初めての出征 ⑬
拙い! バルトロイさんが“獰猛くん”に興味を示すことは想定して―――、いや。失念してたよ!
“獰猛くん”のことを詳しく解説すれば興味を抱かれて話が長くなりそうだし、バルトロイさんが居座るのを避けたがっているお母様の意図から外れてしまいそうだ。
根掘り葉掘り聞かれておかしなボロを出すと、さらに拙いし、この場は何とか誤魔化してアンリカさんにバトンタッチしてしまいたい。
「・・・え、え~っと。何と言いますか・・・。」
「それに、あの塔のようのものも、先日来たときには無かったと思うのだが」
バルトロイさんが指すのは、“獰猛くん”の横―――、少し城壁から離れた側に鎮座している巨大な人工物だ。
「・・・あれは慰霊碑です」
「いれい、とは?」
“獰猛くん”よりは遙かに説明しやすいと紹介すれば、さらにツッコまれる。
「・・・死者が精霊様の下へ迷わず帰れるようにする目印というか、死者の霊を慰めるために建てたものです」
「なるほど。慰霊か。それで彼方のアレは何なのだろうか?」
慰霊碑に興味が移ってくれたのならラッキー、などという甘い考えは当然通用しなかった。
「・・・ど、“獰猛くん”です」
「ふむ? 獰猛、とは?」
名前だけで興味を失ってくれないかな? などと淡い期待を込めて見たんだけど、当然ながら、そこで忘れ去ってはくれない。
とにかく魔法方面に話題を持って行かさないようにしなければ。
「・・・ああ見えて獰猛なんです」
「アレが?」
私の説明にバルトロイさんが“獰猛くん”を見上げて首を傾げる。
間抜けっぽい顔だけど、ポーズは勇ましく見えるんじゃないかな?
「似ても似つかないが、顔が有るということは人を模しているのだろうか・・・。だとすれば、アレは石の巨人、“ゴーレム”というものなのか・・・」
「・・・ご、ゴーレムとは何なのでしょうか?」
ファンタシー的な位置付けだと魔法的生物というか魔物だよね?
魔法そのものに話題が繋がらないように避けても、ゴーレムという存在自体が魔法との縁が切っても切れないものだからね。
聞き手に回ってみれば話が脇道へ逸れて忘れてくれないかな?
「ん? ああ、ゴーレムとは御伽噺に出てくる守護者のことだな。“命なき巨人”などと定義されているが、実在が確認されたことは無いし、魔法道具としても巨大な石の人形が人を模した動きをするなど想定される機構が複雑すぎて現実的では無いと考えられている」
何かの文献の一節か考察論か、バルトロイさんの口からスラスラと見解が語られる。
「・・・守護とは、何を守ってるんでしょうね」
「さて。何だろうな? 御伽噺では遺跡を守っている、といった記述だったはずだが」
おっ。ちょっとだけ魔法から距離が取れたかな。
この調子で魔法から話題を遠ざけていこう。
「・・・遺跡なんてものが有るんですね」
「もちろん、有る。何らかの役目を持った先史時代の施設なのだろうが、どうやら自然界の魔力が強い場所に築かれることが多いようでな。遺跡は迷宮化していることが、まま有るらしい」
くっ! 魔法から離せそうかと期待したのに、ぜんぜんそんなこと無かった!
ダンジョンって魔法関連そのものじゃん!
自分で聞いた以上、この方向で攻めるしか無いから突き進むしかないんだけど!
「・・・まま有る、ということは、色んな地域に存在するんですか?」
「黒龍山脈に近い場所が多いな。とはいえ、魔力の強い場所というものは山や森に限らず存在する。変わった例でいえば、神教会の本拠地も元々は先史時代の都市跡で、遺跡の上に建てられた都市だと聞いたことが有る」
おや。そうなんだ。それは初めて聞く情報だな。
神教会に関する話題はちょくちょく出てくるのに、神教会に関する情報―――、特に、神教会の成り立ちに関する話題はあんまり出て来ないからね。
「・・・遺跡の上に、ですか」
「遺跡と言っても神殿のようなものではなく、墳墓のようなものだな」
都市の下の墳墓? それってカタコンペだよね?
墳墓の上に都市を築いたというよりも、土地の下に地下墓地を築いたと言った方が良いんだろうか。
地球でもそういう都市はいくつも有ったはず。
一番有名なのはフランスのパリだっけ?
私は海外へ出ることに興味が無かったから詳しく情報を漁ったことが無かったけど、限られた土地の中に死者を葬るために築かれたのが地下墓地だったはずだ。
「・・・地下の墳墓―――、いいえ。地下墓地のようなものでしょうか?」
「地下墓地・・・。ああ、そう分類した方がしっくりと来る。我々の大陸において、神教会以前に“神”という概念は無かったようだからな」
バルトロイさんに意見をぶつけてみれば、納得が返ってきた。
神教会以前か・・・。
それ、ちょっと気になるな。
敵の思想の根源が何なのかは知っておいた方が良いんじゃないか、って気がする。
初めての出征⑬です。
神教会の根源!?
次回、救いの神!?




