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猫耳ニンジャ爆誕 ②

 私の悪い笑みを見てしまったのか、テレサが口元を隠して苦笑する。

「そうでしょうね。フィオレは商人でも生きて行けそうですわ」

「・・・どうだろうね? 私は、私に出来ることをするだけだよ」


 日本で生きた記憶があっても、たかが、その辺のOLだったよ。

 今も昔も、私は自分が生き残るために必死なだけで、私の知識なんて大したものじゃない。

 自嘲や謙遜ではなく、これが、ただの現実。


 お肉を確保しつつ、自分のスキルアップに七転八倒しながら、一歩ずつ進んで行くしか無い。

 現に、今回の騒動も、お母様たちが頑張って、お婆様たちが上手く人脈を活かしてくれたから成立しているだけで、私の我が儘を呑み込んで形にしてくれたのは、全部、度量の大きい大人たちなのだから。


 逆の立場に立って私が誰かの我が儘を上手く活かせるかと言えば、全く自信が無い。

 自分の無力さを再確認しながら馬の背に揺られていると、領主館の方向から騎馬が大通りを駆けてくる。


 何だろう?

 見覚えがある騎士様が必死そうな形相で駆けてきて、私の顔を見付けてパッと表情を明るくした。


 無精ヒゲが目立つから、西部地域から帰って来た輜重部隊の人かな。

 私に用事っぽいなあ。

 手綱を引いて馬の足を緩めた騎士様が、私たちの直前で大声を上げた。


「フィオレ様!」

「・・・どうしたの?」

「それが、フレイア様からフィオレ様の下へ、必ず届けるように、と、念押しされて護送の命を受けた子供が、目を離した隙に居なくなりまして!」


 直訳で考えれば、「お母様が私に子供を送って、その子が居なくなった」となるけど、意味がよく分からない。

 戦災孤児かな?

 情報が少なすぎる。


「お母様から私に? 子供が居なくなった? 落ち着いて話して」

「は、はい。西部国境地域でフレイア様が保護した獣人族の子供です」

「・・・ふむ? その子の姿を最後に確認できた場所と時間は?」


 大体の事情は察した。

 “亜人族”と呼ばれる獣人族は神教会が幅を利かせている西方諸国地域では迫害対象で、捕らえて神教会へ送らせていると聞いている。


 労働力として優秀な獣人族の迫害や奴隷を禁じているリテルダニア王国が神教会と険悪な理由の一つだけど、王国内では獣人族の迫害を許していないのだから、「保護して送る」ということは、迫害ではなく「別の理由」で保護した可能性が高い。


 「別の理由」とは、奴隷だ。

 西方諸国の奴隷制度に強い嫌悪感を持っているお母様が、わざわざ「私」を指定して送ったのなら、まず間違いないだろう。


 お母様が「必ず」と念押ししたのなら、そうするだけの理由が有るはず。

 私のときに、お母様は、どうやって「流通」を阻止したと言っていたっけ?


「北門の検問所では、衛兵が馬車の荷台に乗っている姿を見たと。1時間ほど前です」

「・・・北門と南門の検問で、町から出る荷物や馬車を徹底的に調べさせて。何か情報が有ったら領主館へ報せて」


 それだ。「検問所」だよ。

 お母様とハロルド様が検問で怪しい連中を通さなかったから、私は今、こうやって、生きてレティアで暮らして居られる。


 先ずはお母様に倣うんだ。

 カバンが邪魔だな。

 大事なデータも入っているから持ち歩きたくない。


「あ、あの、フィオレ様は、どうされるので?」

「・・・直ぐに探しに出る。あっ、その子の特徴は?」


 背中に背負っていたカバンを下ろし始めた私を騎士様は止めたそうに訊くけど、お母様から託された子供が今は最優先だ。

 他でも無いレティアの町中で万一が有っては、私を信じて託してくださったお母様に顔向けできない。

 目線で催促すると、騎士様が記憶を探る。


「猫人族? 豹人族? でしたか。珍しい猫系の獣人族だそうで、年齢は3歳ほど。濃い茶色の髪と耳の、本当に小さな少女です」

「・・・その子の名前は?」


「そこまで詳しい情報は・・・。ただ、王国語が通じません」

 騎士様が困った顔をする。

 得られそうな情報は、ここまでだな。


「・・・分かった。あなたは直ぐに南北両方の門へ報せて。―――アリアナさん、私の馬も領主館へ連れて帰って。ナンナちゃん、カバンをお願い。―――ほら! あなたは早く行って!」

「は、はっ!」

「えっ!? ちょ、フィオレ様!?」


 強い言葉でお尻を叩かれた騎士様が馬の腹を蹴って走り出し、不意に私からカバンをパスされたナンナちゃんが慌ててキャッチし、鞍から飛び降りた私にアリアナさんの慌てた声が降ってくる。

 馬上のアリアナさんに、私の馬の手綱を投げる。


「・・・ゴメン! 行ってくる!」

「私が行きます。アイシア、馬をお願い」

「オーリア!?」


「私も行くわ!」

「あっ! ルナリア様!」


 自分の足で走り出した私を追って、オーリアちゃんが鞍から飛び降りる。

 4歳の差は体格の差になって、走る歩幅の違いで、あっという間にオーリアちゃんに追い付かれた。

 私の暴走に付き合ってくれても止めることはしないオーリアちゃんが、私は大好きだよ。


 こうなるとルナリアがジッとしているわけが無い。

 しまったなあ。

 ルナリアにまで迷子になられても困るので、走るペースを緩めてルナリアが追い付いて来るのを待つ。


 本当にゴメンね、アリアナさん。

 迷惑を掛けるけど、今は止まれない。


「マーミナ! マーリカ! クラリカ! メイリス! あなたたちも付いて行きなさい!」

「「「「了解! 馬、よろしく!」」」」


 馬上で2頭分の手綱を握らされたアリアナさんは出遅れて追跡を諦めたみたいで、指名されたピーシーズが下馬したのが背後にチラリと見えた。

 身体強化が得意なマーミナさんとマーリカさんは直ぐに追い付いて来るだろうし、クラリカさんとメイリスさんは私たちよりも町の地理に詳しいから、きっと直ぐに追い付いて来るはずだ。


 さあ、考えろ。

 怯えた小さな子供なら、どこへ逃げる?

 言葉が通じないなら怯えているはず。


 ムーアの町で目覚めた私は何を考えた?

 人が居ない場所へ逃げようとしなかったか?

 だったら、表通りではなく裏通りに向かったはずだ。


 今の私よりも小さい幼児なら、そんなに遠くまでは行っていないはず。

 私のように、初っ端から町の外を目指すことは無いはずだ。


猫耳ちゃん②です。


迷子捜索開始!

次回、幼女覚醒!?

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