表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第1巻2巻同時発売中・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

980/1148

初めての出征 ㊴

 判断を間違えずに済んだことにホッと息を吐いて自分の平たい胸を撫で下ろす。

 でもまあ、私も同じように考えていたから、緊急性が有るのに結構のんびりと構えて話し込んでいたわけで。

 だってさ。ラクネの群れの先頭が、すでにナーガ川の対岸に到達していることを、私はアクティブソナーで捕捉してるもの。


 でも、まだラクネはナーガ川の手前で対岸へ渡れる場所を探すようにウロウロしているだけで、渡河を強行しようとはしていないからね。

 この後どうなるかは分からなくて予断を許さない状況では有るけど、一刻を争うほど緊迫しているわけじゃない。

 王国の武威を代表する王都騎士団団長として数多くの情報に触れてきたので有ろうドネルクさんの顔を見上げる。


「・・・やっぱりナーガ川を越えられないんですか?」

「やっぱり、というと?」

 ハインズお爺様並みに立派な体躯をお持ちのドネルクさんが私を見下ろして答える前に、バルトロイさんが私に質問の意味を問うてきた。


 バルトロイさんも高身長のスラッとした体躯の人だけど、私の2倍ほど身長が有るドネルクさんよりもいくらかは顔を見上げやすい。

 みんな親近感を表してか近くまで歩み寄って私と話してくれるんだけど、首の筋肉が疲れてきた。


 ご自分たちの高身長は見上げる私の首が大変なことになると気付いて欲しい。

 魔法オタク街道を爆走せずに早々に結婚して子供を持っていればご自身の子供と変わらない年齢の私も落ち着いていることで、バルトロイさんも普段の落ち着きを取り戻したみたいだね。


「・・・ラクネが北岸側に居ると聞いてバルトロイ様が危機感を示されたのは、ナーガ川には雷蜻蛉の幼虫が棲息しているから、ですよね?」

「ああ、うむ。そうなのだが、事実、こうしてラクネが北岸側へ棲息域を広げている以上、警戒を強めておくべきでは無いのか?」

 咎める色を含んだ問いをバルトロイさんが向ける先は、お母様とドネルクさんだ。


「事実は事実なんだが、そう簡単に越えられるものでも無かろう? 正直、どうやって北岸側へ渡ったのかサッパリ分からんが、魔獣の生態が簡単に変わるとも思えん」

「俺も同感だな。ラクネよりもドラゴンフライの方が獰猛で強い。水の中では特にな」

 この口調。ドネルクさんは雷蜻蛉と戦った経験が有りそうだね。


 カリーク公王国との防衛戦でナーガ川の南岸へ渡った経験の有るお母様たちも、当然のことながら雷蜻蛉と戦った経験が有るのだろう。

 経験者たちが口を揃えるってことは、ナーガ川に棲む巨大ヤゴの凶暴さが想像できようというものだよ。

 水棲昆虫の生態系の頂点は、やっぱり強いんだな。


「とはいえ、バルトロイの懸念も(もっと)もでは有るな」

「背後を扼されても敵わん。一先ずの安全性が確認できるまで監視するしか有るまい」

「それが妥当だろうな。安全性が確認できるのが一番だが、長居し過ぎるのもまた新たな危険を呼び込み兼ねん」

 面倒くさそうなお母様と、泰然としたドネルクさんと、理性的に頷くバルトロイさん。


 三者三様だけど意見の合意は見た。

 率直に懸念を表明して意見は戦わせるけど、決して感情的になるのではない大人たちの”議論”。

 今までも王国の指針を決めるために王都で繰り返されてきたのだろうことを感じさせる遣り取りに、このお三方が王国の重鎮だったことを改めて再認識する。


 ともあれ、触角ヘビとの遭遇から始まった魔獣の襲撃は無事に撃退され、大きな傷を負う者を一人も出さなかったことで新人さんたちの表情にも自信が見え始めている。

 恐らくは万を超えるラクネの襲撃でも、回復薬を使うほどでもない擦り傷や小さな切り傷を負った子が数人出ただけだったよ。

 その程度の傷なら、ルナリアとピーシーズのお復習いで治癒魔法を掛けるだけで対処できる。


 というわけで、ナーガ川の流れの向こうに南岸が見渡せる河畔に移動して、日当たりの良い場所で警戒監視ならびに負傷者の治療中だよ。

 対岸の水際まで所狭しと魔獣が押し寄せて、ひしめき合っているのでなければ、ピクニックに来たような気分になりそうだね。


 実態は? といえば、先を急ぎたいのに結果を見届けるまでは動くに動けず、足止めを食らっている状況なんだけど。

 治療に当たっていたルナリアとピーシーズに興味津々だったのはバルトロイさんで、監督している私と一緒に治療現場で貼り付いて(しき)りに感心している。


「大したものだな。本当に側近全員が治癒術式を使えるのか」

「凄いでしょ!」

 脳筋傾向が強いアイシアちゃんが上手く治療を終えるのを、バルトロイさんと一緒になってアイシアちゃんの手元を覗き込んでいたルナリアが、ドヤ顔でバルトロイさんを見上げる。


 ヨシヨシ。みんなちゃんと治癒魔法のコツを覚えていたみたいで、ルナリアだけでなくピーシーズも全員が問題なく新人さんたちの怪我を治してあげることが出来た。

 怪我人なんてものは不測の事態が生み出した偶然の結果で有って、練習台を探すのが大変なのが普通なんだよ。

 テレサもそれが原因で訓練に励みたくても訓練が出来なかったわけだし。


 王国の魔法術師界のトップとも言える魔法術士団団長でも有ったバルトロイさんは、体内保有魔力量の増加と教育方法を組み合わせることによって「新たな魔法術師を育成できる」という部分がお気に召したようで、大変に満足そうだ。

 内心の興奮を抑えきれない様子で魔法オタクのバルトロイさんが頷く。


「うむ。王国の長い歴史の中でも、特筆すべき魔法術師の教育成果だ」

「・・・そんなに大袈裟な話ですか?」

 私としては戦力を増やすために有効そうな手段を手探りしただけだけど、バルトロイさんは別の角度からの見解を述べる。


「アカデミーが興味を示して研究者を派遣してくるだろう程度にはな」

「・・・ええ?」

 わざわざ王都からウォーレス領まで見に来るの?

 アカデミーといえば、魔法道具の起動実験のときに会ったことが有る院長さんのことしか知らないけど、本当に派遣されてきたらお母様とケンカを始めそうだなあ。



初めての出征㊴です。


膠着状態!?

次回、実情!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ