未来 ㉒
「お、おい! 落ちてくるぞ!!」
「「「「「うわああああああああっ!!」」」」」
集まっていた群衆もまた、ワーワーキャーキャーと蜘蛛の子を散らして逃げ出した!
上空50メートルから落下してきた推定数十トンもの岩塊が、ズシン! と土煙を上げて地表にめり込む!
「首、取れちゃったわよ!?」
「・・・く、首なんて飾りです!! 偉い人にはそれが分からんのですよ!!」
人的被害が出ていないなら、ヨシ!!
かといって、私のイメージが私の体を模したもので有る以上、首無し巨大合体ロボットではイメージが崩壊するかも知れない!
でも、全身の制御を疎かには出来ない!
要するに、今の私には新たな頭を生み出せる余裕が無い!
あ、新たな頭を生み出せないなら、胴体を頭だと思えば良いじゃない!
胸の辺りにでも勇ましい顔を描いちゃえ!
「ちょっ!! 胴体に顔が出来たわよ!?」
「・・・うむ! 頭が取れても頭は有る!」
巨大な「体」の表面がグニグニと動いて新たな造形を創り出した!
目が有って口が有れば「顔」なのだろう!?
政権を維持するための国民統制を目論んで某国が最先端技術へと昇華させたと言われる顔認識システムだって、目が有って口が有れば「顔」だよね! と目鼻口を図形として認識して個々の差違から個人を判別するものだったはずだ!
細けえこたあ良いんだよ!
監視カメラでも「顔」と認識できるなら、人の目にも「顔」と認識できるのが道理だろう!
事実、ルナリアは「顔」だと認識した!
付いてる場所が頭部だろうが胸部だろうが誤差だよ、誤差!
私が自分を納得させている間も状況監視任務に就いていたルナリアが冷静にツッコんでくる。
「何、アレ?」
「・・・むむっ」
ツッコまれてみて、改めて私も自分で生み出した「体」を観察し直してみる。
あの形状・・・。
棲星怪獣? 妖怪ぬりかべ?
いや。どう見ても、某公共放送のマスコットキャラクター・・・?
ヒラメ気味につぶらな目が有って、荒ぶる私の心理が反映されたのかギザギザの牙が並んだ獰猛な顎を大きく開いている。
“獰猛”だから“どー〇くん”だったとは、さすがの私も今の今まで気が付かなかった。
胴体も平たいコンニャク板だしなあ。
いやいやいや! 考えるな! 異世界に著作権は及ばないはず!
アレよりも白っぽくて色も違うからセーフに決まってる!
「・・・異世界にまで受信料を集金に来られるもんなら来て見ろ!」
「えっ? なに?」
私の決意はルナリアの共感を得られなかったようだけど、世の中には知らなくて良いものだって有るんだよ!
集金人を採掘場のシカの囲いに吊して、受信料が何だというのか400字以内で供述させてやる!
まあ、私は一人暮らしの自宅にテレビを置いていなかったから契約義務が無くて、著作権者とも受信料とも縁が無かったんだけどね!
そもそも、こっちの世界にはテレビもラジオも無いし、「テレビは持ってません」と言ってるのに一人暮らしの女性宅に上がり込もうとする不埒な集金人が来るはずもない!
私よりも一足早く現実世界に復帰したルナリアが、巨大スライムの動きに気付いて指し示す!
「逃げるわよ!」
「・・・させるかああああああああっ!」
間抜けっぽくて獰猛な表情の巨体が、体を伸ばす巨大スライムを追って、ズシン!! と足を踏み出した!
一歩では腕が届かなくて、もう一歩、二歩と踏み出し、その度に近い辺りの群衆がワーキャーと叫びつつ逃げ惑う!
もっと遠くまで逃げてくれれば良いのに、娯楽の少ない世界では、多少の危険ぐらいで面白そうなものから人々は離れてくれない!
知らない人に語って聞かせるための情報源で、現場に居合わせた野次馬は正義なんだよ!
しかし、あんな人集りの真上に転んだら大惨事確定だ!
マリオネットにでも触ってみれば分かるけど、自分の触覚や平衡感覚と直結しない人形の操作は難しい!
魔力の手による力任せと短い足を踏ん張ることでコケないように耐えてるけど、一歩二歩を踏み出すだけでも直立を維持するのが危うい!
またフラリと背中向けに倒れようとするから、魔力の手パワーで傾倒を直立に引き戻す!
「・・・ぬおおおおっ!! こ、コレ、ムズい!!」
巨体の維持とバランスの維持と巨大スライム捕獲の維持で、私は一杯一杯だ!
追い込まれている私がそう長く現状を維持できそうに無いと気付いたらしいルナリアにも、私の焦りが伝播する!
「どうするの、これ!?」
「・・・どうって、どうすれば良いの!?」
考えろ! 知恵を捻り出せ!
かの思想家パスカルも言った! 「人間は考える葦である」と!
あんまり気を逸らせる余裕は無いけど、考えることでしか打開策を見出せる道は無い!
どうする!? どうすれば良い!?
フィジカル最強でも、手も足も出なかったのに・・・!
あっ! フィジカルがダメならマジカルの出番じゃないの!?
最初、そう言ってたじゃん!
落ち着け。深呼吸して脳細胞に酸素を送り込め。
改めて、この巨大スライムに何の魔法が効きそうかを考えてみる。
剣で斬ってダメなら風魔法は効かないだろう。
しかも、実際に斬ってみてくれたのがフィジカル無双のドネルクさんだ。
土魔法と水魔法はどうだろう?
土に浸透して生きている粘菌生物に、土魔法が効果的とは思えないよね。
固形物も液体も関係なく排泄物をエサにする生物に、水魔法がダメージを与えられるとも思えない。
落ち着いてイメージを膨らませれば色んな魔法が出来そうだけど、リソースを使い果たして切羽詰まっている今は、新しい魔法なんて考えている余裕も時間的猶予も無い。
未来㉒です。
モザイク発動!?(著作権保護
次回、あの人!?




