初めての出征 ㉙
「・・・グリフィンって美味しいの!?」
「む。ま、まあ、旨味の強い鳥肉のような肉では有るな」
美味しい鳥肉!!
それは是非、ガルダのお肉と食べ比べてみたい!
「・・・ほほーう! そのうち獲りに行きます!」
「君が言うと本気で獲りに来そうに思えるな」
身を乗り出している私にバルトロイさんが呆れた表情を向けてくる。
行くか行かないかを問われれば、行くに決まってるじゃん!
「・・・行きますよ? いつ行けるか全く目処は立ちませんけど」
「わたしも行くわ! わたしもグリフィンを食べてみたいもの!」
「分かった分かった。その時は歓迎しよう」
ルナリアの援護射撃を受けて1ミリも退く気が無い私に、バルトロイさんが苦笑する。
ヨシ! 勝った!
何が心苦しいって、やることが山積しすぎて具体的な日程を決められそうに無いってことぐらいだからね!
いつか絶対に行くよ! もちろん、ノーアも連れて!
鳥肉と言えば猫の好物でしょ!
一通りの話し合いが終わって脱線を始めたのを見計らったドネルクさんが、私たちを現実に引き戻す。
「随分と話し込んでしまったな。そろそろ行くか」
ホントだ。たぶん20分間ぐらい話し込んでたんじゃないかな。
まだゴールが遠い現状で取る小休止としては少し長かったか。
「ヨシ。索敵はしっかりやれ」
「・・・はい!」
別れ際に私の頭にポンと手を置いたお母様に返事を返す。
別れ際のバルトロイさんも今までに見せたことがなかった好戦的な笑みを浮かべる。
「アンリカ嬢からやり方は聞いたからな。私も索敵に挑戦してみるとしよう」
「頑張って下さい。出来るようになれば、暗殺者に不意を突かれることがなくなりますよ」
「―――ッ!!」
やり方が分かれば初めて聞いた魔法でも発動できると。
すごい自信だし、実際にやっちゃうんだろうな。
そう思いつつも有用性をアピールしてみれば、想定される状況にハッと気付いたようだ。
お母様の後任として悪事を働く権力者を裁く特務魔法術師の任務に就いたバルトロイさんは、とても危険な場所で辣腕を振るうことになるのだろう。
勧善懲悪の代名詞とも言えるご老公様の諸国漫遊記でも、逆ギレした悪人が糾弾者を亡き者にしようとする状況は有った。
ご老公様と言えば、日本人で初めて靴下を穿いたと人として有名なご老公様だよ。
あれはフィクションだけど、取り締まりに逆ギレする遵法意識の無い人というものは普通に実在した。
交通違反で警察車両に検挙された人が暴言を吐いて抵抗している姿なんて、営業車に乗って町中を走っていれば日常の光景として見掛けたものだよ。
バルトロイさんの場合は悪人の逆ギレが命に関わるからね。
結婚して早々、アンリカさんを未亡人にするなんて許さないからね?
「それは是非とも習得しなければな」
バルトロイさんは自信に満ちた頼もしい笑みを浮かべる。
情報を隠そうとすれば面倒くさい人だけど、割り切ってしまえば、これほど頼もしい人もなかばか居ないんだろうね。
互いに悪態を吐きながらもお母様と悪い関係じゃなかったバルトロイさんという人物が、どういう人なのかに初めて気付いた気がする。
王都の魔法術士団が魔法オタクっていうのも、ある意味では信頼を表した褒め言葉なのかも。
お母様に並ぶと評判の大魔法術師の実力、見せて貰おうじゃないの。
前衛部隊をメリーナさんの小隊に交代させて、小休止を終えた隊列は前進を再開する。
ラクネの群れへの警戒は続けていたけど、私たちを追ってくることはなかった。
向こうの感知範囲外なのか、主食とされる生物の死体以外には反応しないのか、どっちなんだろうね?
代わりに現れたのはお馴染みのアイツだ。
「・・・ルナリア。敵影捕捉。触角ヘビだよ」
「どこ!?」
私の周りにだけ聞こえる程度に声を抑えれば、どう見ても気が張っているルナリアが過剰に反応した。
落ち着くように背中をポンポンと軽く叩く。
「・・・12時の方向。距離3キロメテル。まだちょっと先だから、みんなに伝えるのは早すぎるかも」
「早いって、何が?」
私と2人で逃避行したルナリアでもこの調子だからね。
初めての森に緊張するのは分かるけど、緊張しすぎると良くない。
「・・・3キロメテルだよ? 居るって聞いたら、そっちばかり気になっちゃって足元がお留守にならなくない?」
「んー・・・? なるかも」
歩きながら首を傾げたルナリアは少し考えて同意した。
何かの試験だって試合だって、緊張しすぎると肩に力が入って普段通りの実力が発揮できなくなるからね。
「・・・だよね? 近くなったらまた言うから、居ることだけ覚えておいて」
「分かったわ!」
それと、口には出さなかったけど、ちょっと気になる部分が有るんだよねぇ。
もう少し近付かないと私も探知精度的に自信が無いけど、少しだけ反応が強い気がする。
初めての出征㉙です。
気になる部分!?
次回、洗礼!?




