迫る影 ㉛
今になって思えば、王様が考えた“銘”って私たちの得意分野を短い言葉で上手く言い表してる。
スピードだけならルナリアはアンリカさんにも勝ってるらしいからね。
今は体重も軽いし打撃力が無いからルナリアは刺突一辺倒なんだよ。
エターナさんとの模擬戦でやっていたように、足を止めての打ち合い殴り合いではルナリアに勝ち目は無かった。
ルナリアもそれが分かっているから、じっとエイラさんたちの動きを観察してどう戦うかをシミュレーションしていた。
エイラさんの敗因はルナリアの土俵で戦ったことだろう。
「・・・“疾雷”って、速い雷って意味だよ」
「確かに速かったです」
ショックを飲み込んで顔を上げたエイラさんにヒントをあげる。
これも経験だよ。
これは模擬戦で実戦じゃないから次に活かせばいい。
ルナリアはルナリアで、一撃でキメれば実戦での“初見殺し”は永遠に有効だし。
むしろ、エイラさんたちがルナリアの“疾雷”対策を練れば、模擬戦で相手の対策を経験したルナリアは対策を躱して一撃を入れる訓練になる。
それが模擬戦をする意味で、模擬戦と実戦の違い。
「・・・ルナリアの速度で近付かれたら目では追いきれないし、ピッタリと貼り付いておかないと、本気で足を使われたらついて行けないよ」
「そこまで見通されておられるとは、さすがフィオレ様ですね」
また称賛が始まりそうな気配でエターナさんが感心する。
そうはさせないぞ。
称賛モードに入りそうなときは妄想に浸っているのか、目がキラキラしてくるから発動の予兆が読めてきた。
パタパタと手を振ってネタばらしをする。
「・・・いやいや。いつもみんな、それでヤラレてるから」
ピーシーズのみんなの受け売りだよ。
その上で、貼り付こうとするみんなを振り切って、ルナリアに距離を取られてる。
ルナリアのスピードにはエゼリアさんたちも一目置いてるぐらいだからね。
「みんな、と仰いますと、フィオレ様ご自身は剣術をなさらないのですか?」
「・・・練習中では有るよ。剣術では、とてもじゃないけどルナリアに敵わないから、私は魔法の方に力が入ってるけどね」
エターナさんの問いに肩を竦めて答える。
私なら剣を抜いて始める前に魔力の手でキュッと絞めるかなあ。
動こうとする寸前に相手の足を地面に貼り付けておけば勝手に転けるだろうし。
模擬戦ではNGだけど、実戦なら問答無用じゃない?
卑怯上等。
キエエエエエエ! も、アイエエエエエ! も、何も言わせないよ。
慈悲は無い。
「ご安心を! フィオレ様にはただの一兵たりとも近寄らせません! 安心して魔法術式に集中してください!」
「・・・ああ。なるほど。私は魔法に集中すれば良いのか」
それ、模擬戦だとNGだしダメじゃん。
でも、実戦なら?
エターナさんたちが壁を作ってくれている間に焼き払う。
始まる前に“蒼焔”をブチ込んで、戦場を焼け野原にしてから魔力の手でプチプチと討ち漏らしを潰していくのも「有り」だな。
敵に何を言われようと私の知ったこっちゃ無いし。
勝てば官軍。死人に口なし。
これが「勝てば良かろうなのだ!」ってセリフの使いどころか。
元ネタの書き込みがあったはずだけど、よく知らないからセリフだけ何となく覚えてた。
「・・・ふむ?」
エターナさんたちが本陣前で鉄壁の防御をしてくれるなら、後ろに鍛えまくった強力な魔法術師を並べて、遠距離攻撃で敵陣を更地にしてから歩兵部隊が悠々と進軍するビジョンも見えてくる。
確かそんな展開の戦争も有ったよね。
イラク戦争? 湾岸戦争だっけ?
巡航ミサイルを撃ち込みまくって防空網と通信網をズタズタにして、制空権を完全に掌握してから空爆しまくって、防衛戦を木っ端微塵にしてから陸上部隊が侵攻して、あっという間に占領した。
戦争なんて一方的に勝つのがベターなんだし、違う世界の戦訓でも活かせるものは活かせば良い。
まあ、あの辺の戦争は宗教が絡むから、無差別テロやら即席爆弾やら何やらでその後の占領統治に散々苦労したらしいけどね。
だんだんエクラーダ部隊の運用方法が見えてきた気がする。
「・・・盾。・・・盾か」
エターナさんのように、エクラーダ剣術を使う人たちが「盾」で在ることに自負を持っているのなら、部隊丸ごとを「盾」と考えて防御に徹して貰えば良いのか。
それに、ちょっと思い付いちゃった。
「・・・エターナさん。明日から徹底的に、体内保有魔力量を増やすことに注力してくれるかな」
「えっ? あ。はい!」
こうやって即座に受諾するエターナさんたちなら、何の疑問も挟まずに頑張ってくれるだろう。
脳筋具合でいうなら、ある意味、エターナさんたちはウォーレス領の人たちよりも脳筋レベルが高い。
それはピーシーズで試してきた脳筋教育法が効きやすいと考えることが出来る。
私のイメージ通りに行くのなら、“最強の盾”が出来上がる。
迫る影㉛です。
邪悪!?
次回、反省!?




