国も次々とクリア。慎重派の日本が攻略を公表したのは七日後で、先進国ではかなり遅い方だった。
「また日本は様子見か」「石橋を叩きすぎて壊してるんじゃ?」と海外メディアに皮肉られる始末。
その一方で、世界には新たな職業(?)が生まれつつあった。
――「ダンジョン系YouTuber」である。
GoPro片手に突撃し、攻略の様子を動画で配信。中には「レベルアップで身体能力が上がるなら、軍人よりゲーマーの方が適応早いんじゃね?」と真顔で語る配信者まで現れた。
世界は混沌と熱狂の入り混じった「リアルRPGブーム」の真っ最中だった。
そんな大騒ぎをよそに、拓海たちは相変わらず村でのんびり暮らしていた。なにしろ――妖精ルピナが畑仕事に参加してくれるようになったからだ。
「ルピナ、そっちの畝に水まいてくれ」
「はぁい! 妖精魔法・しっとりシャワー!」
ルピナが両手を広げると、ちょうど良い具合の雨が畑に降り注ぐ。天候調整まで可能なスーパー農業アシスタントである。
もちろん彼女は毎日甘いものを要求してくるが、それでもお釣りが来るほど役に立っていた。
「お芋ふかしてぇ、砂糖かけてぇ!」
「この前シロップ全部飲んだばっかだろ……」
「働いたんだから給料ちょうだいっ」
……妖精かペットか、はたまた従業員かもはや境界線はあやふやだ。
こうして平和な日常が続いていた――のだが。
ある日、村にちょっとした「事件」が起きた。




