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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 8000万PV・書籍版第3巻発売&コミカライズ、もうすぐです!】  作者: 一 二三


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精霊種 ⑬

「・・・そっか。ありがと」

 お礼を告げると、会釈で返した兵士さんは馬を牽く作業に戻っていった。

 ヨシヨシ。状況の把握はだいたい出来たけど、特に問題は起こって居なさそうだ。


「・・・私たちも行こっか」

「はい」

「おう」

 声を掛けるとケイナちゃんとテツさんが返事をした。


 ピーシーズはルナリアについて行かせたから、私の傍にはミセラさんたちが護衛に就いてくれる。

 テツさんたちをゾロゾロと引き連れてシカの囲いへ向かうと、キャットウォークに上がる階段を踏んだところでテツさんが足を止めた。

 ドンドンと踏み板の踏み心地を確かめるようにしてから、改めて囲いを見上げる。

 何してるの?


「なあ。敵の侵攻を防ぐには、ちょっと脆弱じゃね?」

「・・・脆弱というと?」

 囲いの構造は城壁と同じだから、テツさんは城壁のことを言ってるんだろうね。


「木材そのものがどれだけ強くても、背が高すぎるんだよ。直立した丸太を繋いでるのは横向きの“梁”だけだろ? この構造だと梁や接合部の耐久力を超える圧力や衝撃が加わったら、全体が一気に倒れるかも知んねえぞ」

 テツさんの指摘に私も城壁を見上げる。


 鉛筆をピッチリと並べて立てたみたいに丸太が連なった城壁は、内側の梁で上中下と何重にも連結されていて、所々に支え棒のような支えで倒れないように押さえ付けてはいるけど、永続的に保つ構造体には見えないよね。

 そうは言っても1本1本の丸太の根本は数メートル地下まで地面に突き刺さっているから、多少の耐久性は有るんじゃないかな。


「・・・まあ、確かに。緊急で建てたから仮設の城壁だし、落ち着いたら石材を使った砦に建て替えるって聞いてるけどね」

「仮設か。それならまあ、仕方ねえな」

 テツさんの言いたくなる気持ちは分かるよ。

 ウォーレス領の優位性を担保している重要施設だと思えばこその意見だろうしね。


 建てたときの“施設の完成が最優先”って状況を私たちは知っているから、やり遂げてくれた工兵部隊の仕事に文句は付けないけど、現代日本の建築物を知る身としては、“これだけ大きなものを丸太そのままの木造で?”って不安な気持ちになる。

 それでも、この防衛拠点は、ここに存在することに最大の意味が有る。


「・・・本当に急いでたんだよ。内戦のときに神教会勢力の分断工作を無効化するのに領有宣言を急いだら、隣国からの侵攻を早めることになってね。実際、この採掘場でも敵の潜入部隊との交戦が有ったし」

「こんな森の中にまで敵軍が攻め入ってくるんだな」

 だよねぇ。


 内心、テツさんの感想に同意する。

 ほんの入口近くとはいえ、魔獣だらけの“魔の森”だし、国境のナーガ川からは10キロメートルぐらい王国側に入ってるもの。

 しかも、夜中に奇襲を仕掛けようとしてきたんだからね。


 夜は魔獣が活性化するといわれていることは、一般常識として広く知られている。

 それなのに、敵はわざわざ夜になってから潜入してきた。

 ”魔の森”のベッタリ傍で暮らしている私たちでさえ、よほどの緊急事態じゃないと夜の森には入らないのにね。

 敵の執念にも恐れ入るよ。


「・・・この採掘場を奪うのが敵の目的だったから。でも、もうここまでは来ないんじゃないかな」

「なんで来ないと言えるんだ?」

 先導する形で階段を上りながら私の予想を口にすれば、私との間にケイナちゃんを挟んだテツさんが首を傾げる。


「・・・渡河地点に新しく防衛拠点を置いたからだよ。ただまあ、そっちを建てるときに迷宮を発見しちゃったんだけどね」

「お砂糖のところですか?」

「例のダンジョンだな。渡河地点ってことは大きな川の傍なのか?」

 階段を上りながら私を見上げてくるケイナちゃんとテツさんの確認に頷き返す。


「・・・うん。“獰猛くん”―――、ゴーレムで地面を踏み抜いちゃったんだけど、地下の洞窟だったよ」

 やっちゃったものは仕方ないんだけど、今思えば、空中でデッカい石の板を作って蜻蛉が出てくる穴にフタをするとか、もうちょっと遣りようが有ったんじゃないかと少しだけ反省はしている。

 呆れを含んだ納得顔でテツさんが頷く。


「あ~。重たそうだったもんなぁ」

「・・・そうなんだよ。地下に何か有ることには気付いてたんだけど、まさか迷宮だとは思ってなくて」

 知らなかったとはいえ、巨大生物が這い出してくるような空洞の上で重量物を暴れさせれば、天井が崩壊するのも自明の理だよ。


 目の前の事態に対処することに必死で考える余裕が無かったのも事実だし、私が迂闊なのもいつものことだけど、本当に迂闊だった。

 そんなことは当時の切羽詰まった状況を知らないテツさんたちに伝わるはずもなく、興味の対象を移したテツさんが首を傾げる。


「ほーん。それで、どんなダンジョンだったんだ?」

「・・・今、分かってるのは、出てくる魔獣が巨大トンボだということと、そこそこ水量が有りそうな川が流れてるってこと。あと、これは私の推測だけど、その川にはヤゴが棲んでるんじゃないかってことかな」


 実のところ、言い切ってしまうには情報が少なすぎる。

 お母様と2人で地形の偵察に行ったときも詳しく確認できなかったしね。

 分からないことだらけで確たる証拠はないから、多分に想像というか空想が入っていることは否定しない。

 それでもテツさんは私の推測を笑わなかった。



精霊種⑬です。


地下の川!

次回、閃き!?

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