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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第1巻2巻同時発売中・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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生態系の覇者 ⑨

「それほどまでに世界は広く大きいと」

「・・・私の“蒼焔”は、あの遠くに有る星をイメージしてる」

 目の前の雄大な景色から、このスケール感を感じ取って貰えれば、“白焔”もまた、瓶詰めの炎から宇宙で燃え盛る炎へと進化できるんじゃないかな。


「陛下から“銘”を戴くまで、お前は“こうせい”と呼んでいたな」

「・・・夜空に見える燃える星を“恒星”って言うんだよ」

 お母様が頷いた気配が背中越しに伝わってくる。


「私は“紅蓮”の圧力を上げて“白焔”を生み出したが、お前は重力で圧力を上げていると。なるほど。どちらも押し込む力だな。その力が強くなればなるだけ炎も強くなるということか」

「・・・私は“蒼焔”の中心核として、とんでもなく重たい物質を創り出して、そこに燃えやすいガスをどんどん送り込んで燃えさせてる」


 さすがに重水素だとか説明しても伝わらないだろうし、科学や物理学の人と違って私には詳細な説明が難しい。

 元素の結合ガー! 生成物ガー! と言われても、聞いた話の8割ぐらいは脳ミソを貫通して反対側の耳から漏れ出してしまっていたからね。

 暗号表のような元素表もほぼ忘れちゃったし。

 ところが、お母様の記憶力は私の心配を易々と乗り越えてきた。


「燃えやすいガス・・・。ルナリアに“火”の術式を教えるときに言っていたヤツだな」

「・・・そう。可燃性のガスがとんでもない重力に引き寄せられて圧力が掛かると勝手に燃えるんだよ」

 燃焼の仕組みを理解すれば、お母様の理解はさらにその先へと進む。


「型に炎を押し込んで圧力を高めずとも勝手に燃えるのか。炎の色が違うのは?」

「・・・温度の違い。“紅蓮”は赤っぽい色だけど、“白焔”は白っぽいでしょ? さらに圧力が高まって温度が上がると炎は白から青っぽく色が変わるんだよ」

「ふむ・・・。想像―――、イメージ出来そうだ。だが、それは後で試すとしよう」

 答えに辿り着くその手前で、お母様はポンと私の肩を叩いた。


「・・・ん?」

「見えてきたぞ。川の形状から見て、恐らく、あの辺りが渡河地点だ」

 お母様が指し示した先には巨大な蛇神のように大きく曲がったナーガ川が有る。

 その蛇行する流れの形状は、マルキオお爺様が描いた地図の形状に酷似していた。


「・・・カリーク公王国軍って、こんなところを渡ってきたんだ?」

「なんでだ?」

 口を突いて出た私の感想にお母様が理由を問うてくる。


 カーブの形状は「つ」の字や「く」の字というより、「コ」の字に近いかな。

 カーブの内側には砂礫が堆積した河原を抱いていて、カーブの外側は上空から見下ろしても削り取られた河岸が切り立った崖状になっているのが見て取れる。


「・・・川が曲がるってことは、水の流れに遠心力―――、外側へ放り出そうとする力が掛かるから、岸壁が削り取られて水深が深くなるんだよ」

「連中が渡ってきたのは、その曲がった部分ではなく、あの真っ直ぐになった部分だろう」

 お母様が改めて指し示したのは、「コ」の字もの縦線部分だ。

 流れが直線になった部分は明らかに川幅が狭く砂礫の河原もない。


「・・・ええ? 確かに真っ直ぐな部分はいくらか浅いだろうけど、水は速くなってるだろうし、簡単には渡れないんじゃ」

「それでも、他の場所よりは川幅が狭くて水深が浅いらしい」

 指摘されてみれば、問題の渡河地点は真っ直ぐな流れのはずなのに水面が波立っているように見える。

 あれはつまり、川底に貯まった岩石が水流を乱して波を立てているのか。


 そうは聞いても浅い川には見えないな。

 しかも、カーブの外側部分と大して変わらないのだろう水流の速さは、しっかりと河岸を削り取っていて垂直な崖状にしてしまっている。

 あの崖も3メートル―――、いや。もう少し高さが有るように見える。


「・・・魔獣が棲んでる川を、そこまでして渡ってこなくても」

「嘘の上に恥を塗りたくった国を建てた連中だぞ。欲の皮が突っ張った恥を知らない連中が、兵の命も遺される家族のことも何一つ考えるものか」

「・・・うへぇ。最悪」

 普通に考えて、兵士を務めているのは一家の大黒柱だろう。


 そんな人たちの命を無謀な作成計画で使い捨てるのか。

 そんなことをすれば働き手を失った家庭は貧困に陥るだろう。

 私も前世で母子家庭に生まれたから、片親しかいない家庭の子供がどう育つかを知っている。


 私の場合は頭と尻の両方が軽いバカ女が母親だったから特殊かも知れないけど、単純に考えて片親家庭の子供は親から与えられる愛情が半分になるんだよ。

 私に与えられる親の愛情なんてゼロだったけどね。

 肥料を半分しか与えられなかった植物が、他の同種と較べて豊かな果実を実らせるだろうか?


 オーリアちゃんのように孤児になったら、残された子供はもっと大きなハンディキャップを背負わされる。

 だからと言って、不当に攻め込まれる私たちは敵兵に手心を加えたりしないけどね。

 私の頭上で地図を折り畳んだのだろう紙擦れの音がして、ポンと私の肩が叩かれる。


「ヨシ。大体の位置は把握した。戻るぞ」

「・・・了解」

 その場で反転した私たちは目的地に背中を向けて帰路に就く。

 順調にいけば今日中にこの場所まで戻ってくることが出来るはず。

 こうして私たちの航空偵察は地上部隊に成果を持ち帰った。



生態系の覇者⑨です。


“白焔”が進化する!?

次回、着陣!?

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― 新着の感想 ―
他より川幅が狭くて底が浅い 流量は変わらないんだからそりゃ流れはえらいことになりますよねぇ...
「嘘の上に恥を塗りたくった国を建てた連中だぞ。欲の皮が突っ張った恥を知らない連中が、兵の命も遺される家族のことも何一つ考えるものか」 すんません、某コミュニスト的な覇権国家が幾つか頭に浮かんだです。
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