迫る影 ⑪
12歳で人並み以上に体格が有るってことは早熟な体質なんだろうけど、成長期が終わったときに、身長面の成長に使われていた分の栄養はどこへ行くんだろうか?
騎士は運動でカロリーを消費するから贅肉になるとは考えにくいし。
そうなると、尻か胸か・・・。
じーっと胸をいると、私の視線に気付いたエイラさんが居心地悪そうに身じろぎした。
おっと。スケベなオッサンのセクハラ攻撃みたいになっちゃたか。
性的な意味は無いから気にしなくて良いのに。
「ディーナみたいだな。アイツも12の頃には体格が良かった」
「・・・ほほう。ディーナさんも」
エイラさんの返事を聞いてお母様が懐かしそうに言った。
お母様の側近の中でも一番の脳筋と言われるディーナさんなら、早熟で成長が早く止まって余ったカロリーが筋肉量か筋肉密度に変換されて、オーバーフローした筋肉が首から上にまで浸食した可能性が有り得るのか?
当然ながら、エイラさんにはディーナさんが誰なのかは分からないけど、私が反応したのを見てエイラさんはディーナさんに興味を持ったようだ。
「ディーナ様ですか?」
「私の側近の一人だ。槍を持たせれば男性騎士よりも強くてな。槍に興味が有るなら教わるといい」
「教わります!」
目をキラキラさせて拳を握るエイラさんの姿に、ディーナさんの姿を重ねて想像してしまう。
これが10年も経てば・・・。
「・・・エイラさんも脳筋に・・・」
「お前は人のことを脳筋と笑えんだろうが」
私が漏らした声を聞き逃さなかったお母様の指先が、ツンと私の頭を突っついた。
思っても見なかったことを言われて、慌ててお母様を返り見る。
「・・・えっ!! 私って脳筋なの!?」
「みんな脳筋だから気にしなくていい」
「・・・ああ。うん?」
お母様がヒラヒラと手首を振って話題を切り捨てて、頷きそうになった私の首が傾ぐ。
それ、気にしなくて良い部分なの?
あれ? 誤魔化された?
「また一人増えたわね!」
「・・・そうだねえ」
釈然としない思いを掘り下げる前に、ルナリアが投げ掛けてきた声で思考が引き戻される。
立ち位置的にエイラさんはエターナさんの副官になりそうだよね。
アリアナさんが長期出張で抜けたピーシーズは、現状、横並びだけど、年齢的にメリーナさんとネイアさんが纏め役になっている。
エクラーダ部隊のトップがエターナさんとして、エイラさんはピーシーズの立ち位置になるのか、それともピーシーズ増員メンバーの立ち位置なるのか。
まだ実力も分からないのに判断しようとするのは早計かな?
エバンさんが鍛えていたっぽいからエイラさんに対する期待値は高いんだけどね。
受け入れるのが決まりとなれば、把握しておきたくて気持ちが逸る。
エゼリアさんたちにも意見を訊いてみてから構想を練るべきだろうか。
現状、既存の新人さんたちが急速育成を終えてエクラーダ部隊の急速育成に回せるリソースは有る。
エイラさんの他にも女性騎士志望者はいた。
領軍に入りたいという人や子供たちもいたし、リソース配分の計画を考えないとなー、などと意識を飛ばしていたら、扉が開け放たれたままの廊下から声が掛かった。
「失礼いたします」
「どうした?」
お母様の問いに、両手で大きなトレイを持ったディディエさんたちが戸口で答える。
「はっ。フィオレ様の命により、食事をお持ちしました」
「・・・ありがと。ディディエさん、ダーナさん」
私たちが道を空けると、ニコリと笑ってエバンさんが使っていた向かい側のベッドの上にトレイを置いて、ディディエさんたちは廊下へと退出した。
「ふむ?」
「丁度良かろう。概ね処置は決まった」
首を傾げて判断を問うお母様にお父様が応える。
ヨシ。無事に乗り切った。
有用な人材を2人確保できたと私は密かに拳を握る。
「エバン。今日はゆっくり休んで、明日、体調に問題が無ければ装備品の支給を受けろ」
「はっ。有りがたき幸せ」
敬礼で応えるエバンさんにお父様が一つ頷く。
お父様たちが遣り取りを終えれば、それを見届けたお母様の目が私に向く。
「フィオレ。エイラの方は任せる」
「・・・はい」
私の返事に頷き返したお母様は、ルナリアと私の頭をダブルでぐりぐりした後、お父様へと目を戻す。
「では、私たちも仕事に戻るとしよう」
「お、おお。そうだな」
穏やかそうに見えて圧力の有る笑みを向けられてお父様が頷く。
今日はみんな忙しくしているし、僅かな時間でも書類から逃げられる時間が取れたのだから良かったよね?
”休憩時間”が終わってしまって、どこか煤けた空気を漂わせたお父様が背中を向ける。
迫る影⑪です。
脳筋判定!?
次回、依頼!?




