未来 ㉑
運悪く通り掛かって巻き込まれただけなのに、何だかんだと付き合ってくれるドネルクさんの人柄の良さがよく分かる。
見かねたエゼリアさんたちも一緒になって斬り掛かってるけど、斬った痕は即座に埋まって痕跡を見付けることも出来なくなる。
巨大スライムの方も、逃げようとはしているけど痛みを感じている様子はない。
「こんなにデカいの、どうしろってんだ!?」
「ダメです!! 効果ありません!!」
「・・・うーむ」
確かに効いてないよね。
痛覚がないどころか血を流してる様子もないし、この粘菌、単細胞生物?
コイツ、物理ダメージ無効か?
でも、逃げるってことは何も感じていないわけでは無い?
体の両端を地中に潜り込ませて、巨大スライムの引きが急激に強くなる。
「・・・ああっ! 逃げる!」
「逃がしちゃダメよ!」
ルナリアの声を耳に聞きながら、固めた土で出来た両腕を振り上げて再び引きずり出す作業に復帰する!
フルパワ―――ッ!!
「うおわあああああっ!!」
「あっ!」
鉱山用巨大パワーショベルがごとき両腕が上空へ持ち上がって、驚いて頭上を見上げているエゼリアさんの腕をハッシと掴み取ったドネルクさんが一目散に後方へ退避していく。
「ちょっ!? 退避―――ッ!!」
「「「わあああああああっ!!」」」
エゼリアさんが退避したことに気付いたアンリカさんたちも、慌ててドネルクさんたちを追って行く。
みんな逃げ足の速いこと速いこと。
「・・・おおぅ」
判断も早いけど、オリンピック選手も斯くやってぐらいのスピードで、蜘蛛の子を散らすように数十メートル先まで逃げて行った。
逃げて行くときの呼吸の揃い方にも歴戦のチームワークが見て取れた。
逃げるときは潔く逃げる。
アレはアレで戦士として優れた判断だろう。
ドネルクさんがエゼリアさんを置き去りにしなかったところも高評価だよ。
巨大スライムとの格闘戦に戻った私は、ホッコリしてる場合じゃないけどね!
「・・・くんぬああああああああああああっ!!」
渾身の力を籠めてズルズルと引きずり出そうとするけど、さっきよりも長い!?
上半身が起き上がって両腕を空へ突き上げているのに、巨大スライムの両端は地中に潜ったままだ!
もっと高く!!
もっと上に上げるにはどうすれば良い!?
背丈を伸ばす!?
でも、私の体をイメージしている以上、私の姿から懸け離れたものになると制御が揺らぐ恐れが有る!
クッソ! こうなったら、こうだ!!
「・・・うおおおおおおおおおおっ!!」
日本のサブカル産業と日本人の妄想力を舐めんなよ!!
吼えろ! 私の記憶力!!
私の脳内に有る動画を見た記憶に魔力が反応して現実世界に顕現する!!
仮想の体を足まで認識を広げて踏み上がる!!
重量挙げのように掲げた両腕に巨大スライムが生み出す荷重を載せたまま、階段を昇るように地上へ「足」を踏み出す!!
ズシン! と左足が地表を踏み、地中から引き抜いた右足も、ズシン! と地表を踏む!!
推定身長50メートル!
寸胴短足だけど、紛うことなく人型を模した巨大な体躯がレティアの町中に直立した!!
頭頂部よりも高く掲げた両腕の高さは地上70メートルは有るだろう!
ここまで来て、ようやく巨大スライムを大地から引き剥がすことが出来た!!
「何だこりゃ!?」
「巨人!? いや、ゴーレムか!?」
建設作業に従事していたエクラーダ系新領民だけでなく、元々のウォーレス領民も西部からの新領民も野次馬に出てきて遠巻きにして、私の「体」”を見上げている。
何を話してるのか気になるな。
身体強化魔法で視力とか聴力を引き上げられるんだっけ?
ルナリアもアイシアちゃんも使ってるしな。
試しに体内の魔力を耳に回してみれば、おっ? 何となく聞き取れそう。
「ゴーレムって魔物だっけ?」
「おとぎ話に出て来る魔物です!」
「そうそう! “命なき巨人”ってヤツですよ!」
アンリカさんたちまで野次馬と一緒になって騒いでいる。
「アレっておとぎ話なのかしら?」
「さあ? 見たこと有りませんし」
「そうよね」
エゼリアさんたちもか!
だから、私が動かしてるから魔物じゃないんだって!!
私が地上の領民たちの声で意識を逸らしている隙に、みょーんっと体を伸ばした巨大スライムが再び逃亡を試みる。
左側を指してルナリアが焦った声を上げた。
「逃げる逃げる!」
「・・・こんのおおおおおおおおおおっ!!
私の「腕」から逃れようとした巨大スライムの位置は左手側へ大きく偏っているから、右手を離して左手の向こう側を掴み直す!
「・・・あっ」
大きく右腕を内側へ振ったものだから上腕部が頭部にゴツンと干渉した!
肩の上に乗っかっているだけで制御が甘かった頭部が、横方向から掛かった荷重に耐えられずに折れた!
傾いた首が肩から分離して、スローモーションのように重力に引き寄せられていく!
未来㉑です。
フィオレ、大地に立つ!
次回、著作権!?




