幼女サバイバー ⑦
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
食べ物の情報を得る伝手も無いまま、この子は、一体、いくつの歳から路上で暮らしていたのか。
「絶対に死なせやしないから、一緒に生きて行こうね・・・」
自然と、そう呟いていた。
絞って岩の上へ広げておいたワンピースは、早くも乾き始めている。
麻布は生地の目が粗いから、ちゃんと絞れば、比較的、乾きやすいんだよね。
「・・・はあ、岩が暖かい・・・」
直射日光で暖められた岩は、冷えた身体よりも、ほんのりと暖かくて気持ちが良い。
ぺたぺたと手のひらで親愛の意を込めて大岩を叩く。
まっぱ(素っ裸)の幼女が岩の上で大の字とか、他人様には見せられないよねえ・・・。
おや? よく見ると、この岩、花崗岩なんだね。
日本のお墓の墓石によく使われてる、あの石。
花崗岩ってことは組成に石英が含まれるから、打ち合わせる鉄片が入手できれば一応は火打石に使えたはず。
石英って言うのは、和名で水晶、英語名でクォーツとも呼ばれるガラス質の鉱石だよ。
クォーツ時計の、あのクォーツ。
普通のガラス炉が1600℃弱なのに対して、2000℃を越える超高温の炉で石英を溶融させると耐熱ガラスが作れる。
石英って含有量の違いだけで、結構、様々な岩石に含まれるから、それそのものは珍しい鉱石では無いんだけどね。
純度が100%に近づくほど価値が上がるのは何の鉱石でも同じで、石英含有の純度が高い水晶の結晶が宝石扱いされて高価なのは、当然の話。
最近の火打石は硬くて高い石英の代わりに柔らかくて整形しやすいマグネシウムを使ったものが多いみたいだけど、火打石に焼き入れした鋼を擦るように勢いよくぶつけると削れた鋼の破片の方が酸化して火花が散るんだよ。
焼き入れした鋼、というと、刃物の刃の部分に使われているのがそうだね。
炭素が2%ほど含有される硬い鉄の合金が「刃金(鋼)」。
でもまあ、鉄であれば効率が悪くても鋼の代わりにはなるんじゃないかな、知らんけど。
どこかに落ちていかなあ・・・、鉄片。
確か、切り出す技術や運搬手段が未発達だった中世の時代って、石材も木材も貴重な資源だったんだよね。
戦争で敵の砦や集落を責め落としても、建材を再利用するぐらいには貴重な資源だった。
当然、炉で熱して抽出しなきゃならない鉄なんて、もっと貴重に決まっている。
この世界の文明レベルが不明だから、素材や道具類に対する価値観も不明。
私のモラル的に泥棒するのはアウトだし、どうやって手に入れるかな・・・。
ゴロリと岩の上で寝返りを打って俯せに水面を覗き込むと、岩陰の澱みに映った今の私の顔がよく見える。
「・・・あれまあ・・・」
この子、なかなかの美形だね。
頬がこけて目の下にすごい隈が出来てて唇もがさがさにひび割れてるけど、ぱっちりと大きな目で顔の造形はとても整っているから、きっと将来は美人さんになるよ。
今は痩せ細っているから、ギョロリとした大きな目、だけどね。
5~6歳ぐらいかな? 同じ年齢でも外国人の子供は日本人の子供よりも年上に見えるって言うけど、この子は深刻な栄養不良児だから、日本人の感覚で年齢を自称してもいいんじゃないかな。
うん。私は6歳、そう決めた。
白っぽく粉を吹いていると思っていた髪は、黒髪ではなく白髪・・・いや、青み掛かった輝くような銀髪で、瞳の色は明るい紫色? かもしれない。
砂を絡めて冷水で洗った上に、手櫛でしか整えていないからボサボサだけど、伸び放題の髪、というわけでも無さそうだから、数ヶ月前までは、しっかり髪も手入れされていたのでは無いだろうか。
ちゃんとした鏡で、じっくりと見てみたいなあ。
身綺麗にするのは不味ったかな? この子の顔面偏差値だと、小学校へ入ったか入らないかぐらいの歳でも、変態じゃなくとも劣情を催すかもしれない。
しっかり食べて、いくらか輪郭がふっくらしたら、完全無欠の美少女になると思う。
近付く他人への警戒レベルを最高水準まで引き上げておいたほうが良さそうだ。
今は自分自身でも有るのに、私がこの子を守ってあげなきゃ、なんて考えてしまった。
他人を警戒するのは得意だよ。
幼少期の私が、一番、警戒しなきゃいけなかった相手は自分の母親だったわけだけれど、お陰で対人警戒スキルが必要以上に磨き上げられたし。
逆に対人スキルは壊滅したけどね。
「・・・ヨシ、行くか」
私のサバイバル経験で得た知識を総動員して、ふっくらモチモチの美少女にしてくれる。
ワンピースはまだ半乾きだけど、この程度なら歩いていれば乾くだろう。
幼女降臨エピソード⑦です。
ようやく主人公の容姿が明らかになりましたね。
次回、新たな食料とエンカウント!