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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第1巻2巻同時発売中・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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開眼 ⑰

「それで、領民強化計画の件でしたか。エクラーダの民の大半はピーシス領の領民となることを希望していると耳にしましたが」

「・・・そうなんだけど、そのままピーシス領へ移しても住居が無いでしょ」

 切れ者の空気を纏ったジアンさんの確認に最優先課題を提起する。

 小さく首を傾げたジアンさんから返ってきたのは、現状で決まっている方向性だ。


「それで一旦、レティアで住居建設に従事させるのでしたね?」

「・・・西部地域からの移住民もウォーレス領へ向かってきてるらしいから、レティアの住居建設と平行してピーシス領にも建設する必要が有ると思う」

 私が相談したいのは、エクラーダ民が新領地へ移った際の住居確保だ。

 先に建てないと移るに移れないんじゃないだろうか。


「そうですね。建てた順に移り住ませて、向こうで建設に従事させましょう。空いた住居は西部地域からの移住民を住まわせれば無駄になりません」

「ジアン。マリッドは何と言っている?」

 お母様の質問が飛んできて、ジアンさんがお母様に向き直る。


「地所の権利を所有している者も多く居ますので、それを整理するぐらいなら、旧領都2つの間に新たな領都を建てた方が早いと」

「大仕事になりそうだな」

 ミセラさんが淹れて回っているお茶に手を伸ばしながら、お父様が息を吐く。

 地所の権利ってことは、旧領主は小作じゃなく土地の所有権を販売しておカネを作っていたわけか。


「・・・ん? ええ・・・?」

 とんでもないことにハッと気付いて、手に取りかけていた丸パンを籠の中に落とした。

 ちょっと待って。封建制度の国で?


 領地って王様から貰った自分の権力の源泉でしょ。「領主」なんだから。

 それを、たくさん売り飛ばしちゃってたの?

 それってお腹を空かせた蛸が自分の足を食べているようなものじゃないの?


 自作農というものは、通常、小作農よりも税収が下がるものだ。

 しっかりとした産業が育って栄えているのなら自作農家からの税収で儲かるだろうけど、まともな産業も無いじゃん。

 輸出に回す農作物も単価の安い小麦ぐらいしか無くって、関税で儲けたいから関所の通行をガバガバにしましょうって言ってた人たちでしょ?


 安定的で確実な利益をもたらしてくれる土地の権利を売り飛ばすなんて、高収益な小作料が入って来なくなるじゃん。

 目先のおカネに目が眩んだのだろうけど、そんなおカネで贅沢三昧をしていたなんて、もうバカを通り越して破綻目前の末期症状だったんじゃないの?

 いやまあ、使いにくい不便な場所の未開地を開拓して欲しいから売るっていうのなら分かるよ?


 でも、今話してるのって住居建設の話なんだから城壁内の限られた土地の話だよね?

 下手をすると土地の転売で不動産バブルが起こる危険性も有ったんじゃないの?

 旧領主統治下は重税だったって聞いてるし、何をどうやったら、そこまでバカになれるんだろう?

 よほど絶望的な顔でもしていたのか、私の表情を見てクスリと笑ったジアンさんがお父様に真面目な顔を向ける。


「騎士と治癒魔法術師の養成施設建設事業も有ります。あちらでは領民の仕事が不足しておりますので、仕切り直しには丁度良いでしょう」

「・・・むむっ。仕切り直しで町ごと新しく作るのかぁ。おカネが掛かりそうだね」

 ジアンさんのお陰で、ちょっとだけメンタルが持ち直したよ。


 よぉし、落ち着け。

 絶望したところで何も生まれないし、慌てたところで状況が好転するわけでもない。

 マリッドさんのプランは、町の中心部を物理的に他所へ動かしてしまって、土地の権利を持っている者を郊外に追いやるってことだろうね。


 それなら地上げが不要になる。

 町の再開発をする手間が省けて自由に領都を整備できるよね。

 綺麗に町並みを整備するなら、権利を買い取った人たちの土地の価値が下がる大義名分も有るだろう。

 権利を買い戻したり、権利の転売が起こると、貧富の差が大きくなるかも知れない。


 そもそも、拡大していく町の中心部に畑は要らない。

 旧領主が犯した間違いを修正するなら、遷都によるリセットは有効な手段になる。

 自分ちが郊外になったからと言って、畑の収穫量が変わるわけでも無いからね。

 これって、ワールターさんの入れ知恵が入っていそうだな。


 エゼリアさんのお兄さんであるマリッドさんは、いかにも騎士って感じの人で、お父様の部下を長年務めているだけ有って、雰囲気もお父様に似たところが有る。

 堅実に、着々と仕事を進めてくれていたのだろうマリッドさんのプランを進めるに当たって、必要なものは?

 ゼロから町を作り上げるためには、再開発よりも大きなおカネと、多くの人手と、時間が必要になるってことぐらいか。


 人手は有る。

 時間も、まあ有る。

 すると、この場合―――。


「塩と干し肉のお陰で当面の資金は問題ないぞ。魔法術師を増やしてくれれば建設費用もさらに安く上がる」

「・・・そっか。ありがと」

 先回りして答えをくれたお父様に、本当に感謝だ。

 必要な手札が揃っているなら事業に取り掛かれるし、私がすべきことは、お父様が言うように魔法術師を増やすことだ。


「農地も増やして食料を増やすのでしょう? 住居と食料が有れば人は生きて行けると領民を諭したのは貴女でしょうに」

「・・・そうだったね」

 シェリアお婆様が言う通り、農地を増やすことと、利益になる作物を生み出すことで税収を増やして、ウォーレス領から借りた投資資金は返済できる。



開眼⑰です。


地上げ回避!?

次回、地政!?

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― 新着の感想 ―
まあ、封建制度を破壊するのが目的なら、それが正しい行動だったのかも知れませんね?
>>おカネが掛かりそうだね→当面の資金は問題ないぞ 先回りしてって言うけど、実際には自分が勝手に一周回ってきてるだけなんだよなぁ。
旧領主ども、ほんとに目先の贅沢しか見てなかったアホだったんだなぁ、、、
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