0話 『いつもの日常』
もしもし、俺はどこにでもいる一般高校生さん。
今、目の前で大怪獣バトルが勃発しているの。
「ガァアアアアアアア!!!!」
「シ"ャアアアアアアアアア!!!!」
……いやマジで誰か助けて!?
俺は平凡な高校生で今日もいつも通り普通に学校に行って、普通に家に帰っていただけなのに、どういう訳か目の前で非日常が広がっていた!
何を言っているんだと言われても、それは俺も分からん。
出来れば誰かに説明して欲しいぐらい!
んなくだらないことをしてないで状況の整理だ!
ふむ……さっき俺を襲おうとした黒色の狐っぽい宝石獣は、いきなり乱入してきた赤の猫っぽい宝石獣に上から押さえつけられてるみたいだな。
……どっちも俺の知る狐よりも尻尾が八本ぐらい多くて、俺の知る猫よりも尻尾が2本ぐらい多くてなんか尻尾の先が燃えてて、どっちも俺の10倍ぐらいデカいけど。
……なんもわかんねぇ!!!!! なんでこんなことになってんだよ!!!!
「えっ、」
「みぃー!」
目の前で始まった大怪獣バトルに処理が追いつかず、フリーズしていると横から何か聞こえ、そこに目を動かすとそこには……。
「にぃー!」
「はっ!? えっ!? 子猫!?」
子猫……いや、子猫の姿をした宝石獣がいた。
額の宝石は綺麗な翡翠色をしていて、黒と白の立派な毛皮を携えた、もっふもふな宝石獣。
そして変わらず、俺の知る子猫よりも尻尾が1本多くて、尻尾の先に火がついてるけど。
にしても、目の前にいる大怪獣バトルしてる奴らよりも、本物の子猫のようなサイズだ。
しかも可愛い。
アイツらはすげぇ怖いのに。
「えぇと……」
「ガァアアアアアアア!!!!」
「シ"ァアアアアア!!!」
「ひえっ!?」
一際デカい咆哮が聞こえてきたと思ったら、黒の狐っぽい奴の数倍近くデカくなった猫っぽいやつが、片足で軽く狐っぽい奴を押さえつけていた。
狐っぽい奴は抵抗しているが、押さえてる力が強いのか、ただ足掻いているようにしか見えない。
この短時間で一体何があったんだ……?
「……」
「っ!?」
「みぃ〜」
「はっ!? ちょ! 行くな! 危ないぞ!」
狐っぽい奴を押さえている猫っぽい奴が、ジロリとこちらを見る。
あまりの迫力に思わず固唾を飲むと、傍にいた可愛い奴がトテトテと近づいていく。
咄嗟に、俺は危ない! と思い手を伸ばすも、腰が抜けたせいで無様にも思い切り倒れ込む。
地面に伏しながらも、子猫が向かって行った方を何とか見上げる。
そこには、信じられない光景が広がっていた
まるで子猫のような子を中心に、柔らかく暖かい緑の光が展開され、それが暴れている黒色の狐っぽいやつを包んだ
その光に包まれた瞬間、黒色が舞い上がる灰のように消え、緑色の体毛が見える。
暴れていた狐っぽい奴が少しずつ落ち着き、完全に黒色が抜けると力尽きたように倒れ込んだ。
巨大だった体も俺の大きさ程度に縮み、あんな大暴れしてたのが嘘のようだった。
「な、何が起きたんだ……?」
「おい、いつまでそこで寝てやがる」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「えっ……?」
信じられない光景を見て放心していた俺の元へ、凛とした声と、鈴のような声が両耳の上から聞こえてくる。
ゆっくりと体を起こし、前を見るとそこには。
赤い髪の美丈夫と、黒い髪の美幼女が俺を見下ろしていた。