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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第3巻発売&コミカライズ、もうすぐです!】  作者: 一 二三


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初めての出征 ㊲

 そもそも、カリーク公王国とはリテルダニア王国の公爵家が正統性のない王権を主張して、リテルダニア王国の国土を割って勝手に独立宣言をしたものだ。

 正統性がないことを大陸中の国々が知っていて、中途半端な扱いを受けているのが彼の国だからね。

 彼の国の正当性を認めてしまっては、大陸中の既存国家が自国領の分離独立を認めなくてはならなくなるんだから。


 土地を奪って国を興すだけなら武力でどうにかなっても、政治的な地位を確立するのは簡単なことじゃない。

 はー。嫌だ嫌だ。

 敵国の事情なんて考えたくもないけど、向こうがこっちに固執する理由は理解できた気がする。

 だから何? って話だけどね。


 当時の事情がどうだったかなんて詳しくは知らないし、知りたいとも思わない。

 国土と国民を盗まれた王国側から見れば、川向こうはただの敵国だよ。

 ラクネの生態を上手く使えば楽に敵国を滅ぼせるかもなー。

 侵略戦争は許さないって、お母様に釘を刺されているから手出しはしないけどね。


「・・・ともあれ、このまま戻ると拙いかも?」

 かと言って、私が取った獲物を蜘蛛ごときにくれてやる謂われも無いしなあ。

 無用なリスクを持ち帰らないって意味は有るけど、何かに負けたみたいで嫌だ。

 「何か」って蜘蛛だけど。


 そもそも、ラクネって、どうして北岸側に渡ってこられなかったんだっけ?

 地続きだし、普通の蜘蛛なら、子蜘蛛のときに吐いた糸を風に流して空を飛ぶんだよね。

 ラクネがアシダカグモのような生態なら、風に乗って棲息域を広げることはなかったのかも。

 北岸側にラクネが棲息していることにバルトロイさんが驚いていたぐらいだし、そういうことじゃないのかな?

 だとしたら、棲息域が広がるのを阻止していたものって、何? 


「・・・考えられる地理的条件は、やっぱりナーガ川だよね?」

 ラクネは水に弱いとか、そんなのが有るんだろうか。

 いや。蜘蛛だって生物なんだから水ぐらい飲むだろう。


 アシダカグモって噛み付いた獲物に消化液を注入して、溶け出した体液を飲むんじゃなかったかな。

 消化液を使う虫は結構多かったはず。

 消化液で溶かすってことは水分なんだから、水に弱いって線は無しだな。


「・・・水・・・。水?」

 私の目がナーガ川の流れに向く。

 上空から見下ろすナーガ川は水面が日光に反射してキラキラと輝いている。

 綺麗に見えるけど、あの流れの下には獰猛な巨大ヤゴが棲んでいて、川を渡ろうとする人馬を襲うと聞いたはず。


「・・・なるほど。ヤゴか」

 雷蜻蛉(ドラゴンフライ)―――、トンボの幼虫であるヤゴって、水棲昆虫の生態系の頂点に立つ獰猛な昆虫なんだよね。

 一時期、魚捕りで命を繋いでいた私にしてみれば、ヤゴはカゴ罠に使う“魚のエサ”なんだけど。

 人間なら抜き足差し足で静かに川を渡ることも出来るだろうけど、体の軽い蜘蛛は?


 流れに逆らえずに流されるだろうし、それでも川を渡ろうとジタバタと泳いでいたらヤゴや魚に食われるんじゃないだろうか。

 だから、北岸側にラクネが棲息域を広げていると聞いたバルトロイさんは血相を変えたんだろうし。

 私も雷蜻蛉の生態を知ってるわけじゃないから断定的に自信を持っては言えない。

 けれど、勝率は高いと見た。


「・・・ちょっとギャンブルになるけど、いつまでも飛んでいられないしね」

 それに、せっかくガルダの息が有るなら、みんなの強化に使いたい。

 バンダースナッチよりもガルダが強いのかと言えば怪しいものだと思うけど、試してみないことには分からないものね。


 こうなったら“案ずるよりも産むが易し”だ。

 ラクネが川を渡ってくるようなら、みんなにも第2ラウンドを頑張って貰おう。

 もちろん、私も頑張るしね。

 ナーガ川を渡って高度を下げると、河畔でお母様たちが待ち構えていた。


「フィオレ! 無事か!」

「・・・ただいま! お母さ―――、ふぎゅっ!?」

 みんなの無事な姿にすっかり油断していた私の顔を、お母様にビタンと両手で挟み込まれた。

 ムギュっと縦に潰された私の頬をお母様の手がグニグニと押し潰す。


「お前は。あまり無茶をするなと前にも言っただろう」

「・・・ぐ、ぐみんなふぁあい」

 動かない口で何とか返事をすると、お母様は溜息雑じりに両手を離してくれた。


「ま。無事なら良い・・・」

「・・・ご、ご心配をお掛けしました」

 そう言えば、私、止めようとしたお母様の声を無視してガルダの迎撃に出たんだよね。

 気が昂ぶっていたことも有って、完全に忘れてたよ。

 叱られ中で首を竦めている私の頭が今度はグリグリと撫でられる。


「いや。不測の事態によく対応した」

「・・・うん」

 無茶をするなと叱った傍から、ちゃんと褒めてくれるんだもの。

 お母様らしい。

 ホッコリしていたら、両肩を掴んで後ろを向かされる。


「ほら。まだ仕事が残っているのだろう?」

 ポンと背中を押し出される。

 そうだった。私の魔力の手には握り潰さないように加減しつつもガルダが握られたままだった。


「・・・コレ、瀕死だけどまだ生きてるから、みんなの強化に使って!」

「オエエエエエエエ・・・」

 新人さんたちの前へ差し出したガルダは、また口から謎の液状物質を吐いている。


 魔力の手は目に見えないから、新人さんたちの目には全身を握られて細長くなっているガルダが宙に浮いているように見えてるだろうね。

 私の目にも、そう見えてるし。



初めての出征㊲です。


叱られ案件!

次回、ナーガ川!?

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