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幼女サバイバー ⑤

趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。


人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。

雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。

 中世ヨーロッパ的な甲冑に身を包んだ兵士らしき人が通行する人や馬車を止めて、町へ入ろうとする一人ひとりに話しかけている。

 まさに、ザ・関所、って感じだよね。

 ただ、町から出て行く人には、戦闘職らしき人たちとは顔馴染みなのか、互いに軽く手を挙げ合って挨拶しているだけで、深くチェックしている様子は無い。


 これならば、目立たなければ町から出ることは難しく無さそう。

 関所は兎も角、城塞都市ってほどでは無くとも堅牢な城壁が有るってことは、野生動物なり人間なり、町にとっての外敵が存在するってことだよね。

 そのつもりで、私も周囲に警戒しなきゃ。

 物陰から物陰へ、よたよたと隠れながら様子を伺う。

 荷馬車か何か、この小さな体なら、物陰に隠れたまま町の外へ出られないかな。

 そう考えていたら、来た。


 重そうな何だか分からないゴミ? を、満載した荷馬車が、のっそりのっそりと重そうな足取りの馬に牽かれて私が隠れている物陰のほうへとやって来る。

 普通の馬車のスピードには、この弱り切った私の足では付いて行けそうになかったので、見張りの随伴者も付いていないあの荷馬車は打って付けだと思う。

 私が隠れている物陰の傍を通り掛かったタイミングで荷馬車の下へ潜り込み、ギシギシと軋む荷馬車のスピードに合わせて懸命に歩く。

 関所へ通り掛かっても、荷馬車はスピードを落とさず、そのまま城門を通り過ぎる。

 暫く荷馬車の下から出ないまま歩き、灌木の茂みの傍を通り掛かったタイミングで荷馬車の下から飛び出して茂みの陰へと転がり込んだ。


 ・・・はぁ、疲れた。

 ハアハアと荒くなった息が収まるのを待って、周囲の様子を伺う。

 誰にも見られていないはず。

 ・・・・・ヨシ、誰も居ない。

 荷馬車はゆっくりと、それでいて着実に遠くへと去って行った。


「・・・うわあ・・・」

 風景に感動を覚えたのなんて、いつ以来だろう。しばらく見入ってしまった。

 日本みたいな温帯湿潤気候よりも、少しだけ乾燥気味なのかな。

 もしかしたら、いくらか標高が高い地域なのかも。


 人間の気配に怯えなくても良い状況になって落ち着いて周囲を見渡してみると、低い灌木と下草に覆われた起伏のある大地に、疎らに高木が生えた広大な景色が視界いっぱいを占める。

 荷馬車が去って行った街道? は、起伏を避けるように、うねりながら数キロメートルは先であろう地平線の向こうへと消え去っている。


 これなら雨が降らない水が希少な乾燥地帯ってわけでも無さそうだし、雨ばかりでジメジメした環境ってわけでも無さそうに思う。

 街中の建物も土レンガや高床式じゃなかったしね。

 なかなか雨が降らない土地だと山菜を採ろうにも野草が生えていないし、いきなり詰んでしまうところだった。

 それに、乾燥地帯だと野生の小動物が少なかったり、湿潤すぎると蛇や蜘蛛や虫が多すぎて、早々に毒や感染症で私の弱った体がやられてしまう恐れが有る。

 日本人としては、日本みたいに適度な雨が降る温暖な気候が耕作にも向いていて、一番生きやすいと思う。


 見える範囲で人工物は私の数百メートル背後にある城壁に囲まれた町だけだ。

 あの城壁、高さは5メートルぐらいだと目測で見積もってたんだけど、地形に合わせた感じの歪な円形をしていたんだね。

 何もない雄大な自然の中に、ぽつんと置かれた刑務所みたいでシュールだ。

 城壁の所々に物見台っぽい小さな塔が建っていて、なかなかに物々しい雰囲気が有る。


 城壁から右手へ視線を移すと、灌木が無くなっていて、緩やかな丘陵地帯が青々と揺れている。

 あれは冬撒きの小麦畑かな? だとしたら、パン食かパスタ類が主食の食文化なのかもしれない。

 小麦粉が有るなら、うどんは作れるかも?

 水田じゃないから、米食文化では無さそうだよね。


 城壁から左手へ振り向くと、少し離れた辺りから先が延々と濃緑色に染まっている。

「・・・・・森・・・だよね?」

 山とは違うから、これはちょっと想定外だった。

 浜辺から太平洋を望んでいるみたいに濃緑色の海が続いていて、ここの町が相当に規模の大きい未開拓領域に隣接した場所であることが伺える。


 町の外に有るのは、山、だと思ってたんだよ。

 日本という起伏が激しい地形に暮らしていたから「広大な森」というのは初めてだ。

 あそこが目的地、ではあるんだけど、飲み水の確保が心配だよね。

 水は高きから低きへと流れる。

 山だと、谷の底へ下りれば水を見つけられる確率が上がるけど、平地だと確率が分散し過ぎて山の子の私では水の在処を絞り切れなくなる恐れが有る。


「うーん・・・」

 どうしよう? 水さえ有れば、人間は食料が無くても半月ぐらい生きられると言うし、水の確保を優先するべきじゃないだろうか。

 小麦畑のほうを、ちらりと見る。

 潤沢とは言えなくても、水が全く無い場所に小麦畑は作れないだろうから、きっと小川か地下水脈ぐらいは有るんだろうね。

 どちらへ向かうべきか思案しながら周囲の景色を改めて見回してみる。

「・・・・・んー?」

 荷馬車が去って行った街道の方向に、いくらか高木が多めに生えている辺りが有るように見える。

 あれって、もしかして・・・。


 意を決して、馬車の後を追う方向へと歩き始める。

 そんなに遠くには見えないんだけど、栄養不良の子供の身体には少しキツい距離かも。

 休憩を挟みながらだけど、2時間は歩いただろうか、段々と目指していた高木の密集地が近付いてくる。

 ほんと、体力無さ過ぎだろ、この子。

 自分が欠食児童だった頃を基準にしても、この子の体力の無さには驚かされる。歩くだけでも予想以上に疲れたよ。


 ふう、ふう、と、息も絶え絶えだけど、緩やかに上っていた地形の頂上付近まで何とか辿り着いて、その先を見下ろす。

「有った!」

 陰気な私にしては珍しく、大きな声が出たと思う。

 小川だ!

 緩やかに下って行く地形の先が落ち窪んでいる様子で、木製の欄干が付いた橋が掛かっているように見える。

 半ば勘だったけど、そこだけ植生が違う場所には何らかの水が有ることがあるんだよね。

 気持ちは急くが、余計な体力を消耗しないように、ゆっくりと落ち着いて歩いて橋まで辿り着いた。


幼女降臨エピソード⑤です。


やっと町から出ました!

次回、幼女は野生に還ります。

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― 新着の感想 ―
体力ないというけど、推定餓死か病死で死んで生き返ったにしては普通に元気すぎるんよなぁ。 死なずに手遅れになる前に何らかの拍子に記憶が戻ったとかなんかしら。
 野生に「還」る、と言うことは、標準状態が野生だった! のですね。
この世界の動植物に関する知識は引き継いでいるのでしょうか……?
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